最終話 自ら灯す希望の光

 町立中学校の北約三百メートルの山中にダンジョンが出現した葉山は、一時小型モンスターが生存可能域に跋扈していたが、融合者の増加とともに駆逐され、現在は半円形の出現面の正面に駐屯地を施設して、出て来た直後に討伐している。


 駐屯地に到着した三峰小隊は、ダンジョン内の精密な地図と、モンスターの情報を渡された。

 軍人で良かった軍人で良かった軍人で良かった。


「地属性の鳥で融合核出すのがいるのよ。生態はアナホリフクロウみたいの。見た目は不気味なんだけど。地属性が飛行能力持てるようになるから、出来るだけ獲って欲しいって」

「この、悪い妖精って名前の奴か」

「そう」


 襤褸で作ったガマグチヨタカの人形と言えば、七割がた合っているか。

 最前線組の、地属性の重戦士型が飛べるようになる。

 最初に出た時には、その後五十羽以上惨殺して一つしか出なかった。

 入り口に近い森の中にいるが、頻繁にリポップするわけではなく、外にも出て来ないので手を付けていないと言われた。


「出て来ないなら、悪くないじゃないか」

「そうだけど、人類の未来の為よ」

「ニンゲンアトカラキタ」

「強いものが全てを取るんだ」

「中の核のモンスターだって、まだ出て来ないんじゃね」


 何を言っても、やることはやる。

 初日は悪い妖精狩りを中心にして、十二羽から二つ融合核が出て、奇跡だと喜ばれた。


「殲滅したら拙いんだよね。多分。ノルマがあるわけじゃないから、明日は右に行こうかと思うんだが、なにか感じた人」

「特にない」

「うん」

「いいんじゃないでしょうか」

「では、そうしましょう」


 右側は湖沼地帯で、地球なら大蛇、オオトカゲのヘビとトカゲがいる。

 水属性と電撃の相性は抜群で、嘘みたいに簡単に獲れた。

 梓の機嫌がいい。


「稼ぐだけなら、ここでいいよな」

「ブルーワーカーだった身としては、すでに生涯賃金何人分だよと言う状況なんだが」

「でも、ここで手を抜くと、紙のお金が何の価値もなくなるかもしれないのよね」

「帰ったら街まで飛んでって、美味しもの食べようよ」

「トカゲとヘビとどっちが好き?」


 馨子が変なことを聞く。


「どっちもいや」

「ここの名物なのよ。高いし」

「旨いかどうかじゃないか」

「エビって、知らなかったら変な虫ですよね」


 祐利子も時々変な事を言う。

 しょうもない話が出来るほど余裕があるが、油断はしていない。

 妙な気配を感じたので、瀧蔵は電撃を載せた闘気弾を気配に向かって撃った。

 木から瘤のようなものが落ちたので、空中にある内に蹴った。

 拾って、馨子に見せる。


「苔ザルね。心属性で、幻覚を見せるんだけど、融合核が出るのよ」

「嫌な感じがしたんだ」

「その程度にしか影響を受けないのね。みっちゃんは、気を付けて」

「お猿に騙されないようにする」

「ああ、ワニの咆哮対策にも、この猿獲った方がいいか」


 シビレトカゲが一匹いたが、電撃耐性があると思い、手加減なしに雷撃を載せた闘気弾を撃ち込んだら、死んでしまった。

 苔ザルは四匹獲ったが融合核は出なかった。二十メートルのヘビから水属性の小の上が出たので、美智代の強化に使った。

 心属性でなくとも、融合で強化しておけば弱い精神攻撃は防げる。


 翌日、タカアシワニの生息地に行って、手加減なし攻撃をしたら、丁度良く気絶した。

 一人二匹持って帰るのがやっとの大きさ。融合核は一つだった。

 革も使えるし、食材としても人気がある。三日で五人分の融合核が出た。

 悪い妖精が復活していたので、八羽獲ったが、融合核は一つ。

 シビレトカゲはいたら獲る。わざわざ探さない。

 一月タカアシワニを獲って暮らした。


「慣れるとここのワニ、据物斬りと変わらなくなってきたな」

「後四人、地の融合核が欲しいのよ。それまで他所に行くのを待ってくれないかしら」

「特に行きたい所がある訳じゃないが、修行としてはぬるくなったなって思っただけ。じゃ、四つ出るまでに修行になりそうなとこ、つまんでおいてくれるか」

「それなら、軍に頼んでおくわ」


 急ぐわけでもないので、もう一月いたら、地属性は七つ出た。

 その間に検討して、中の上に挑むより、融合強化のために奥多摩にいる中の鳥を獲ることにした。

 ヴィーヴルの続報はなく、本当にいるのかすら怪しくなった。


「中の上はほとんど出ないのよ。出たことがあるのがいる、くらいね」

「まあ、もうこれでいいと思ってるよ。人の役には立ってるし。でも、宝くじみたいな期待はしてる」


 男に戻りたいと言うのは、死んで転生したのに地球に戻ろうとするようなものだと、瀧蔵は考えるようになった。

 ひたすら鳥を獲る。ヴィーブルは飛べるのだから、一撃で気絶させられないと、空中戦になる可能性は高い。

 中型の融合核が出にくい上に、鳥を一撃で気絶させ、落ちる前に脳を破壊するには熟練の技術が必要になる。

 半年の修行で瀧蔵は、中型のニ撃確殺を行えるようになった。

 ヴィーヴルは死体が公表されたが、融合核は出なかった。


「小型は風属性で手加減攻撃が出来る人か何人か出て来ているから、瀧蔵さんは中型の職人をやってくれると、ありがたいのよね」

「まあ、不満はないな。大型の霊核獲ってる人が安全になるんだから、張り合いもある」

「あたし達たっちゃんの護衛で役に立ってる?」

「勿論、俺一人で来れる場所じゃない」

 

 中型確殺を生涯の仕事と決めた瀧蔵に、軍から渥美半島の大山のダンジョンの、飛べる恐鳥類の調査の依頼が来た。


「地属性で飛行力持ちがいるのよ。これから融合核が出たら、地属性の飛行力強化が出来る。悪い妖精のだと飛べるってだけなの。放し飼いのニワトリとか言われてる」

「ひでえな。キチキチバッタの方がましか」


 見せられた画像は、翼のある恐鳥類そのままだった。


「これも、見た目オスメス変わらない?」

「そうみたい。モンスターの鳥って性差があるのいないわよね」

「あそこ、メロン旨いんだよな」

「季節いつだっけ」

「漬物なら年中売ってる」

「メロンの漬物ってなんだよ」

「奈良漬け」

「尾張なのに」


 駐屯地に到着したら、お茶うけにメロンの奈良漬けが出た。


 一般的な鳥より頭が大きく、地属性で防御力の高い恐鳥ケルケルは、瀧蔵の手加減なしの雷属性闘気弾を受けても気絶しなかった。

 遠距離攻撃は恫喝の絶叫だけなので、二匹目には格闘戦で挑んだ。

 

「くらえ! 電光飛び膝蹴りライトニングウィザード!」


 落ちる前に膝で支えて拳槌を当てる。

 ニ撃確殺にはなったが、融合核が出たのは十五羽目だった。

 正規の軍人の馨子に確認した。


「初物でも、適合したら貰っていいのか」

「契約上はそうだけど」

「格闘戦やるんだから、防御力必要じゃね?」

「そだね」


 ピンポン玉ほどの琥珀色の球を触ると、それが望みを叶えてくれるのが瀧蔵には判った。


「これが入っていた鳥、オスでしたか」

「ええ、そうですが」

「性転換出来るみたいです」


 小隊の仲間に見守られながら、万全の準備をして融合した。

 唯一性差のない哺乳類、ヴィーヴルの雄の内生殖器の構造は、熟知している。

 最初の融合の時のように、体中に熱が広がり、同じように治まる。


「終わった」

「たっちゃん、おマタ見せて」

「うん」

「女の子のまんまだ」

「ちんこねえの?」

「自分の意志で出せる。普通の哺乳類より便利」


 熟練した瀧蔵でも、十羽に一つしか融合核は出なかったが、瀧蔵の次に雄の核を融合したエインヘリヤルが、融合者の女を妊娠させた。


「こうして、人類滅亡の危機は防がれたのであった」

「いや、最悪の事態が回避されただけだろ」

「人類の危機を回避するために、瀧蔵さんの子が産みたい」


 瀧蔵の戦いは色々と続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

TSおっさん変身美少女戦士渋沢瀧蔵四十二歳身長148センチGカップ 袴垂猫千代 @necochiyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ