第5話 俺のモーニングルーティン

昨日のようなジョギングは、週に2、3回、中学のサッカー部を引退してから続けている。

基本的に走るのは夕方だが、休日の気が向いた時などは朝走る事もあり、晴れた日は市街地の更に向こう、隣県との境界となる某山脈まで見える。

夕暮れの景色も好きだが、朝の清々しい景色も同じくらい気に入っている。



ー ジリ、ジリリ ー


ー パンッ! ー


目覚まし時計の鳴り始めとほぼ同時に目が覚め、そのまアラームをOFFにする。

ジョギングした日の夜はぐっすり眠れるので、次の日はスッキリ起きられる。

ベッドから降り、少し体を伸ばしてから1階のリビングに降りた。


なお、平日のそこには大抵先客がいる。


「おはよう、陽菜ひな。清々しい朝だな」


「寝ぼけた事言ってないで、さっさと朝ご飯食べて早めにトイレ行ってよ。お兄ちゃんのトイレくそ長いんだからさ」


くそだけに。

照れも恥じらいも笑みもなく辛辣な言葉を放つその先客は妹の陽菜子ひなこである。

今年から中学3年生、俺の一個下だ。


ちなみに兄妹仲、更に、現在まだ睡眠中の両親合わせて、家族仲は良好である。

俺も陽菜も反抗期なんてものは存在していない。

むしろ、親の買い物などには嬉々としてついて行く。

荷物持ちしたら漫画とか買ってもらえるし。


「そう言うんなら先行けよ」


「私はまだまだ時間あるし、ゆっくりテレビ見ながらご飯食べたいの。お兄ちゃんは電車の時間あるんでしょ?早くしなきゃ」


「俺もゆっくり食べたいけど、確かになぁ」


他愛もない会話をしながらパンを焼きつつ、牛乳を入れて朝食の用意をする。

陽菜の言う通り、俺は電車通学なのでのんびりもしていられなし、トイレには絶対行っておきたい。

満員電車の中で便意を催したら絶望である。


緊急の時は途中下車して、どこかのトイレに駆け込めば良いと頭では分かっているが、実際できるかは不安である。

学校に遅刻の連絡もしないといけないし、なかなかにハードルは高い。


まあでも、いざという時の心構えをしておけば気は楽か。


そんな考え事をしているうちにパンも焼けたので、マーガリンとイチゴジャムを塗って朝食をとる。

陽菜は隣で星座占いを一喜一憂しながら見ているが、俺はそこまで興味ないので新聞のテレビ欄を見ながらさっさと済ませ、妹の要望通りにトイレに時間をかけた。


歯磨きと洗顔、着替え、忘れ物チェックを手早く済ませた俺は、毎日とほぼ同じ時刻に家を出る。


たとえ昨日痴漢騒動があっても変わらない、これが俺のモーニングルーティン。

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