第8話ぶり返す火
「話をぶり返すわけじゃないんだけどね…」
その様な切り口で司馬芝居は雑談配信を始めた。
「メンバーの炎上騒動が無事に鎮火したのは良いことだよ。でもさぁ…正直に話すとカガミンが燃料投下したようなものじゃない?それなのに火が強まったら自分の発言力で無理やりに鎮火させて…それでメンバーのファンまでも奪ってさぁ…カガミンちょっと性格悪くない?」
司馬芝居は冗談を言うように所々で笑いながら愚痴のようなものを口にする。
「配信に載せてるしアーカイブも残す予定だから。これは悪口じゃないよ。カガミンに会う予定があったら直接言うつもりだし。ただちょっと星ちゃんと雅ちゃんが可哀想だと思ったから。雑談配信で話すのも丁度いい話題だったし話してみた。皆どう思う?」
その問いかけにコメント欄の民達は発言を許されて思い思いの書き込みをしていく。
「そもそもフロンティアタイムで鏡様に逆らえるメンバーって芝居ちゃんぐらいじゃない?」
「鏡様が気に食わなかったらメンバーをクビに出来そう…」
「でも確実にフロンティアタイムがこんなに有名になったのは鏡様のおかげだから」
「才能の塊の鏡様とプロ意識を同じレベルで持つのは大変そうだとは思った」
「芝居ちゃんの配信スタイルはわかるけど…鏡様に逆らうような発言はやめな?」
コメント欄には神内鏡を擁護するような書き込みばかりが見受けられた。
逆に神内鏡を否定するような発言は殆どない。
「なんか…違和感感じるんだよね。確かにカガミンは偉大だけどさ…その行動全てが正しいわけじゃないでしょ?だって人間なんだから。間違いだって起こすじゃん。それなのにファンが全肯定するせいでカガミンは人ではない神のような存在に祭り上げられているんじゃない?今回の炎上の件に関しては他のメンバーのプロ意識が低いって提言して自らにファンを無理矢理に取り込んだカガミンが悪いと思うんだよね。後輩に無理やりに噛み付いて…後輩のファンを奪ったんだよ?これっておかしくない?」
司馬芝居の言っていることは最もだった。
けれど、それを帳消しに出来るほど神内鏡の存在は偉大なのである。
コメント欄もこれ以上この話題を掘り下げてほしくないらしく、話は途中で終わってしまうのであった。
「芝居さんの配信って観てる?」
案件の関係で打ち合わせに来た禍々雅は僕に問いかける。
「観てるよ。フロンティアタイム内でも異色なメンバーで毎回の配信で爆弾落としていくよね…」
「そうなんだよ。でも後輩には凄く優しいからさぁ…慕われているんだよね」
「そうなんだ。前回の配信でも何気なく爆弾投げてたね」
「それよ。フロンティアタイムで内部抗争みたいになって…空気悪いんだよね」
「まじか…それって神内さんと司馬さんの派閥が出来ているってこと?」
「それに近いね。後輩の殆どは司馬さん派みたいなんだけど…司馬さんよりも先輩は皆、神内さんにつくみたいなんだ。はっきり言って気まずいよね…」
「勢力的にはどっちが優勢とかあるの?」
「神内さんは一人で最強だからね…神内さん側が優勢でしょ…」
「じゃあ争うのやめたら?」
「いやいや。これも芝居さんのプロレスだと思う…私達も巻き込んで話題を大きくして全国でこの話題をさせようとしているんだよ。その結果、皆の登録者数が上がってフロンティアタイムの名前はもっと有名になる。どんな手法でも名前が売れたら良いんじゃないかな」
「なるほど。それじゃあ司馬さんも神内さんと根底は一緒なんだ?」
「そうだよ。フロンティアタイムを有名にするって気持ちが人一倍強い二人なんだね」
「巻き込まれて大変じゃない?」
「まぁね。でもいつもお世話になってるから。これぐらい許せるよ」
「そっか…」
雑談をそこらへんで切り上げると僕と禍々雅はコラボ商品についての話し合いを進めるのであった。
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