第8話 その時は来た




「頼む、陽子との間に子供が出来た、済まないが離婚してくれないか?」


とうとうこの時が来たわね。


もしかしたら来ないかも…そう思っていたけど。


運命は変わらないものね。


義両親との恒例ギャンブルも不参加が増えてきたし。


植木部長との魚釣りも不参加が増えていたから、着々と不倫が進んでいるのではないか…そう思ってはいたけどね。


「良いわよ…だけど、これは完全な不貞よね? 義実家とも良好に付き合いをして、貴方の顔を立てて尽くして来た結果がこれなの?」


「すまない…」


「そうね、本来ならこんな物ですましたくないけど…良いわ、貴方が不倫をしていた事は薄々解っていたからね…慰謝料も相場で良いわ…貴方に200万円、陽子さんに200万円、合計400万円で勘弁してあげるわ! 共有財産は本当は貰えるけど、揉めずにサインくれるなら放棄してあげる」


「二人で400万円も取られるのか!」


「ネットでくぐればこれが如何に良心的な金額か解るわよ? ほらね?大体婚姻生活5年の離婚の相場は300万円位、子供まで作っているんだからMAXでとれるわよ!100万円引きは私の情けよ!さぁどうする? 陽子さんを呼んで書面にする? それとも貴方が2人分払う? 悪いけど一括でお願い出来るかしら?」


「解ったよ…陽子のお腹には俺の子が居る…心配掛けたくないから、俺が払う」


「そう、解ったわ、それじゃ、離婚届けとこちらの書類にサインして」


「お前、なんでこんな手際が良いんだよ!」


「あんた馬鹿なの? いつも楽しんでいた週末の義両親とのお楽しみ会、仲が良い植木部長との釣り。それに全く参加しないのに、土日は外出、更に帰宅は遅い…これでバレない訳ないじゃない?」


「俺は、仕事をだな…」


「植木部長の奥さんと私は仲が良いのよ? 貴方の勤怠なんて全部解っていたわ」


「あのな…」


「私は、文句を言っていないわよ? 相場より安く別れてあげるって言っているの? 今更グタグタいう必要は無いでしょう?私は一生懸命義両親に尽くしてきた。貴方はそれなのに、不倫をした。それなのに、相場より安く別れてあげる…それだけだわ」


「解ったよ」


暫く和也はスマホを弄っていた。


私が言っている事が、正しいかどうか調べているのだろう。


それが終わると納得したのかサインをした。


保証人欄はあらかじめ保証会社を使ってお金を払い埋めておいた。


これを提出すれば、赤の他人だわ。


「それじゃ、これは私が提出しておくわね、それじゃ、貴方はこのまま今日から何処かに2日間程泊りにいってね、その間荷物を纏めて出ていくわ」


「そうか…なんだかゴメン…」


「良いのよ、ご両親とは仲良くしていたから、連絡するのは辛いから、後で手紙書くわね」


「解った」


「あとは…」


「まだあるのか?」


「引継ぎ位はした方が良いでしょう? 陽子さんように書いておくわ」


「解った」


「そう? それじゃ出ていってくれる? 私は2日間で引っ越して鍵はポストに入れておくわ」


「解ったよ、それじゃぁな」


「ええっ、長いようで短いなんとも言えない時間だったわね、今迄ありがとう」


「すまないな」


「良いのよ」


こうして私の結婚生活は終わったのよ。



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