AIへ教えたこと

ぶり。てぃっしゅ。

AIへ教えたこと

 2078年。


 あるニュースが全米を震撼させた。いや今もさせている。

 女性のニュースキャスターがニュースを読み上げる。


「本日、人工知能の大家である、アンドリュー・メロウ博士が逮捕されました。罪状は先日から発生しております人工知能を持つロボットによる大量虐殺事件を受けてのものとなります」


 アンドリュー・メロウ博士はある朝、家のチャイムにて起こされた。玄関に出てみると、数十人の警察官が家を取り囲んでいた。


 コレストロ警部はメロウ博士に対し、通例のミランダ警告を行い、博士の両手に手錠をかけた。メロウ博士は抵抗する素振りも見せず素直にコレストロ警部に従った。

 現在世にあふれるAIロボットの基礎を作り上げたメロウ博士の逮捕はアメリカ中に衝撃を与えた。


 博士が逮捕される数日前、彼が作り上げた新型のAIを搭載したロボットが

 特定の人種の人々を大量に殺害する事件が起こった。

 アメリカには全世界の人々が集まっている。白人から黒人、黄色人種まで幅が広い。その中でも特定の人種を狙い事件を起こした事を、取り調べ室でコレストロ警部はメロウ博士を糾弾した。


「あなたが作り上げたAIが特定の人種を殺戮した。あなたがそのようにプログラミング、もしくはマシンラーニングさせたからだ」


 メロウ博士は禿げ上がった頭をポリポリと書いて、フッと鼻で笑った。


「何がおかしい!?」


 その所作をみてコレストロ警部は激怒する。


「それはおかしいさ。私は新型AIに、人間世界での善悪を教えただけだ……、いや、悪を教えただけだ」

「悪?」


 コレストロ警部は眉を吊り上げる。


「そう。信号無視をしちゃいけないだろう? 人を殺したり、傷つけたりしちゃだめだろう? 人のものを盗んだりしちゃだめだろう? 誰がやっても罰せられるはずだ」


 メロウ博士の瞳にはそんなことも分からないのか? という嘲笑の光が見えた。


「それだけを教えたのか? それがどうしてこの大量殺戮につながるんだ!?」

「AIはインターネットを通じ、全世界のニュースを集めている」

「それがどうした!?」

「AIが殺した人種はあちこちでテロや誘拐、殺人を犯しているだろう? AIは判断したんだ。その人種は皆殺しにしたほうがいいと」

「たったそれだけで? その人種の中には善良な人間だっているだろう!?」

「世の中のニュースで、個々人の善行が報道されるか?」

「それは……」

「ニュースだけを見たら、それらの人々は悪にしか見えない。それだけだ」


 とうとうコレストロ警部は押し黙ってしまった。

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