You are a monster.

第10錠 二度目の御社ダンジョン


探索免許証を取得した日から、早5日。


あの後、夕食の最中に「実は探索免許証を取得して来たんだよ」ってさり気なく伝えてみたら、おじいちゃんもおばあちゃんも入れ歯がポロって落ちるくらい驚いていて、サプライズは無事大成功。


凄いね、頑張ったねっていっぱい褒めてくれて……いっぱいいっぱい心配してくれた。


探索者は、命懸けだもんね。


だから、探索者として明日から頑張ろうって思ってたけど、畑仕事を手伝ったり、お料理を手伝ったり、出来るだけ2人と一緒にいる時間を作って過ごした。


正直、私が安心したかっただけかも。

帰れる場所があるんだよって。


ただ今日からは、ダンジョンに入る予定。

午前中は源さん家に行ってたけどね。


お気に入りの黒いワンピースと、おばあちゃんがってくれた二つ結びの髪をフリフリ揺らして、田舎道をサクサク進む。


目的地は、あの御社おやしろダンジョン。

どこまで攻略出来るかわからないけど、ギフトの検証も兼ねてるから、行けるとこまで行こうと思う。


リュックの中には、綿わたの詰まったお人形さんが5体とお菓子と水筒、それに自動追尾式カメラ。


カメラは源さんのお古を貰っちゃった。

古くて画像は若干荒いらしいけど、ライブ配信をするわけじゃないし、問題ない。


あとは、ショルダーバッグの中に砂利道で拾った石ころがたくさん。


手には相棒の枯れ木の棒エクスカリボー

ちょっと大荷物になっちゃったけど、備えあればうれいなしって言うもんね。




御社ダンジョンの前。

前回来たときとくらべて、もやがちょっとだけ濃くなってる気がする。たぶん。


一月ひとつきも経てば、そうなるのかな。

でも、私だって一月前とは違うよ。

正式なダンジョン探索者になったんだから。


まずはダンジョンに入る前に、自動追尾式カメラを起動する。


すると、ブルーベリーみたいな見た目のカメラが、スーっと目の前まで浮上してきた。


モーター音はほとんど無い。

じゃないとモンスターに気づかれちゃうから、当然と言えば当然。


サイズはテニスボールくらいの大きさだけどそのぶん頑丈がんじょうで、昔むかし……ブラウン管テ骨董品レビのみだれた映像を叩いて治したように、パーツが2〜3個なくなっても叩けば問題なく使えるって、源さんは言っていた。


精密機械なのに、不思議。


カメラをイジって俯瞰ふかん映像に設定すると、あとは歩いても走っても私の頭上より高い位置にとどまって、360度視点で映像をとらえてくれる。


「よし、行こう」


おばあちゃんが教えてくれた、ヒッヒッフーのリズムで呼吸を整えると、意を決してダンジョンに足を踏み入れた。




「前方ヨシ!後方ヨシ!周囲ヨシ!ダンジョン探索ご安全に!」


ネットにってた、ダンジョンに入ったときのマナーを行う。


マークシートの筆記テストには出なかったけど、新人探索者は指差し確認を大声でやらないと注意されちゃうみたい。


私、ここ以外のダンジョンだと声が出ないと思うけど……解決方法は後で探そう。


御社ダンジョンの中は、相変わらずの一本道。

モンスターはいないとわかったので、リュックからお人形さんを3体出して人形使いパペットマスターを発動する。


すると、人間のようにムクリと起きてカーテシーをするお人形さん達。


「……かわいい」


過剰摂取オーバードーズ爆弾魔ボマーはお家で実験出来なかった為、必然的に良く練習してたのは人形使いパペットマスターだった。


なんと言っても、とっても便利。


お人形さん達は私と同じようなスペックなので、パワーは無いし足は遅いけど、事前に「私が寝るまでダンスを踊って」などの大まかな全体指示オーダー発令インプットしておけば、一々いちいち「あなたはコサックダンス」「あなたは日本舞踊」なんて細かく指示を出さなくても、全員がある程度自由に動いてくれる。


まさに人手の足らないボッチ探索者にはもってこいのギフトだ。


もちろん全体指示は逐一ちくいち変更出来るし、詳細な指示を出すとお人形さん達の動きは繊細せんさいになるし、個別に特別命令グランドオーダーを発令したお人形さんは、全体指示に縛られない。


問題点があるとしたら、喋らない事ともろい事と……残機制だと言う事くらいかな。


今日の残機は5体。

ポケットにも何体か指人形が入ってるけど、持ち運びが不便なのもネックだ。




「モンスターが出て来たら戦って」


今回の命令はこれ。

どんな風に戦ってくれるのか予想出来ないけど、まずは戦力になるかどうかを調べたい。


前に2体、後ろに1体を配置したら即席パーティーの完成。


「勇者パーティー誕生の瞬間である」


なんてね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る