幕間〜ライトニング誕生
第18話 開発難航
「すまぬが、燃料タンクとホースをダウンサイジングさせてくれ」
アーネストのもとに並木モータースから電話が入った。並木はなんか興奮している。
パーツが当初よりダウンサイジングするらしい。価格交渉のチャンスかもしれないが、財布はサンディ持ちだからあまり気にしてない。
しかしそんなんでちょっとは材料費節約になるんかねぇ?交渉する手間が掛かる分の時間給で埋め合わせ出来そうなもんだが。
「なんでなんですか?変えないとハイドロマチックが入らないとかですか?」
「いや、そういうことではなくて、三波の野郎がとんでもないモノ載っけて来やがった。これはオレへの徴発だ。エンジンへの燃料供給をむちゃくちゃ抑えてボディも全身補強しないとこいつ自分の加速でクラッシュするぞ」
三波サイクルエンジンだっけ?排ガスが出ないんだよね。
「排ガスが出ないなんて可愛いモンじゃねえ!ガソリンと空気を燃料にする質量消失エンジンだ。インテークはストローで充分、いやストローでも太すぎだ。1リッターもガソリン入れたらてめぇ死ぬまでに使い切れねえぞ!」
そういえば、混合気の重さのモノを光速に加速するだけのエネルギーを軸回転で出すとか言ってたなつまりe=mc^2だねぇ。よくしらんけど。全部軸回転で取り出せるってことは発熱も振動もないってことじゃない?
でもデチューンするのかぁ、ちょっと嫌だな。本来の性能を押さえ付けてチビチビ使うってことだよね。
「石油タンカーでもあんな出力要らねえ、普通のホース付けてたら1億馬力だ。細めのストローにしてそれを100万馬力まで落とす。落としてタンカー用エンジン100台分だ。あとはコンピュータで人体が耐えられる範囲内の加速に制限する。そうしないと車体が加速を受け止めてもドライバーが車内でぺっちゃんこになるぞ。」
なにそれ怖い。
「あいつは暴走技術者だ。程度とか用途に合わせた全体最適化ってもんを考えてない。儂ならその余力をエンジン小型軽量化に回して他のデバイスを組み込む空間に宛てる。1000分の1、つまり縦横高さ10分の1、それでも10万馬力ある。それで充分だ」
いやいや、完全に話がパワーインフレしてて全然実感湧きません。そもそも並木の言い分だとキチガイなのは三波だけで、まるで並木本人はバランス感覚に優れた一般人のような物言いだが、こいつだって空跳ぶハイドロマチックサスを作れるとなったときの鋭い眼光を俺は忘れてないからな。
「三波さんに相談してみたらどうですか?もしかしたら元よりダウンサイズしたら失礼とか変な忖度してそのエンジンなのかもしれませんよ?」
預かった品を実用性能が上回ったとしても排気量を小さくするっていうのは面倒なことだ、そこで無理やりもとの排気量と直6という構成を守ってオーバースペックになっちゃったんじゃないかな?
「そうかもしれない。でも原動機変更はオーナーの許可が要る。そういう交渉して来て良いか?」
肯定の返事をした。フルスロットルくれてやると加速度で中で身体が潰れるクルマなんて怖いよ。急いで逃げないといけないときにはクイって踏むんだから。
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