巨乳が国家によって管理される国にいます。

XX

第1話 巨乳判定

「お気の毒ですが、お嬢さんは巨乳です」


 診察室で。

 私は両親と一緒にその言葉を聞いた。


 お医者さんのその言葉は、私を絶望させるのに十分な言葉だった。

 その言葉を聞いてお母さんは泣いた。

 お父さんは黙って俯いた。


 私の名前は高野のぞみ。

 14才の女の子。

 その日は年1回の身体測定の結果について、お医者さんから話があると言われて。


 ……なんだろう? 変な病気が見つかったのかな?


 ちょっと不安になりながら、指定の病院に向かったら。

 散々待たされた挙句、言われた言葉がそれで。


 私は言葉を失った。


 こんなことなら、おしっこに異常があったとか、肺に影があったとか。

 そういうことを言われた方がマシだ。


「そんな! 何かの間違いじゃ!?」


 お母さんの言葉に、お医者さんは頭を振りながら


「14才でDカップに育っている……。これはもう、巨乳判定を出さざるを得ない状況です。残念ですが」


 くっ!


 お父さんの悔しそうな声。

 初めて聞いた気がする。


 女の子が巨乳判定を受ける。

 それはこの国では……


 18才までに、結婚相手を見つけて、結婚しないといけないということ。


 ……そうしないと……


 この国から追放されるか、それとも結婚を希望する男性の求婚を拒否する権利を失うか。

 その二択を選ばないといけない。


 ……どっちも、嫌だ。


 この国を追い出されるということは、あの国に行けということ。

 この国とは違う無法地帯。あの国。

 おかしなカルト宗教が対立し、化け物が跋扈し、犯罪者の天国であるという。

 詳しくは知らないけど、街中に死体が転がっているのが別に異常でないという地獄の国。


 そんな国に追放される。

 絶対嫌。


 それが嫌なら強制結婚。

 こういう状況で私に求婚してくるような男の人……

 どうせ売れ残りのとんでもない男の人に決まってる。

 そうすると、私は日々男の人の玩具にされ、DVを受けながら残りの人生を過ごすことになる。


 それも嫌。絶対嫌。


 どうしよう……


 将来に絶望し、怯える私に、お医者さんがこう言ってきた。


「まだ諦めることはないです。まだ4年あるんですから、頑張れば大丈夫です」


 私を安心させようと、お医者さんの声は優しかった。

 巨乳判定を受けたのは、君だけじゃないんだよ。

 お医者さんはそう言って私を励ます。微笑みながら。


「……これはボクからのアドバイスなんだけど……」


 君は元気も良いし、明るい感じで、顔もまあ、可愛い方だと思う。

 だけど髪型が少し子供っぽい。

 髪を左右で纏めるのはやめて、解いてみたらどうかな?

 グッと大人っぽく見えるはずだ。


 ……ようはツーサイドアップのボブヘアーをやめてセミロングヘアにでもしろと?


 それ、センセイの好みの話じゃないの?

 セクハラだ! 訴えてやる!


 ……そのときの私は、余裕が無かったので。

 そんなお医者さんの親切心に怒りを覚えてしまった。


「……まあ、今後の話ですが」


 巨乳判定が出た以上、のぞみさんには国から巨乳認定証が送付されます。

 それを提示すれば、女子力をアップさせる各種施設の無料利用が可能になります。

 それを利用して、いい結婚ができるように自分磨きに専念してください。


 あと、君と同じ境遇の女の子たちが、相互扶助を目的として「巨乳互助会」というサークルを作っている。

 是非、利用してみると良い。きっと、素晴らしい友人に出会えるよ。


 お医者さんは私に希望を持たせようと必死だった。


 それに気づいた。


 ……流石に、赤の他人の私にここまで気を遣ってくれているのに。

 自分のことばかり嘆くのはどうなんだろう?


 私はそのことを自覚したのだ。


 だから……


「はい。頑張って、素敵な男の子と結婚して見せます」


 笑顔を作った。

 ……私の決意表明だ。


―――――――

 久々のカクヨムへの投稿です。

 某所ではエロばかり書いてますが、こっちでは御法度なので控えます。

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