何准   謎の外戚一門

何准かじゅん、字は幼道ようどう穆章皇后ぼくしょうこうごう何法倪かほうげいの父だ。隠棲を志しており、欲少なかったが、加冠後まもなく楊州府ようしゅうふから何度も何度も士官の依頼が飛んできた。そのすべてを蹴った。


兄の何充かじゅう驃騎將軍ひょうきしょうぐん、つまり東晋軍のほぼトップとなると、また改めて士官を勧めてくる。何准は答える。

第五だいごの名を何故驃騎に滅されねばならんのですか?」

何准は五男であったため、そう自称したのだ。兄は宰相として朝廷で大きな権威を握っていたが、何准はただただ隠者としてすごし、他人の問題に首を突っ込むこともなかった。ただ佛經ぶっきょうを読みふけり、宝塔や廟の修繕に努めた。やがて散騎郎さんきろうとしての召喚を受けるも、応じなかった。47 歳で死亡。357 年に金紫光祿大夫きんしこうろくたいふ晉興縣侯しんこうけんこうの追贈が決まったが、子の何惔かたんは父親譲りの隠棲志向であったため、辞退を申し出た。


子は三人。何放かほう、何惔、何澄かちょうである。


何放は男児なくして死亡した何充の爵位を継承した。


何惔は年若くして南康太守なんこうたいしゅに任じられたが、早々に死亡。二人の子を残す。兄の何元度かげんど西陽太守せいようたいしゅとなり、弟の何叔度かしゅくど太常卿たいじょうけい尚書しょうしょとなった。


何澄、字は季玄きげん祕書郎ひしょろうとして起家し、祕書丞ひしょじょうに移った。いかにもお貴族さまとしての風格を備えていたため祕書監ひしょかん太常たいじょう中護軍ちゅうごぐんど累進。まぁ、ほぼほぼお国の中枢である。孝武帝こうぶていも何澄を深く寵愛し、冠軍將軍かんぐんしょうぐん吳國內史ごこくないしにつけた。

395 年ころ、琅邪王ろうやおう司馬徳文しばとくぶん建康城けんこうじょうから出て邸宅を構えることとなった。そこでそこに詰める教育係を選定することとなり、何澄に白羽の矢が立つ。尚書しょうしょに任じられ、また琅邪王師ろうやおうしを兼務することとなった。

安帝あんていが即位すると尚書左僕射しょうしょさぼくしゃに移り、典選てんせん、王師であることはもとのままだった。しかしこの頃何澄は脚に病を得ており、この人事を辞退。朝廷に参内せず、自宅で職務につくことを特別に認められた。ただし本州大中正ほんしゅうだいちゅうせいを兼務することとなった。

桓玄かんげんが政の中枢に立つと、免職を願い出、受け入れられた。そして自宅で死亡した。

安帝が帝位に復帰したところで金紫光祿大夫きんしこうろくたいふが追贈された。

長子の何籍かせきは夭折。次子の何融かゆうは、419 年に大司農だいしのうとなった。




何准,字幼道,穆章皇后父也。高尚寡欲,弱冠知名,州府交辟,並不就。兄充為驃騎將軍,勸其令仕,准曰:「第五之名何滅驃騎?」准兄弟中第五,故有此言。充居宰輔之重,權傾一時,而准散帶衡門,不及人事,唯誦佛經,修營塔廟而已。徵拜散騎郎,不起。年四十七卒。昇平元年,追贈金紫光祿大夫,封晉興縣侯。子惔以父素行高潔,表讓不受。三子:放、惔、澄。放繼充。

惔官至南康太守,早卒。惔子元度,西陽太守;次叔度,太常卿、尚書。

澄字季玄,起家祕書郎,轉丞,清正有器望,累遷祕書監、太常、中護軍。孝武帝深愛之,以為冠軍將軍、吳國內史。太元末,琅邪王出居外第,妙選師傅,徵拜尚書,領琅邪王師。安帝即位,遷尚書左僕射,典選、王師如故。時澄腳疾,固讓,特聽不朝,坐家視事。又領本州大中正。及桓玄執政,以疾奏免,卒于家。安帝反正,追贈金紫光祿大夫。長子籍,早卒。次子融,元熙中,為大司農。


(晋書93-1)




恐い家門の人たち。なんでこんな何充以降目立った事績もないのに劉宋りゅうそうでも普通に外戚の座につけてるんですか……ほんとに蘆江ろこう何氏は存在感があまりにも謎すぎて興味が尽きません。特記されてないのに中枢なので、お前ら意図的に情報隠したんじゃねえの? と疑いたくもなってくるんですよね。こわいこわい……。

と言うか桓玄まわりの動きを見ると、これ間違いなく劉裕のクーデターにかなり深いところで参与してますね。さすがにこの動きはあからさますぎなのでは?


第五之名何滅驃騎?

世説新語だと「予第五之名,何必減驃騎?」になってる。これ違和感持ってたんだけど、なるほど。何准みたいな人がそんなうかつに自負心とかむき出しに示しますかね? みたいのを感じてたんですが、「なんで宮仕えみたいなクソムーブ強要されなアカンのや!」ならピンときます。まあけどどっちが間違ってるかは断定できないよなー。せんそとかに載ってるんでしょうかね。

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