第25話 先輩の家
「ここが・・・・・先輩の家ですか?」
「そう畏まるな。古い家柄故な昔の名残が残っておるのだ」
目の前の巨大な門に立ち尽くす俺。剣持先輩は隣の一見壁に見える扉を開けると俺を手招きした。
「薫。ただいま戻りました!」
「おかえり薫…………あらそちらの方は
?」
「母上。以前お話しした後輩です」
「まぁ!貴方が。さぁ上がって上がって」
剣持先輩のお母様は嬉しそうに仕切りを跨がせてくれた。
「父上。ただいま戻りました」
「薫。鍛錬に励むのは良いがあまり遅く…………」
白髪に大層な髭を生やした剣持先輩のお父様に圧倒される。
「君は?」
「父上。彼が剣道部期待の後輩です」
「なに?」
隈なく視線を送る剣持先輩のお父様の視線に冷汗が出る
「そうか。君、名前は?」
「神谷優太…………です」
「…………そうか」
俺を懐かしむように見て微笑む剣持先輩のお父様。
「ゆっくりしていくといい」
「ありがとう…………御座います」
豪勢な夕食をいただき、剣持先輩が見送ってくれた。
「すまんな。堅苦しい雰囲気の夕食で」
「いえ、ご馳走でした。美味しかったです。」
「父上はああ見えて貴様が来た事を喜んでいるんだ」
「そうなんですか?」
「父上は、我が校の初代剣道部主将だったんだ」
「!?」
「元々私の家は古来より刀に縁のある家系でな、父上は剣術の繁栄を願って立ち上げたらしい」
「……………」
「父上の時代は古き伝統ということで活発だったそうだが、これも時代かな…………近年は部員集めも一苦労だ。そしてなにより入部してくれた者の志の低さに、父上は嘆いておられた。だから貴様のような志の高い部員の入部は創設者として嬉しいんだ。きっと」
剣持先輩の表情は学校にいる時とは打って変わってとても嬉しそうだ。
「神谷。私は貴様に期待している」
「先輩…………」
「どうか、私に力を貸してくれ!」
「なに言ってるんですか、当たり前じゃないですか!剣道始めて数ヶ月の俺がどこまでやれるかわかりませんけど、先輩に助けてもらった恩を仇で返すことはしませんよ」
「そうか…………そなたに感謝を」
「じゃあ、俺帰ります」
「あぁ、明日からもよろしく頼んだ」
「はい先輩。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
小さく手を振り見送ってくれる剣持先輩。俺は学校の連中が知らない先輩を見れた優越感に浸りながら夜道を歩いた。
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