第6話 UR確定!100連ガチャを回せ!

 悪魔の拠点を撃破して自分の部屋へ帰ってきた魔法少女チャコだったが、戻ってから早々に変身を解除して、茶々子に戻り戸棚の上で怪しげな祭壇さいだんを作っている。

 本を重ねて適当に作った祭壇さいだんには紫のURウルトラレアカプセルが祭られていて、茶々子が何を考えてまつっているのか一目瞭然りょうぜんだ。


「ポン太、精霊スマホを貸してください」

「自分のがあるポン? それを使えば良いポン」


 精霊スマホは精霊城で出来る事をある程度ではあるが代替だいたい出来る凄いモノだが、その名前と違って精霊だけのモノではない。


 精霊の近くでそれを見ている魔法少女達も、その便利アイテムを欲しがったのだ。


 茶々子も赤色の精霊スマホを持っている。


 しかし、ガチャ以外には知り合いの魔法少女への連絡に使うだけで、大して活用をしていない。

 ポン太はそれを使えというのだが、自分の精霊スマホで爆死した茶々子はポン太のスマホでガチャを回したい気分なのだ。


「私のスマホは今日、縁起えんぎが悪い気がする!」

「大差ないと思うポン……」


 魔法少女保険の支払いをする関係で、茶々子の貢献点が共有されているポン太の担当用スマホなら、茶々子の貢献点でガチャをすることが出来る。


「ガチャを引く時だけで良いから……! 引いたら確認は私のスマホでやるよ!」

「その執念しゅうねんは一体どこから湧いてくるポン?」


 「そういう事ならばポン」と、しぶしぶ紫の担当用スマホを渡したポン太は、紫の半目を吊り上げた真剣な表情でガチャ画面を起動する茶々子の様子をながめる。

 スマホでのガチャはかなり簡素化されていて、百貢献度コインの具現化は不要で貢献点の消費はデジタル処理される。ガチャを引く動作もガチャると書かれた場所をタップするだけだ。


 今回、茶々子が挑むのは百連ガチャ……!


 悪魔の拠点襲撃で人数割りの一万貢献点を得た茶々子は、ポン太の反対を押し切ってURウルトラレアが確実に手に入る百連ガチャに全額投入するのだ。

 ガチャアイテムの携帯トロイを使ったことで鬼謀きぼうさんから支払われた二百貢献点は余るが、ポン太の提案で貯金することにした。


 紫の貢献度ガチャが映るスマホを鋭い目で見つめる茶々子は、指に念を込めて慎重しんちょうにガチャるボタンをタップしようとする。

 長い前置きに黒いつぶらなひとみを半目にして眺めていたポン太から、ついに催促さいそくのつぶやきが漏れた。


「まだポン?」

「今はタイミングを計ってるから待って!」

「関係ないと思うポン」


 ポン太の催促さいそくに渋々とガチャるボタンをタップした茶々子は、画面の中で流れ行くカプセルの画像を真剣にながめていたが、数秒後力が抜けたようにひざを突いた。


「紫のカプセルが確定分の一つしかない……」

「そんなものだポン。確かURウルトラレア1%でSRスーパーレアが9%ポン?」


 百回も引くのだから紫のカプセルが二つや三つ出てもおかしくないと考えていた甘い見通しの茶々子は、厳しい現実にピンクのカーペットへダイブして頭を抱えている。

 ピンクのカーペットに紫の髪が広がっているのを青い自分用の精霊スマホ片手に見ていたポン太は建設的な提案をした。


「一つは出たのだから確かめてみるポン。もしかしたら当たっているかもポン」

「そうですね! 見てみましょう!」


 ポン太の言葉に復活を果たした茶々子は、その紫の半目を見開いて赤い自分用精霊スマホを起動させると、メールボックス内のガチャ景品一覧をスライドして確認し始める。

 分かりやすく最初の一文字目にレア度が色付きで表示されたガチャ景品一覧は、茶々子をURウルトラレアの場所まですぐにみちびいた。


「精霊の指輪って、また精霊装備ですか!? 私の身長+一センチはどこ……?」

「おお、ガチャの目玉である当たり装備ポン! 説明によると精霊装備は致命傷を受けると全回復して一秒無敵になる強力装備ポン」


 内容を読み上げて嘆く茶々子へ、ガチャページが開きっぱなしだった紫のスマホを覗き込んだポン太が、ドドンと映し出されていた指輪の説明文を読み上げる。


「致命傷なんて受けたくないですよ!? ……一応つけておこうかな」


 それを聞かされた茶々子は、物騒な言葉にツッコミを入れながらも有用性は理解しているので、景品受け取り用ボタンをタップする事で青い宝石が金の葉に包み込まれている指輪を具現化して指にはめた。


 ピンクの前足で詳細を開いたポン太が、続けて精霊の指輪ページに書かれた詳細説明も読み上げる。


「複数の精霊装備を付けておくと、複数回発動できるので集めてみてねと書いてあるポン」

「一個じゃダメなんですか? 全回復して一秒無敵になるんですよね?」

「強力な効果に対する制約で一日一回ポッキリみたいポン」


 ポン太は精霊城の貢献度ガチャで手に入れたアミュレットを精霊スマホのストレージから具現化して紐に通し、茶々子に渡すと普段使いには目立ちすぎる精霊装備を認識阻害にんしきそがいで誤魔化してあげた。


 精霊のアミュレットを首にかけた茶々子へ、ポン太はピンクの前足の裏側にもう一つの前足を当てるという、良いことを思いついたような動作をすると声を掛ける。


「……今、新たなが入ったポン」

ですか。爆死ばくしストレスの解消に良いですね! 行きましょう!」

「即決だポン。……もう少し考えた方が良いポン」


 呆れつつも浮かび上がったポン太は、茶々子へ改めて告げる。


執行官エクスキューショナーの担当として、この現実世界に作成された悪魔の拠点について破壊を依頼するポン」


 それに対して茶々子、執行官エクスキューショナーチャコは片手を上げて返答した。


執行官エクスキューショナーチャコ、悪魔の拠点を壊しちゃいます!」


 いくつかあるチャコの呼び名の一つである執行官エクスキューショナーは、協定を破った悪魔や、悪いことをした魔法少女に対して罰則を与える存在の事だ。

 悪魔側にも何人か存在するが、上位の魔法少女にはこのお仕置き役の仕事が回ってきて、お互いへの抑止力よくしりょくや魔法少女が悪いことをするのを思いとどまらせる事にも一役買っている。

 

 何か権限があるわけでは無いが、精霊の修復部隊が無料で対応してくれるので火力のありすぎる魔法少女には人気のお仕事だ。


 上げられた手にポン太がタッチすると、くるりと回って外れ演出のごとき素早い変身をして両手を広げるチャコ。その姿はいつもの青いシスター服に赤いマント姿。


「ガチャ魔法少女チャコ参上!」『やっぱりもう少しこだわるポン』


 チャコは腰の黒いカードホルダーからカードを引き抜いてかかげた。


「【サタン】! 全部ふっとばしちゃうよ~! 『やりすぎ注意ポン』」

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