第35話 決着
「頑張って。応援行くから!」
母さんから弁当を貰う。
「ありがとう母さん。行って来ます!」
「いってらっしゃい」
強い日差しに当てられながら俺は、集合場所に向かう。
「おはよう優太くん!」
駆け足の優美ちゃんが話しかけてきた。
「おはよう優美ちゃん。どうしの?そんなに慌てて」
息を切らし、額に汗をかいた優美ちゃん。
「ほら…………その…………先に会場行ってるね!」
「……………」
「優太くん?」
「アハハハ!!」
「!?」
おもわず吹き出してしまった。
「どうして笑うの!?」
優美ちゃんの顔が真っ赤になる。
「ゴメンゴメン。わざわざありがとう。期待に応えられるよう頑張るよ」
「…………うん」
駆け足で立ち去る優美ちゃん。その姿を見て少しホッとしている自分がいた。
「おはようございます神谷主将」
「おはようございます!」
「おはよう」
集合場所には既に後輩達が集まっている。一同綺麗な礼を揃えてしてくれて、されたこっちは少し恥ずかしくなった。
「なに後輩にやらしてんのよ」
少し遅れておばさんが到着する。
「礼節を大事にしなさいって常々言ったのはおば…………高野先生」
「おはようございます先生!」
「ハイハイおはよう。…………威勢が良いわねアンタ達」
「それはそうですよ!神谷主将最後の大会なんですから!絶対俺達で有終の美をプレゼントするんです!!」
「なんでアンタ達が神谷にプレゼントすることになんのよ?」
「団体戦は神谷主将無しでやるんですから、優勝したら、凄くないですか!安心して神谷主将も引退出来るじゃありませんか!!」
「皆…………」
「そういうのいいから、ほら会場入るわよ」
「はい!!」
意気揚々と会場に入る後輩達。俺も入ろうとすると首の裾を掴まれる。
「おばさん!?」
「遂に決着ね」
「……………うん」
「幸いメインディッシュは最後みたいだし、ヘマすんじゃないわよ」
「勿論」
背中を押され中に入る。会場にはこの日の為に鍛錬を続けてきた袴を着た人達がひしめき合っている。
「あっ、すみません」
誰かとぶつかったので咄嗟に謝ると相変わらずの目付きでこちらを見てくる。
「久保…………」
「俺と当たるまで負けんじゃねーぞ」
「そっちもな」
順調に勝ち上がる両者。
「あっ!おばさんこちらです!」
「優美ちゃん!どう優太は?」
「順調です!」
「そうよかった。…………なんとか間に合ったみたいね」
「相手は私立相模原学園の久保って選手です」
「そう…………」
(あの人は確か)
「あの久保くんって子は最後まで優太の壁として立ちはだかるのね」
「久保選手のことご存知でしたか?」
「あの子が負けたって悔しがって帰って来る時は大抵が久保って子だったからね」
「五分五分だそうです。対戦成績」
「…………頑張れ優太」
ワーーー!!
湧く会場。遂にその時が訪れる。
「これより塩田中学神谷優太と私立相模原学園『久保和久(くぼかずひさ)』の試合を始める。両者礼!」
2人の因縁はまたとない形で最終局面を迎えた。
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