第354話(終・第九章第34話) 最高のチーム2
「なるほど……。それでプログラム関係のことを
その日の午後。
ギフテッド・オンラインの世界に行った私は、サブハウスにいた彼女と話していました。
コエちゃんが、身近にいる機械に強い人、と言っていた彼女・ライザと。
「……ほんと、セツらしいですね。まさか、ゲームが要因で将来の夢を決めちまうとは思いもしませんでしたが。ですが、いいですね。やってやりましょう」
ライザは私のお願いを聞いてくれました。
最初は難しそうな調子で返されていたのでほんの少しだけ心配になりましたが、最終的には私に手を貸してくれる、と言ってくれたライザ。
私も思います。
なんだかんだで私たちのために動いてくれるところは、ライザっぽいな、と。
私は、協力してくれると言ったライザに感謝しました。
「コエとクロがつくったものがうちに送られてくるから、それを調整すりゃあいいんですね? ……っつーか、やっぱりコエはうちの住所調べられるんですね……」
「……まあ、コエちゃんは現実にある機械だったらなんでも操れちゃうから……。それよりも、私はライザの方に驚いてるよ……。百合女の警備ロボットをハッキングしてロボットに搭載されてたカメラの映像をネットに流してたんだって? コエちゃんから聞いたよ? ……それ、よくないことだよね? それで助けられてるからあまり言えないんだけど……」
「……ああでもしねぇとわーは助からなかったんですよ。何もしなかったらわーは間違いなく破滅させられてました。わーだけでなく、わーの家族も。行った悪事を全てなかったことにできる、そんな奴が相手だったんです。正攻法だけではどうにもならない相手……。毒をもって毒を制す――あんな毒、毒じゃねぇと太刀打ちできなかったでしょう」
「……」
「……それに、あいつは踏み込んじゃいけねぇとこまで踏み込んできやがりました。本当ならあそこまでするつもりはなかったんです。ですがあいつは、
「ライザ……」
コエちゃんに自分の家の住所を知られていたことに末恐ろしさを感じていたライザ。
ライザはコエちゃんのことを恐ろしいと評していましたが、それを聞いた瞬間、私はコエちゃんが朝、イチ姉が押しかけて来たあとに教えてくれていたことを思い出しました。
文化祭の時、あの問題の女子生徒が悪事を働いている瞬間を褒められない方法で晒したのはライザである――ということを。
私は、ライザに悪いことをしてほしくはなくてそれを指摘しましたが……。
ただ、よくないことをしたライザにも言い分はあって……。
……それに。
私にまで被害を及ぼそうとしたことが我慢ならなかった、そう声に怒りを滲ませて言った彼女に私は、何が正しいのかわからなくなって何も言えなくなりました。
空気が重たくなったのを感じたのでしょう。
ライザが少し調子を明るくして言ってきます。
「……えっと、毒を食らわば皿まで、なんてやるつもりはありませんから、そんな不安そうな顔をしないでください。この技術をもう悪いことには使わねぇって約束しますよ。っつーか、わーはこれ、コエから教わったんですけどね……。文化祭での件、あれは元々あいつがやるつもりでいましたから。それをわーが、自分で決着をつけたい、って譲ってもらったんですが、それでわーのことを悪く言ってくるなんてひどくねぇですか、あのロボ子!」
「えっ!? コエちゃん、そんなこと一言も言ってなかったけど……!?」
「わーは一般的な女子高生だったんですよ? 普通に暮らしてたJKがそんな技術身につけてるわけねぇじゃねぇですか。あの子に何から何まで叩き込んでもらったんです。こっちの世界でも暇なときに練習に付き合ってもったりなんかして……」
「っ! そういえば、何かを一緒に勉強してたような……っ」
話はこの場にはいないコエちゃんのことに。
(ちなみに彼女は今現実でおせちづくりの続きをしています)
少し不満そうなライザ曰く、警備ロボットの制御を乗っ取ったあの技術はコエちゃん直伝、とのこと。
私は、前に店番をしていた時にコエちゃんがライザと一緒にいて難しい話をしているところを見たことがありました。
それも何回も。
あの時、コエちゃんがライザに悪いことを教えていた、と……。
何やってるの、コエちゃん……。
コエちゃんが仕出かしていたことに頭を抱える私と、苦笑するしかないといった様子のライザ。
そんな私たちに話し掛けてくる子がいました。
「何をしてるの、お姉さん、ライザ?」
マーチちゃんです。
今さっきログインしてきたようで、何を話していたのかまではわからない、といった感じのマーチちゃん。
私はどう答えるべきか迷いました。
隠すのも忍びないですが、言うのも憚られる内容だったもので……。
私が答えあぐねているうちにライザがマーチちゃんの問いに返していました。
「いえ、コエがオーバースペック過ぎてヤバい、っつー話をちょっと……ね? あとは、セツの将来の目標について、です」
「お姉さんの目標! 聞いてみたいの!」
ライザがそう言うと、マーチちゃんは、私の目標、の部分に食いつきます。
マーチちゃんがすごく興味を示して尋ねてきたため、私は彼女に打ち明けることにしました。
「えっと、その……
――今はまだ治せない病気を治せる薬をつくれる人になりたいな、って」
「っ! そ、それって……っ」
この答えだけで私がやろうとしていることが伝わったのでしょう。
彼女は目を見開いて。
その大きな目の端から、雫がツーッと頬を伝っていきました。
彼女はしばらくの間固まっていましたが……。
ハッとして、顔にできてしまった一筋の縦の線を拭って。
笑顔をつくって言ってくれました。
「ボク、お姉さんを応援するの! ボクの妹も夢を見つけたみたいで、それを叶えてあげるために支えようと思って始めたことがあったのだけど、それが運よく上手くいきそうだからお姉さんもサポートするの!」
私の力になりたい、と。
彼女のために何かできることはないか、と考えていたのですが、まさかその私を支えようとしてくれるなんて……。
思いが強くなります。
――絶対にこの子を助けるんだ!
という思いが。
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