すみません。やっぱり宇宙人でいいっすか。

ちびまるフォイ

ボスでなければ気がすまない人たち

それはある晴れた日のことだった。


『地球のみなさん、こんにちは。

 われわれは宇宙人です。


 これからは地球の支配はわれわれが行います。


 手始めにすべての兵器を無力化しました』


その言葉を受け取るなり、世界の偉い人たちは会議を始めた。

答えはもちろん『徹底抗戦』という宣戦布告。


しかし、核のスイッチを押そうが

ミサイルを打とうとしようが戦闘機を出そうとしようが動かない。


さらに悪いことに、なんでそんな状況になっているかを地球の誰もが説明できなかった。


それは宇宙人のもつ技術や知識レベルが、

およそ地球人のレベルをはるかに超えているとしか言いようがなかった。


『おわかりいただけましたか。

 

 われわれは血なまぐさい戦争を望みません。

 あくまでも平和的な共存を求めています。

 

 しかし、地球人の統治では限界を感じたため

 われわれがかわって支配いたします』


こうして宇宙人による地球支配の時代へと変わった。


最初こそ人間は宇宙人に対する不満いっぱいで、

宇宙人支配になってからも各地で反乱が起きた。


「地球はもともと俺らのものだ!」

「よそものの宇宙人は出ていけ!」


「落ち着いてください。われわれは争いたくありません」


「だったら侵略するな!」

「支配したいなら、人間を滅ぼせばいいだろう!」


「それは人間の考えです」


「うるせぇ! みんな! この宇宙人をぶっ殺すぞーー!」


「ヤレヤレ……」


宇宙人は1人たりとも、人間を殺すことはなかった。


彼らはすぐれた技術と知識だけでなく超能力をも使えてしまう。

その気になれば人間がいくら束になっても、その体をねじ切ることすらできてしまう。


けれど、そうはしなかった。

せいぜい彼らの靴紐を超能力で両足結んで動けなくするくらい。


というか、殴りかかっても謎バリアで相手に届かない。

あきらかに地球人がかなう相手ではなかった。


「ちくしょう! 必ずお前らぶっ殺してやるからなーー!!」


「どうしてそこまで攻撃的になるのですか?」


「部屋にゴキブリが出たら殺すしかないだろうが!」


「ワレワレはゴキブリと共存する道を選びます」


「誰がゴキブリだこのやろーー!!」


地球人の一部はいつまでも宇宙人への怒りの炎を消さなかった。


一方で、宇宙人が支配するようになってから

むしろ地球人の生活はみるみる向上していった。


宇宙人の技術提供もあって、社会はますます青天井に発展。


これまで地球人で武器をつくっていがみあっていたが、

そんな費用も必要なくなったのでお金も一気に浮いた。


宇宙人がやってきた当時を知らない若い世代ほど、支配への抵抗感がなくなっていく。


「てかさ、宇宙人の支配のほうがよくね?」


「わかる。私も社会の授業中めっちゃそう思った」


「昔って人間で争ってたんでしょ。意味わからないよね」


「ほんとそう。てか、2組の〇〇さ、宇宙人の彼氏できたらしいよ」


「マジ?」


「宇宙人って人間とちがってなんでもできるから、

 やっぱデートとかもすごいんだって」


「え~~……。私も宇宙人の彼氏ほしい~~……」


最初こそ、地球人VS宇宙人という縮図もいつしか影をひそませ

地球には宇宙人と地球人が当たり前に共存する平和な世界になった。


宇宙人と人間との結婚も認められるようになり、

生物器官がちがいすぎて子供はできないが幸せな家庭をいくつも作っていった。


あらゆる食事が世界中に行き届き貧困はなくなり、

宇宙人の技術でもって地球温暖化は食い止められ、

福祉サービスも充実し少子高齢化は解決。


豊かな生活は人間の精神にも余裕を与え、

人間同士でディスり合うような空気までなくなった。


「ああ、やっぱりこの世界の支配者は宇宙人さまだ!」


人間は宇宙人に感謝するようになり、

地球支配権の譲渡から10年後に記念パーティを開くこととなった。


侵略者としての引け目もあったからか

宇宙人にとってもこのパーティをたいそう喜んでくれた。


「地球のみなさん、このような場を用意してくれてありがとうございます。

 こうしてともに手を取れたのはみなさんの歩み寄りあってこそです」


パーティに参加している地球人は拍手を送った。


「今回の申し出にわれわれ宇宙人は感動いたしました。

 なので、今回は宇宙人全員をここに集めました。

 

 さあ、声をあわせて地球人に感謝をしましょう。

 

 せーのっ」


宇宙人が声を合わせたときだった。



その後ろに控えていた彼らの母艦。

それもメインエンジン部から大きな爆発が起きた。


まもなく宇宙人の母艦スピーカーから人間の声が聞こえた。


『ざまあみろ侵略者ども!!

 メインコントロールはぶっ壊してやったぞ!

 これでお前らはもう帰ることも救難信号も送れねぇ!』



「な、なんてことを……!」


宇宙人たちは青ざめた。



『地球の水のろ過装置も、空気の循環装置も破壊済みだ!

 お前ら侵略者はあとは死ぬしかないんだ! ぎゃはははは!!』



その言葉のとおりだった。


母艦でしか補給できない宇宙人は地球に長くとどまれない。

この先待ち受けているのは緩やかな餓死そのものだった。



『いいか! 覚えておけ!!

 この地球は人間のものだ!! お前らのものじゃない!!

 

 これですべて元通りになったんだ!!』



一部の過激派により宇宙人の母艦は跡形もなく破壊された。

宇宙人はその後に数を減らし、やがて誰もいなくなった。



ふたたび地球は人間のものとなった。



そして、今も地球の支配権をめぐって地球人たちは争いを破壊を繰り返している。

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