79.配信休止=礼嬢オリィは心の内にその疑問を呑み込む。
半ば強制的に事務所から追い出された私達はぎんかさんから送られてきたメッセージを元に、そこを目指して移動を始めていた。
「――――この場所って……私の通ってた大学の近くだ」
向かう道中、場所を確認したノーみりん先生がぼそりと呟く。
どうやらメッセージに記載してある場所は白崎さんと初めて出会った頃に通っていた大学が付近にあるらしい。
その辺りの昔話は詳しく話してくれなかったけど、大まかな内容から察するに、もしかしたらその頃の白崎さんはまだ実家にいて、そこからノーみりん先生に会いに行っていたのかもしれない。
「……確かに大まかな場所は分かりましたけど、それでもそこそこ範囲は広いですよ。ここからはどうするんですか?」
「……足で探し回るしかないかな。幸い、名前と苗字が分かってるから聞き込みしていけばそんなに時間は掛からないと思う」
「…………まあ、そうなりますよね」
これ以上の手掛かりがない以上、方法がそれくらいしかないのは薄々分かっていたけど、言葉にされると、少し気が遠くなってくる。
名前と苗字、大まかな場所が分かっているのなら、探偵みたいな職種に任せた方が早く白崎さんまで辿り着けるのだろうけど、彼女の事情を考えれば他人に任せるわけにはいかない。
たとえ、事情を伏せて依頼するにしても、どこから情報が洩れるか分からないし、なによりそれは自らの進退まで懸けて私達に託してくれたぎんかさんに対しての裏切りに等しい行為だ。
口にしないだけでノーみりん先生もそれを分かっているからこそ、誰でも思いつくその提案をしなかったのだろう。
「――――そういえばあーるくらふとの事務所を出る時、最後にぎんかさんが言った言葉なんですけど……」
目的地に向かうまでの道中、電車に揺られながら私はどうしても気になっていた事をノーみりん先生に尋ねようとする。
「あー……ごめん。何かを喋っているのは分かったんだけど、内容までは聞き取れなくて……」
「そう、ですか……その、ぎんかさんとは面識があったんですか?」
「ううん、初対面の筈だよ。名前は知ってたけど、配信とかでも絡んだ事はないし……それがどうかしたの?」
「え、ええっと……その、なんとなく気になって……」
なんでそんな事を聞いてくるのだろうかと疑問の表情を返してくるノーみりん先生に私は思わず言葉に詰まってしまう。
「?なんとなくって……まあ、確かに私もぎんかちゃんに気になるところがあったけど……あ、そろそろ着くみたいだね。降りよっか」
丁度、目的地に着いた事で話題がうやむやになり、少しほっとする私。
自分から聞いておいてあれなのかもしれないけど、よくよく考えれば……いや、考えるまでもなく、今は白崎さんの事に専念すべきだ。
気になるというなら白崎さんの一件が無事、終わった後に改めて聞けばいい。
どうしてぎんかさんがノーみりん先生の事をミリちゃんと呼んだのかを。
☆ ☆ ☆
79.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。
銀杏ぎんかから託されたメッセージを元に動く彼女達は漆黒ゆうぐれを救えるのか……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、フォローと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「そういえば結局あの時、ぎんかちゃんはなんて言ってたの?」
「……それは本人に聞いてみた方が良いと思いますわ。そうでないとぎんかさんが可哀想ですもの」
「ぎんかちゃんが可哀想って……私、何かしたかな?」
「いえ……何もしてないというか……その、あ~もうっ!私にどうしろというんですの!?」
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