第31話 屈辱

あのモヤモヤした日から暫く経ったある日、おばさんが他校との練習試合を組んだということで県内有数の私立の学校へお邪魔した。


「剣道部。あったのですね」


「ハッハッハッ!まぁポッと出の先生からしたら意外でしょうな。我が校は団体戦には出場しませんし。ただ、個人戦に関していえば2·3年ペースで結果を残してるんですよ」


「それは存じ上げませんでしたわ。…………それで、わざわざ先生から申込みがあったということわ、今年はその周期が回ってきたのですか?」


「いや、面白い逸材を見つけましてね。そいつが是非貴校の神谷君と対戦したいと」


「神谷と?」


「えぇ。彼です」


「…………面白そうですわね」


おばさんが談笑している間に、俺はあの男に絡まれた。


「君………この学校の生徒だったんだ」


「…………」


「よろしく」


「俺はお前のやり方を今日否定する」


「!?」


いきなりの一触即発状態に道場内に緊張が走った。



「これより塩田中学神谷優太と私立相模原学園『久保和久(くぼかずひさ)』の試合を始める。両者礼!」


構える両者・・・・・


「始め!!!」


力強い審判の合図とともにあの男が迫ってくる。


(力尽くでねじ伏せようとするタイプか)


動きの動線、竹刀の傾きから相手の竹刀の軌道を察する。予測通りの一撃が来た


ズバーン……………


(この一撃、重い!?)


力強い一撃を放った相手は直ぐ様連撃の体勢に移る、だが俺の身体が動かない。


(なに!?)


始めの一撃からは想像しえない速さで迫る竹刀に俺の反応が遅れる。


二撃目の重さに思わず足が竦む。


「クソ!」


「胴!!!」


「!?」


三撃目が俺の脇腹を突き、跪く。


「一本!!!」


胴着を超えて届く痛みに、俺は立ち上がれずにいる。


「神谷主将が一方的に」


「たった三撃でやられた」


「……………」


動揺する部員の声をが聞こえる。


見下す男。


「お前の剣は無力だ」


そう言って立ち去る男。こうして長きに渡る久保との因縁が始まった。



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