第8話 私の趣味

「巨乳が優遇され過ぎです! 巨乳だけ出産しても無料! 育児費用も全額出る! 変えましょう!」


 何がだ!

 巨乳の気持ちになって考えろ!

 最低よ! 嫉妬で何も見えなくなるなんて!


 あんな人の勝手な嫉妬心で、そんな最低限の補助も無くなったら、この世は巨乳にとっての真の地獄になるじゃんか。

 どうせ巨乳を嫁にすることに成功した男の人は、欲求に耐えられなくて無計画に子供作っちゃうに決まってるんだから!

 そうすると、待っているのは貧困だ。

 貧困は人を醜くする。私は昔、読んでいた本でそれを学んだ。

 

 ……そうすると折角「問題ない相手と結婚すること」に成功しても、不幸になってしまう。

 毎日喧嘩。DV。そして責任のなすり合い。子供たちの泣き声。


 ……そんなの絶対に嫌。


 幸い、通行人の人たちは、アジってる男性の主張を無視している。

 普通の人にとって、彼の発言は意味不明の戯言扱いらしい。


 ……だけど。


 私はとてもムシャクシャしてしまった。

 直接あの男の人に文句を言いたいけど……


 男性に文句を言いに行く勇気が、私には無い。


 だから……


 この駅前にある、私の行きつけのゲームセンターに行くことにした。




 ……私の趣味は格闘ゲーム。

 年代的には古いゲームらしい。


 私が生まれる前のゲームだから、歴史はあまり知らないんだけど。


 ……なんかね。

 あの大老が好きなんだって。


 大老が好きだから、社会が復興したときに一緒に復興したらしい。

 うーん、権力者。


 でもさ……


 私も楽しんでるから、ここだけは大老閣下万歳、かな?


 私の腕はなかなかのもの。

 全国大会にも出たことがある。


 ……そのために、政府主催のお見合いパーティに出席しなかったんだけどね。

 そのせいで、今酷い目に遭ってる。


 うう……自己嫌悪。


 ……まあ、気を取り直して。

 ストレスを晴らすために来たんだし。


 私は大好きなゲームを探す。

 私が好きなのは、モンスター同士の格闘ゲームで。

 キャラクターも魅力的なんだけど、ゲーム性がね。

 余計なアクションが少ない感じで、その分テクニックと戦略に入れ込める。


 台を探すと……おお


 対戦台の片方が埋まってて。

 もう片方が空いている。


 画面を見ると、向こうのプレイヤーは主人公の吸血鬼を使って戦っている。

 ……基本タイプだね。


 よし。乱入しよう!


 これが楽しい。

 良く知らない人相手に、対戦が楽しめる。

 最高だよね!


 ポケットから財布を出して、100円玉を取り出した。

 そしてコイン投入口に投入。


 ちゃりん、と入れると、画面に「ニューチャレンジャー」と英語で表示される。


 英語なぁ……学校で習ってるけどさ。

 社会に出たら、科学者にでもならない限りほぼ使わないよね。昔と違って。

 たまにやってて空しくなる。


 今と昔は違うのに。

 いつまで教育内容そのまんまなんだろうか……


 ま、いいや。

 私のキャラは、っと……


 持ちキャラはいくつかあるけど、今日の気分は……


 ミイラ男のこのキャラだ!


 遠距離で完封できるとすごい快感なんだ。

 ちなみに一軍キャラ。


 さて……


 対戦が始まった。

 なかなかの相手。


 無駄な技を一切出してこないし。

 ダッシュも頻繁に使って来る。


 けどさ……


 飛び込みの選択肢がちょっと、多いんじゃないかな?


 それはもう、私の制空圏に引っかかるね!


 そして……


『ユーウィン!』


 私が、勝った。

 ふふ……


 体力ゲージ、親指ほども減ってない。


 弱くは無かったけど……


 私の一軍の敵じゃ無いね。

 

 さて、このまま一回クリアして終わろうか……


 そう、思っていたら。


『ニューチャレンジャー』


 ……今度は向こうが乱入して来た。


 リベンジマッチ?


 ……この体力差で挑んでくるって……どういうつもり?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る