Destructor and Attacker
月石 白
第1話
「鬱ですね」
医師から言われた一言は、冷静なそんな言葉だった。
大手証券会社で働く私───緋山れおなは最近仕事や日常生活でひどい倦怠感やイライラを抑えられずにいた。
それをただの風邪のたぐいと思っていた彼女は、“鬱”というちゃんとした病気だと診断され、ただただ信じられなかった。
お医者さんは静かに私に告げる。
「最近多いんですよ。あなたのような症状の人がここ最近ぐっと増えてるんです。現代病ですね」
「でも私、会社に行く気はあります」
「いいですか?あなたの特徴は、仕事に行く意欲はある、そして仕事をしてる時は症状が発生しにくい。ですが、基本的に自己主張をせずただただ仕事をし続け、ともすれば嫌なことがあれば怒りっぽくなったりハイテンションになる。酷い場合は話し方があいまいすぎて意思や指示が伝わりにくく、人間関係に齟齬が生じやすくなるんです」
「はぁ……」
「診断書を出しておきますが、どうしますか?」
そうしてドクターストップをかけた医者は、どことなくそっけない態度で私のほうを見もしないで診断結果を告げた。
医者に「鬱」と診断されたならそれに従うしかない。
ようやく会社で働くたびに感じていた「休暇もなく奴隷のように、死んだように働くこと」から解放できるのだ。
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