真夏の亡霊

ホクロ

第1話

照りつける太陽、響く蝉の声、揺れる身体

この季節になるときまって自身の色を呪いたくなる。

日に日に更新していく最高気温に心の中で悪態をつきながら

早く夏が終わればいいと思っていた。


そんな俺だが、夕刻だけに現れる燃えるような空は好きだった。

それは次第にピンクになり、やがて紫に包まれて時間をかけ暗闇へと消えていく。

まるで夏の最期の足掻きのようで、目を逸らしてはならないような気がしてその一連の流れを眺めていた。

あんなに騒がしかった蝉もだんだんと覇気を無くし、それを慰めるようにひぐらしが鳴き始める。

ふと、祭りが終わる時のあの感じに似ていると思った。

あれほど煩わしく思っていたものも、こうもいきなり大人しくなられては少し寂しく感じる。




まあ、そう思うのはほんの一瞬のことで

長い間白日の元に晒されたこの身体は、これからやってくる数刻の夜を今か今かと待ち侘びている。

やがて周囲は暗くなり暗がりに紛れたこの身体に気づく者はいない。

空の色が変わりゆくように、まるで闇に溶けるかのようにじわじわと“本体”と一体になる。

この短い時間こそが俺が俺でいられる唯一の時間で、嘘偽りのない正真正銘『本当の自分』になれるのだ。


“本体”と一つになり光と影が混ざった今、昼間は亡霊のような俺も人間に戻れたような気がした。

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真夏の亡霊 ホクロ @hokuro_

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