第223話(第六章第17話) 再戦セツvsライザ(第一部・セツ視点)
私たちはライザの捜索を続けることに決めました。
先ほどライザを見つけた私とマーチちゃんがライザを追い、ススキさんとキリさん、パインくんの三人には一応サブハウスに行ってもらって、クロ姉とコエちゃんがメインハウスに残ることに。
早速探しに行こうとした私でしたが、マーチちゃんが、準備がある、とのことで少しだけ待つことになりました。
マーチちゃんは倉庫に行ってすぐに戻ってきます。
準備が整ったことを確認して、私たちはライザを連れ戻すためにギルドハウスを出発しました。
それからまず目指したのは第一層「スクオスの森」の隠し部屋です。
そこでライザを見つけていたため、もしかしたらまだいるかもしれない、そう考えて。
ですが、そこにライザの姿はありませんでした。
「……やっぱりいないの」
「ど、どうしよう……。ライザの行きそうな場所を回ってみるしかないかな?」
マーチちゃんの溜息混じりの声が聞こえてきます。
ここが一番ライザがいそうな場所だったのですが……。
私はもう、ライザの行きそうな場所を片っ端から見に行くローラー作戦を行うしかないのではないか、としか考えられませんでした。
それをマーチちゃんに提案してみますが、彼女は首を横に振りました。
その方法は『アナライズ』を持ってるライザには通用しない、と。
……マーチちゃんの言う通りでした。
『アナライズ』はマップをつくれますし、そのマップ上にプレイヤーの位置をアイコンとして表示させることも可能とのことです。
私たちが、パーティやギルドのメンバーならメニュー画面からわかる自分の居場所を伝えないように設定したとしても、ライザには私たちの居場所がわかってしまう……。
それでも、これ以外の方法を私は思いつかなくて……。
どうしたらいいのかわからなくなって頭を抱えた私に、マーチちゃんは言ってきました。
「……あのライザなの。もうここにはいない気がなんとなくしてた。だから、ちゃんと備えてきたの。
――あいつは自分の専売特許みたいに思ってるみたいだけど、むしろ、それはボクの十八番なの。ボクが増やしたんだから」
そう言ってマーチちゃんがバッグから取り出したのは――。
~~~~ ライザ視点 ~~~~
……本当に厄介な連中です。
わーを襲おうとしてきた奴らの協力者、っつーか、実行犯らにわーを襲うように仕向けた首謀者どもっつった方が正しいですね。
その首謀者ども、位置を特定されないスキルを持っていやがって『アナライズ』の「サーチ」に引っ掛かりやがりません。
マジでめんどくせぇです。
……まあ、メンバーはわかりましたし、一人を除いて第四層までしか行けねぇっつー情報は拾わせてもらいましたが。
(その一人は、情報を隠蔽するスキルを持っていやがりますね、たぶん)
とりあえず第四層を探しますか。
奴らの素早さはわからねぇ一人を除いてそれほどでもなかったんで、虱潰しに探せばいつかは見つけられるでしょう。
「タチシェスの自然保護区」、「アホクビ竜宮城」、「リスセフが守る王の墓」を見て回りましたが見つけられず……。
「スクオスのジャングル」を調べようとそのダンジョンに入った時――。
「見つけたよ、ライザさん」
「大人しく連れて帰られるの」
「なっ!?
二人が現れました。
退路を塞ぐようにして立つセツと、行く手を阻むようにして立つマーチ。
……しくじりました。
あいつらを探すのに必死になりすぎてセツたちの位置を把握するのを疎かにしちまっていました……っ。
~~~~ セツ視点 ~~~~
第四層「スクオスのジャングル」でライザを見つけました。
それができたのはマーチちゃんのおかげです。
マーチちゃんがあの時バッグから取り出したのは「スキル変更の巻物」。
それでマーチちゃんは『石像化』を『ないものねだり』に変更しました。
『ないものねだり』――所持アイテムにないアイテムがどこにあるのかを把握・追跡することができる。
あとはそのスキルを使って「スキル変更の巻物」の位置を調べただけ。
そのアイテムはイベント優勝の景品アイテムですので、持って動いている人がいればそれはライザだと特定することができます。
(第五層エリアの南側にも反応があったそうですが、それは私たちのギルドハウスに保管してある分なので除外)
私とマーチちゃんでライザを挟んで立ちます。
彼女は「帰還の笛」を使おうとしましたが、私が直ちに接近して腕を掴んでそれを阻止。
歯を軋ませるライザの姿が視界に映ります。
「逃がさないから。絶対に」
「なんで……っ。なんでですか!?
私がライザを捕まえると、彼女は取り乱して言ってきました。
「大体! なーはわーのこと、許さない、って言ってたじゃねぇですか! それなのにまたやらかしてんですよ、わーは! 信用ならねぇでしょう、普通!」
「……そうだね。まだ完全に許したわけじゃない。けど、ライザさんが意味もなくこんなことをする人じゃない、ってことはもう知ってるから」
「っ!」
私には彼女が、わざと嫌われようとしているようにしか見えません。
それを伝えると、彼女は一瞬目を見開き、焦ったように口にします。
「わーは、わーは! サクラをやって――」
「それ、やったのライザさんじゃないでしょ?」
「っ!?」
「今のライザさんのスキルって、『アナライズ』と『トリックスター』とたぶんだけど『人を転移させるスキル』の三つだよね? 眠らせるスキルは持ってないはず」
「……変えてる可能性だってあるじゃ――」
「今もサクラさんは眠ってるのに? 原因になったスキルが消えたら、その効果はなくなるか、少なくても弱くなるんじゃないかな?」
「……っ。本当に、どうしてこんなにも鋭くなっちまったんですかね……。以前のなーはもっとぽわぽわしてたっつーのにっ」
ライザは、サクラさんを手に掛けたことを主張してきましたが、私たちの中では、その犯人はライザではない、という結論がもう出ています。
あと、ライザが『トリックスター』を手放さないと確信している理由は、マーチちゃんから聞いたからです。
マーチちゃんがライザに弥生のことを話した時、彼女はこう言ったそうです。
――「『貫通』を持ったまま放置してくれたのはプラスですね。それが誰かの手に渡って使われたら、防御がいくら高いセツでもヤバかったでしょうから。……わーの『トリックスター』も同様ですね」
と。
「それは認めたってこと? 一緒に帰ってくれるってことでいいんだよね、ライザさん!」
彼女の発言は、もう嘘はつき通せない、と観念しているように捉えられました。
私はライザが戻ってきてくれると思ってホッとしていたのですが、しかし、
「――他人の気も知らねぇで」
彼女は手を淡く光らせ始めました。
これは、スキル――ッ!?
「今はまだわーだけが標的になってんのに、なーらがわーと仲良くしてたら、なーらまで標的になっちまうじゃねぇですかっ!」
「っ! お姉さん!」
ライザの心の叫び……。
やはり彼女は私たちに迷惑を掛けないようにしようとしていたようです。
彼女が使おうとしたのは転移のスキル。
それで私をどこかに飛ばそうとしたようですが、マーチちゃんに阻止されます。
代わりにマーチちゃんが姿を消してしまいましたが……。
「……このわからず屋!」
私はライザと向き合いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます