第7話 ガチャと少しの危機感の為に戦え!
魔法少女チャコの姿は普段とはかけ離れたものになっていた。
背中には一対の巨大なコウモリの
頭には青いベールを隠すような大きな金の王冠が乗っていて、その外周を飾る尖った装飾がまるで天を突く角のようだ。
そんな姿になっても大して気にしていない、いつも通りに半目のチャコは軽く赤いマントを整えると、ポン太へ話しかける。
「いつも通りに、執行任務は目標地点へ瞬間移動で連れて行ってもらえますよね?『そうだポン。すぐに戦闘になるから先に準備しておくポン』」
言われたチャコは
これで部屋にチャコが不在でも、また外出したと思われるだろう。
自分の行動に満足して
「ガチャレーヴァテイン!」
金色のガチャレバー裏からちょこんと十五センチほどの短剣が伸びると、その表面に無数の白い文字が走って数秒で真っ白になる。
最後に戸棚の下段を開いたチャコが、ガチャガチャと物音がするチェック柄の手
真っ白に染まった短剣と手
「『準備は良いポン?』先制で一気にふっ飛ばします! 『良い手だポン』」
チャコの先制攻撃作戦に良い評価を付けたポン太は、チャコを悪魔によって拠点化された場所へ導く。
#####
とある海に島ごと作り出された悪魔の拠点がある。その拠点はたくさんの機銃や対空ミサイルに、協定では禁止されている強化魔法陣の描かれた陣地で武装されていて大変危険なものになっている。
強化魔法陣の上で魔法を使うと威力、規模が倍加するのだ!
突如として島上空に現れた魔法少女チャコは、翼を広げて不自然にその場で静止。その場でチェック柄の手提げの中身を取り出し投げつけると、ポン太と同時に宣言した。
「『【
二人の宣言と共に不平等な事態が発生し始める。
チャコの投げつけたのは青い色の
「ガチャカプセルメテオです! えいえい! 『何回見ても変だけど効果的な使い方だポン……』」
チャコが次々と投げつけるので悪魔の拠点は巨大
悪魔の拠点へ叩きつけられた青いガチャカプセルは破損して魔法の物品なので消え去るが、カプセルの役目は完璧に果たしており内部の景品は無事に守られていた。
守られた景品は自分の置かれた悪魔がたくさん居る状況に、その役割を思い出して車輪を回転させたり、手足を動かして動き出す。
中から出てきたのは巨大化したおもちゃ達で、悪魔を追尾して自爆する効果は健在だ。
魔法少女チャコが投げつけているのはガチャのハズレ、攻撃系の景品の入った
チャコが投げつける怒りの
逃げる悪魔を巨大おもちゃ自動車が追いすがり、当然のごとく無人の為に反撃をもろともせずに突っ込んだり、勢い余って
自動車の他にも、魔法少女が回すガチャだから意識しているのか犬やウサギの人形に熊さん人形も闊歩しているが、全部悪魔に向かって行って自爆しているので
それらに対して対空機銃を水平撃ちにしようとする悪魔も居るが、空から降ってくる新たなるガチャカプセルに押しつぶされていく。
当然、そんな状況の元凶であるチャコを狙う悪魔も居て火炎弾や
【
しばらくすると、悪魔の拠点で動くモノは新たな獲物を探すおもちゃとひたすら逃げ回る一体の悪魔だけとなった。その悪魔は人の姿をしていて、額から伸びる二本の角と翼が無ければ黒い長髪の男にしか見えない。
逃げ回る悪魔が、宙に浮くチャコへ必死に逃げながら文句を言う。
「なんてことしやがる!? 俺の造った最強要塞が更地になっちまったぞ!」
「『あいつがここの親玉ポン』元気な悪魔ですね! 『元気なだけなら良かったポン』」
ついに追い詰められた悪魔が巨大なくまさん人形のパンチを食らい、落下地点で車に
後には大の字で横たわるボロボロな悪魔が残された。
「ケホ……。何度でも再建してやる……!」
「【
諦めの悪そうな悪魔へ輝く短剣から白い文字で作られた線が伸びてグルグル巻きにすると、浮遊するチャコが悪魔の目の前まで降りてくる。
見上げる悪魔へチャコはガチャレーヴァテインを突き付けて、それを
自分の手を見つめて驚愕する悪魔。
「強制退去じゃない……? アバターを奪っているのか!? お前が噂の泥棒魔法少女!? コレ高いんだからヤメロ!」
「レアカードゲットです! 『協定を破るのが悪いポン』」
特異な能力を持つチャコは悪魔の間で噂になっていて現実世界で活動するための体、アバターを奪う事から泥棒扱いされている。
雑魚悪魔のアバターは悪魔を管理している組織で支給されるのだが、専用のオーダーメイドアバターは特殊能力や性能の分コストが高く、その悪魔の組織で働くことで得られる悪魔の貨幣、悪魔点で悪魔自身が購入している。
アバターは
悪魔を守る法も、チャコ一人を制限する協定も存在しないため何の問題もない。
後には黒い髪の悪魔が描かれたカードが残されていて、上機嫌で着陸してそれを拾うチャコはカードに書かれた文字を読み上げる。
「ネビロスというカードをゲットしました! 『
カードを握って嬉しそうなチャコを見つめる存在が居る。
いつの間にか
「久しぶりねチャコと……ポン太。執行後で疲れてる所に悪いけど、同じ
「アスタロトさん、久し振りです『お願いってなんだポン?』」
チャコにアスタロトさんと呼ばれた女の子は悪魔側の
アスタロトはポンタの質問に対する答えとして、腕に持っていた赤い目な黒猫のぬいぐるみを前に突き出すと、チャコにお願いしてくる。
「この子、ネビロスなんだけど悪魔の方でも行動が問題視されて精霊側との協議の結果、力を封印して精霊側で社会勉強するのが決まったのよ。ベテランの魔法少女と、その担当としてこの子を導いて欲しいの」
突然のお願いに困惑するチャコを他所に、黒猫ぬいぐるみのネビロスが自分を抱く上司であるアスタロトを赤い目で見上げて抗議の声を上げる。
「アスタロト様~! なぜ俺がこんなかわいい猫の姿に……」
「気ままなあなたにピッタリよ? その姿で反省して精霊として頑張るの! 悪魔の名前だと色々と問題があるから、その姿の名前は……ネロね!」
「そんな~……」
「え~、なんだか大変そうで嫌ですね……『他に任せればいいポン』」
たしかにチャコはベテランだが、誰かを教え導いたことも導かれたことも無いので、そのお願いに対しては
気乗りしていなそうな二人を見て緑の目を細め微笑んだアスタロトは、ネビロス改めネロの精霊体験を手伝う事に対する報酬を提示した。
「毎日、千貢献点をこの子が持っていた資産を売却して支払うわ」
「ちょ! アスタロト様!?」
「やりましょう! 出来るだけ時間をかけて良い精霊になりましょうね? ネロさん! 『即決だポン……。もう少し考えた方が良いポン』」
千貢献点が一瞬で毎日ガチャ十連に置き換わったチャコはいい笑顔で即決して話に乗り、寝耳に水な資産売却にネロは慌てている。
魔王姿なチャコと、少女姿なアスタロトが悪だくみをするようにそれぞれの笑みを浮かべた。
果たして新米精霊である黒猫のネロは更生出来るのか……!
チャコは出来るだけ時間をかけて
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