第3話 精霊城で貢献度ガチャを回せ!

 無事に悪魔を撃破して家に帰ってきた魔法少女チャコだったが、自分の部屋で巨大ハムスターのポン太に泣きついている。


「現地でガチャが回したいです!」

「え〜……精霊スマホで良いポン」


 茶々子の言う現地というのは精霊の本拠地である精霊城の事で、魔法少女に対するサービスはここで一括して管理されている。

 茶々子のお目当てである貢献度ガチャも精霊城に設置されているが、ポンタの持つ精霊スマホでも同じ事が出来る上に、景品もすぐに受け取れる。


 精霊は現代人の想像力で具現化したので、デジタル化が推進されているのだ!


「当たりが出やすい気がするから!」

「同じだと思うポン……」


 爆死直後でわらにもすがる茶々子は、ゲン担ぎに精霊城でガチャをやりたいみたいだが、黒い眼を半目にしたポン太は消極的だ。


 精霊は現代人の想像力で具現化したので、神や仏よりも数字を重んじるのだ!


 結局、必死のお願いに根負けしたポン太は、肩に触れる事で茶々子を魔法少女チャコに変身させて精霊城に連れていく。


「仕方ないポン……」

「やった~!」


 #####


 精霊城は異空間に存在していて、精霊なら何処からでも入ることが出来る。


 精霊城の入り口であるアーチ形の大きな門の前で具現化したチャコに、白色や黒色のシスター服を着た者達が道を譲ってくれる。


 たくさん居るが全員が魔法少女だ。


 魔法少女は実績によってランク分けされている。シスター服の色を見れば一目で分かるようになっていて、白色は下位で黒色は中位だ。突然現れた色の違う魔法少女であるチャコに遠慮しているみたいで遠巻きにしている。


 その様子に、とりあえずの笑顔で手を振り愛想を振りまいて進んでいくチャコ。


 チャコの目的である貢献度ガチャは広場の中心に設置されていて、見知らぬ魔法少女の前でガチャをすることになるのだが、数多の爆死を乗り越えたチャコにとっては気にするほどの事ではない。


 チャコが高台に設置されている貢献度ガチャの前に立つ。


 貢献度ガチャは金色に輝いていて、その中身は見えないがチャコの紫の半目を吊り上げた真剣な表情を映し出している。

 今回のチャコが得た貢献点は千点で、内三百点は魔法少女保険の追加支払いと、いざという時の為の貯金に回された。


「一回につき百貢献点なので七回、貢献度ガチャを回すことが出来ます!」

『もっと貯金に回しても良いポン……』


 ポン太のぼやきをスルーしたチャコは手慣れた動きで百貢献度コインを具現化すると、金色のガチャレバーにセット。


 紫巻き毛な前髪の奥で、紫の眼を細め回転させる。


 ……


 内部をかきまわす音の後に飛び出てきたのは青いカプセルだ。


「ック……最低保証のRレアですね。一応開けておきましょう」『きっと何かの役に立つポン』


 手慣れた動きでカプセルを開放したチャコが中身を検分すると、おもちゃの車が出てきた。紫の半目でおもちゃの車を見つめるチャコ。


『これは使い捨ての攻撃アイテムだポン。悪魔を追尾して爆発するポン』

物騒ぶっそうですね……」


 持ってきていた花柄の手提てさげに危ない車を放り込んだチャコは、カプセルを回収箱に収めると今度は二枚の百貢献度コインを具現化した。


「数を撃てば当たるはずです……!」『貢献度二百もあったら和牛ステーキが食べれるポン』


 ポン太の誘惑を振り払ったチャコは、ガチャレバーに二枚のコインをセット。


 一思いに回転させる!


 新たに飛び出したのは相変わらずの青いカプセルが二つ。


「ググ……。開ける前にもう一回です!」『ステーキ二枚入りま~すポン!』


 この展開を読んでいたチャコは、すでに用意していた二枚のコインをセット。


 なかばヤケになって回転させる……!


 すると、貢献度ガチャが光り輝き始めた!


「これは来ましたか!?」『演出、来たポン!』


 金色に輝くガチャマシンそのものが回転し始めて、広場でガチャ風景を眺めていた見知らぬ魔法少女達もその光景を前のめりになって見つめる。


 しかし金色の輝きは突如として消え、ガチャマシンも動きを止めてしまって、周囲の魔法少女達もスッと落ち着いて見物の構えに戻っていった。


「あっ……」『残念ポン』


 出てきたのは青いカプセルが二つだ。 


「……」『何か言うポン』


 無言でもう二枚のコインを具現化してセットするチャコ。


 機械的といってもいい動きのチャコの手で、回転するガチャレバー……!


 ガチャマシンが真っ赤に輝いて震えている。素敵な演出に人の心を取り戻したチャコも紫の目を見開いて輝かせる。


「来た? 来た?」『これは来るポン!?』


 見物していた見知らぬ魔法少女達も立ち上がって拍手をしている。真っ赤に輝くガチャマシンが下から紫に変わっていく!


 完全に紫になったガチャマシンから、青いカプセルと紫のカプセルが吐き出された。


URウルトラレア来たぁ!」『おめでとうポン!』


 紫のカプセルに飛びついたチャコは、ふるえる手を何度もすべらせながらカプセルを開く。

 中から出てきたのは青い宝石を金の葉が包み込んだアミュレットで、チャコの狙いではない。空にかざすと神々しく輝くが、身長が伸びる気配は無い。


「私の身長+一センチはどこ……?」

『……これも良い物だポン。』


 アミュレットを掲げて膝を付き半目になっているチャコへ、祝福の拍手喝采かっさいが贈られる。

 完全に他人な魔法少女達はチャコの事情なんて知らないのだ。URを当てたことで呆然自失していると思われている。


 そんなチャコに近づく魔法少女が居た。


 チャコと同じく、青いシスター服を着た上位の魔法少女でベールからはみ出す長い黒髪を揺らし、固まっているチャコに声をかけてくる。


「精霊のアミュレット。良い物を当てたわね簒奪さんだつさん」

「魔弾さん……今は放っておいて欲しいです」

「え〜? 良い話を持ってきたんだけどな〜」


 簒奪さんだつさんとはチャコの呼び名の一つで、悪魔の力を奪う事から彼女は簒奪さんだつの魔法少女と呼ばれている。

 上位の魔法少女をそのまま呼ぶと物騒ぶっそうな名前が多いので、さん付けで緩和かんわするのがお約束だ。

 チャコが魔弾さんと呼んだ魔法少女は、腰にあるポーチから手紙を取り出してチャコに見せる。

 

 それは悪魔が作った拠点を襲撃しゅうげきする作戦への参加要請だった。


 チャコが貢献度ガチャの為、貢献点に飢えている事は同格の魔法少女達には知られてしまっているので、誘いに来てくれたらしい。


「やりましょう!」『即決だポン……』

「そう来なくちゃ! これから作戦会議があるから付いてきて~」


 チャコの手を取った魔弾さんは、チャコを引っ張っていく。

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