第16話 逢いたかった……。

〜サンディ(本名はヨシオ)視点〜


 わたくしサンディは隣国で聖女やってます。ハードチートな魔法無双も実は出番はありません。お飾り聖女です。居るだけで恵みをもたらす存在として祀り上げる事に意味があるそうです。


 それでも国王と並ぶ国の要であり、生活は保証され、大聖堂の主という肩書が付いて護衛の騎士ナイトも2000人割り当てられていて24時間4交代引継リードタイム1時間で勤務してもらってました。


 常時500人体制というと護衛としては多すぎるとお思いでしょう。隣国は10の地域に分かれ、それぞれに常駐するのが50人で、わたくしが行く先々で該当する地区担当から10人を近衛として差し出す決まりでした。


 残りは何をしているかというと、予算の確保と不満分子の監視と、その傾向と対策の調査といった、わたくしに降りかかる諸問題を未然に防ぐ任務をされているとのことです。わたくし専任の騎士団なのに見たことも会ったこともない方が9割です。


 前世のおとぎ話で出てきた騎士たちはみんな主人と個人的なつながりが強くて、いざというときに職務関係なく頼りになる存在で、憧れたものです。まるでロボットのように職務―それも主に書類仕事と倉庫管理―を黙々と遂行する騎士たちになんか思ってたのと違うという違和感は禁じえませんでした。


 不本意な事を未然に防ぐ事は必要です。それはとても大切なことです。騎士団の皆さんのことを悪く言うつもりもありませんし、日々感謝しています。しかしそれは肩書きである「国の大聖堂の主」という職位としての感謝です。


 わたくしサンディとしては見えない味方を意識することはありませんし、彼らはわたくしに意識すらさせないことが誉とされています。つまり気が付いて感謝を表明した時点で彼らとしてはマイナス評価なのです。わたくしからは彼らは居ないのと同じです。


 騎士たちが思ってたのと違う。おとぎ話はおとぎ話だけでわたくしが期待していた世界はどこにも存在しないのだと諦めていました。


 勝手に思ってた世界が間違っていて、現実のこの世界を受け入れるしかないと諦めていた時留学先の魔術学院でついに見つけてしまいました。


 どんな強敵をもものともせずぶっ飛ばせるほど強くて、私にはとっても優しくて、まるで恋人のように素敵な、私だけのとびっきりのナイトを。


やっと出逢えた。逢いたかった………。


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