第17錠 嘔吐薬というヤバいヤツ
ボス戦と白熊戦では
それもこれも、黒いラベルの【
「うっ、ぷ……」
込み上げてきた吐き気に
もう胃液しか出ないのに、許してくれない。
マーライオンみたいに、とめどなくゲロが出る。
ずーっと、胃をキュッ!と
それと、息をするたび
もう何十分、こうして
いや、私の体内時計は狂ってるから、たぶんそんなに経って無いかも知れないけど、それでもだいぶ長い時間吐いている気がする。
もしも願いが叶うなら過去の私に教えてあげたい。
《胃がひっくり返るほどゲロを吐く》という注釈の意味を。
【嘔吐薬】を
ほんの1時間前までは、ホクホク顔だった。
白熊が置いていったリュックサックが、荷物がタップリ入る素敵なアイテムだと気づいたからだ。
気づけた要因は、お人形さん。
遅かれ早かれ気づけたかもしれないけど、リュックサックの隙間から中に入っていったお人形さんの姿を見て、何気なく
荷室の中は、真っ暗。
しばらく困惑しちゃったけど、その暗闇の中から、お人形さんがひょこっと顔を出す姿を見て、ピーンと
「これ、【アイテムバッグ】だ……」
アイテムバッグは買取表でも桁違いの金額に設定されている激レアアイテムで、ソレを一つ売るだけで一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入る、ダンジョンドリームの象徴みたいなアイテムだ。
アイテムバッグが高値で取引されている理由は、その収納量と利便性。
見た目はポーチや巾着くらいの大きさなのに、内部は何十倍も拡張された空間になっているので、物流革命がどうのこうのってテレビでは言っていた。
白熊のリュックサックは見た目からして大容量だから、たぶん
売る売らない問題は一旦保留にするとして。
ただこれで、ホブゴブリンの素材とダンジョンクリア報酬の宝箱をどうやって持ち帰ろうか悩んでいた件は万事解決。
中身を詳しく調べるのも一旦あとにして、早速ダンジョンの出入口まで走って戻ることにした。
……命拾いしたね、
「ふぅ……」
ダンジョンから出ると、外はすっかり
イレギュラーもあったし、大冒険だった気がしたけど、そこまで時間は経っていなかったみたい。
まぁ、ちっちゃいダンジョンだもんね。
なんて
「あ……そっか」
勉強で学んだ
ダンジョンクリア報酬の宝箱の中には【ダンジョン
このダンジョン
だからこそ国は、より積極的なダンジョン攻略を後押しする為、法を
とはいえ、正直私には『色んなダンジョンを完全攻略して社会貢献しよう』なんて英雄願望は無いから『これが最初で最後の完全攻略になるかもね』なんて、漠然とそう思った。
前のボロっちい御社の姿も、そこには無い。
お気に入りの場所に当たり前にあった
「……帰ろ」
ちょっとだけセンチメンタルな気持ちになってしまったけど、いつまでもここにいるワケにもいかないので、言い聞かせるようにそう呟く。
帰るのが遅くなると、おじいちゃんとおばあちゃんが心配しちゃうもんね。
「っと、忘れるところだった。【嘔吐薬】」
クルリと
家に帰る前に、今日の締め括りとして今のうちに【
ウルトラメンのように、カラータイマーがピコーンピコーンと鳴って
今日は合計50錠も摂っているから、うっかり飲み忘れただけで
黒いラベルの
スンスンと匂いを嗅いでみると、意外にも無臭。
「なーんだ」
【サルミアッキ味】なんていうからだいぶ警戒していたのに、肩透かしを食らった気分。
《胃がひっくり返るほどゲロを吐く》とちっちゃく
むしろ、サルミアッキってどんな味なのかな、なんて想像しながら錠剤をパクリと口に含み、そのまま噛まずに飲み込んだ。
飲み込んで、しまった。
「………………? ぅぷッ!?」
効果は、劇的だった。
そんな自責の念に駆られるほど、劇的に。
もしも願いが叶うなら、未来の私に聞いてみたい。
あと何時間これに耐えなきゃダメですか、って。
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