全裸徘徊してたら学校一の美少女と名高い北欧ハーフの露出狂と出会った
むべむべ
第1話 なんだこいつ
全裸徘徊してたら素っ裸の美少女と出会った。
それはある晴れた夜のことだった。
蒸し暑い夏を超えたばかりだというのに、秋を忘れて今にも冬に差し掛かろうかという季節。
自宅から数キロ離れた場所にある人気のない公園で散歩していると、突如物陰から全裸の女が現れたのだ。
「えっ」
「えっ」
これには流石の俺も驚いた。
全裸徘徊歴はそこそこ長い自負があるが、まさか同じ全裸の女性とエンカウントするなど夢にも思わなかったのだ。
「…………」
「…………」
しかもよくよく見てみると、どこか見覚えのある女性だった。
普通の日本人よりも彫りの濃い、欧米の人間を思わせる顔立ち。
それでいながらどことなく日本人らしさも併せ持つ、いわゆるハーフやミックスと呼ばれる少女。
透き通るような金砂の髪と翡翠の眼。
それら要素を兼ね備える人間を、俺は知っていた。
「
いや、エイミーだったか。
忘れたけど、そんな感じの名前だったはずだ。
何故そんな中途半端に知っているのか。
それは彼女の類稀なルックスによるものだった。
ハーフ由来の日本人離れした外見。
それで入学時から結構話題になっていた。
ただ、あまり人と話すのが好きではないのか、いつも一人でいたはずだ。
同じクラスだが、誰かと交流しているところは見たことがなかった。
それがどうしてこんなところで全裸で歩いてるのか。
全くもって分からなかった。
気にはなるが、しかしわざわざ尋ねるほどのことでもないだろう。
「どうも」
「えっ」
そのまま会釈して通り過ぎる。
他者の反応を楽しむタイプの露出狂なら昼間に犯行に臨むはずだ。
そうでないということは、彼女は開放感や緊張感を楽しむタイプの露出狂なのだろう。
下手に話しかけても怯えさせるだけだ。
「しかし女性の露出狂とは珍しいものを見た」
俺も露出には一家言ある方だが、彼女の裸体はそれはとても美しかった。
頭身の高いシルエット、雪のように白い肌、引き締まりつつも柔らかさが見て取れる質感、すらりと伸びた長い足。
俺も彼女のように、美しく素晴らしい
そのまま公園を一周すると、服を着て家に帰るのだった。
☆
翌日。
俺は高校生らしく制服を着用して教室にいた。
今日は一時限目から数学だ。
あまり好きではない教科に顔を顰めていると、何やら周囲が騒めいていることに気がついた。
「ねえ」
不意に背後から声をかけられる。
なんだろう。振り向くと、そこにいたのは白銀エイミだった。
「君は……」
「昼休み。ちょっと付き合ってくれない?」
それだけ言うと、彼女は自分の席に戻っていった。
昨日のことだろう。
彼女が俺に話しかける理由なんてそれしかない。
「お、おい、お前白銀さんとどういう関係なんだ……!?」
斜め後ろの席にいた男友達の
「さあ。告白でもされるのかもしれない」
「はぁ!?」
「罪の」
「告解……!?」
とはいえ俺の方も彼女に話があったのだ。
好都合だ。内海には悪いが、今日は一人で昼ごはんを食べてもらおう。
というわけで昼休みになった。
再び話しかけてきた彼女についていくと、そこは人気のない校舎裏だった。
周りに人がいたらできない話をしたいのだろう。
確かに昨日の出来事は、とてもじゃないが公衆の面前で出来るような話ではなかった。
「……呼び出した理由は分かってるよね?」
「ああ。昨日のことだろう?」
「そ。物分かりがいいのは嫌いじゃないよ」
「俺も話が早い人は嫌いじゃない」
「じゃあ単刀直入に言うね」
緑色の瞳がこちらを強く睨みつけると、
「露出のことをバラされたくなければ、昨日のことは誰にも話さないで」
「奇遇だな。俺も同じことを言おうと思ってた」
俺もまた、彼女の瞳と視線を合わせる。
未成年とはいえ16歳の今、警察に通報でもされたら堪ったものじゃない。
それは向こうも同じなのだろう。
ここで屈しても同じ結果は得られそうだが、他人に弱みを握られた立場のまま学校生活を送るのはとても不健全だ。
対等な立場で互いに脅し合う。
弱みを握っているのはこっちも一緒だ。
ただここで終わってしまっては精神的に良くないので、そのまま続けた。
「……お互い、昨日のことは触れられたくないみたいだな」
「……まあね」
「ならこうしよう。昨日、俺たちは出会わなかった。公園で露出なんかしなかった。どうだ?そっちの方が気楽でいいだろう」
「……あなたがあたしのことを話さないって保証は?」
「俺だって君と同じ立場だ。それが保証にならないか?」
もしも俺が一方的に弱みを握った立場であれば、或いはエロ漫画のような展開に持ち込めたかもしれない。その気は毛頭ないが。
だが俺もまた彼女に弱みを握られているのだ。
互いが互いの生命線を握っている。
強い恨みでも抱いていない限り、わざわざ自分からバラそうなどとは考えない。
「同じだからわかる。相手が自分のことをバラさないかって不安なんだろう?」
「…………」
「でも俺たちは同じ露出狂なんだ。それなら少しは安心できるんじゃないか?」
右手を差し出す。
白銀は何度か俺の目と手の間で視線を行き来させると、不思議そうに問うてきた。
「なんのつもり?」
「握手。お互い秘密は絶対に守るという約束の証みたいなものだ」
指切りげんまんと一緒だ。
言葉だけでは信じきれないという彼女の不安が伝わってくる。
だからこそ、こうした行動で誠意を示すのだ。
突然の提案に白銀は悩んでいるようだった。
だが、やがて渋々といった様子で右手を差し出し返してくれた。
「……もしバラしたら、絶対道連れにしてやるから」
「安心しろ。俺は露出はするが秘密は露見させないタイプの人間なんだ」
女の子らしい小さくも柔らかい右手としっかり握手を交わす。
それでも安心しきれないのか震えを見せる彼女の手を、左手で上から優しく包み込むのだった。
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