転生勇者の異世界英雄譚

天ヶ瀬 らぴす

第1話 転生勇者




「んぁあ、眩しい……」


ふあっと、風が舞い上がると涼しい音色をなびかせながら木が揺れた。


「ここ、どこ?」




~・~・~・〜・〜・




どういうことだ?さっきまで、駅のホームにいたはずでは……?

電車を待ってて……

あれ、その後、どうしたっけ?

まさか、轢かれたとかないよね?

笑えないんだけど……



カチャ



「なんか、懐に違和感があるな」


ゴソゴソ


「何、このカードみたいなやつ?」


なんか見たことない文字が書いてあるな。

英語でもないし、中国語でもないな……

キリル文字?

いや、違うな。

くさび形文字?

はたまた、神聖文字?

古代の文字っぽいけどな。


「よめねぇ……な?って、読めるだと!?」




[冒険者証明書]

[氏名 ヒュンメル・アイレット]

[冒険者ランク Sランク]

[職業 勇者]

[装備武器 聖剣ユーリウス]




「…………えぇ?なんか『勇者』って書いてあるの気のせいだよな?

 あぁ、もう、わけ分からん!」




ドサッ。




なにかを諦めたように心地よい芝生の上に寝転ぶ。

ちょうど木陰になっていて気持ちいい。


「……まじで、意味分かんねぇ。

 そういえば、さっき聖剣とか書いてあったな」


異世界なのかどうか分からないが、少々楽しみつつある。

夢かもしれないしな。

夢ならば、いっそのこと楽しんでしまえばいいのでないだろうか。

まずは、夢かどうか確認しようか。




バチン!!




「痛ってぇ!夢じゃねえわ!」


夢だけど、夢じゃなかった!


有名なセリフを言っても、違う世界ならば別に言っちゃっていいのだ。

はぁ、異世界転生、確定か?


「それは、置いといて、聖剣の話だよな?」




カチャン。




「なんかあったわ。これが聖剣?振ってみるか」


なんか軽い気もするな。

もっと重いもんだと思ったんだが。

軽いな。

素振りしてみるか。



「ハァッ!!」


ジャキン!!!!!!

ズバッ!!!!!!!



「……え、えぐぅぅ。剣で大木が真っ二つとか初めて見たんだが」


流石、聖剣と言ったところか。

これは簡単に使っちゃいけないやつだわ。

なるべく、使わんとこ。

別の攻撃手段とかないのか?

奇しくも、勇者なんだし『光魔法』とかないの?


「なんか念じてみるか?」


光・魔・法!



シュイン!!

ドゴーン!!



「うぁ、これもだめだ。強すぎやろ」


こんなんやったら、消し炭になってしまうわ!

だめか。

取り敢えず、魔法の方が被害は少ないから、こっちを使うか。


…………じゃなくて!

なんで、勇者!?

で、なんか馴染んじゃってるけど!?

どうしよう……。

前世かどうかわからんが、前世の俺は、死んじゃったのか?

うーむ。

謎は深まるばかりだ。

やはり、人に聞くのが一番だな。

なんか近くに街はないか?

あそこの道沿いに行けば、何かしらあるだろ。

さあ、行くか。



まだまだ、俺の冒険は始まったばかりだ。

異世界転生かどうか知らんが、この世界を生きてやろうじゃねえか。

どんな試練があったとしても。








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