エイリアン・リッキー(休載)

桶蜂

第1話 邂逅

俺は夜の森の中を独り彷徨っていた


森と言っていいのかわからないが、おそらく森だろう


あたりに生い茂っている木のようなものには、

なぜか大きな鼻が付いている


時折ズズーという音が森のあちらこちらから聞こえる


鼻を啜る音だろうか

いたく気持ちが悪い


当てもなく歩き続けて3時間ほど経っただろうか

スマホの充電は50%


序盤でライト代わりに使っていたのが、良くなかったかもしれない

慣れてくれば見えない暗さではない

月と言っていいのかわからない、そのような何かの光が差している


電波もないし、ここが何処なのかもわからない


前にテレビ番組でやっていたが、木の側面のコケが生えている方向で、おおよその方角がわかるらしい


が、そもそもここが何処なのかわからないことにはどうしようもない


この場所が地球と同じであるとしたら、片方だけに生えている、そのウネウネしていて常にひしめき合っている赤色の何か、がコケなのかもしれない


そう推測し、コケのようななにかが生えていない方角に向けてひたすら歩いている


どうしてこうなったかというとそれは3時間前に遡る


私はコンビニからの帰り道を歩いていた


その日は夕方まで友人と家でゲームをしており、友人を見送るついでにコンビニに寄ったのである


その時はなぜだか無性に、"いつもは通らない道を通ってみたい"という気持ちに駆られ、比較的大きい公園を通り、遠回りして家に帰ろうとした


きっとその時から何かに干渉されていたのかもしれない


突如として昼間のような明るさになったかと思うと、それは私の半径5メートルだけで、前から歩いてくるカップルは気づいていないようだった


何かしら気づかれない方法があるのだろう


そこからの記憶がないが、気づくと俺は森のような場所に立っていたのだ


その時、一瞬だけだが前方に光が見えた気がした


その方向に向けて、念の為木に隠れつつ近づいていく


そこには何か光る物を持った、身長は180センチほどの人型の何かが彷徨っていた


細長いタコのような足を3本持ち、それ以外は人間と同じようなシルエット

頭はタコのように丸い

髪の毛はないようだ


顔は暗くてよく見えないが、何かを仕切りに呟いている


「ノ、、、ギタ」


「マ、、ノ、、、、タ」


うまく聞き取れないため近づいてみる


「ノミスギタ」



日本語にしか聞こえない


もう一度よく聞いてみる


「マジノミスギタ」


飲みすぎた?


え、何を?


気づいた時には聞いていた


「え、何を?」


その、"人のような何か"が叫ぶ


「いやああああああああああああ」


〜〜〜〜

「うわあああ!、、、、また久々にいやな夢を見たな、、」


叫びながら目を覚ます俺


隣に雑魚寝で寝ていた彼が起き上がる


「急にどした?最近ストレスたまってんじゃない?」


その問いに俺は答える


「お前と初めて出会った時の夢を見たよ、お前の驚き方は頭おかしいくらい気持ち悪いし怖いからな、、」


彼はピヨルド、驚くと口の中から一斉に触手が飛び出して広げる癖がある

さながらホシバナモグラだ


俺はいつものようにカプセル型のスライムのようなベッドから立ち上がり、

球体の瓶の中に入ったテリートと呼ばれる飲み物を一気に飲み干す

少し酸っぱい


「僕だって怖かったよ、見たこともない人型生物から話しかけられるんだもん」


ピヨルドが呆れたような仕草で答える


「それにその時は酒を飲みすぎて、記憶がない状態で森の中だからね、もうパニックだったよ」


ピヨルドが時計を見る


「いけない、仕事行く準備しないと!」


玄関に向かうピヨルド

ここは120階建ての集合住宅で、円筒状の建物で恐ろしいほどたくさんの部屋がある

1番上の階の景色は感動ものらしい


、、がここは2階だ

景色も地上と変わり映えはしない


ピヨルドは隣に住んでいて、昨日はしこたま飲んで、そのまま寝落ちしたという状況


「何のんびりしてんのリッキー!君も今日から新しい仕事でしょ?万年無職なんだからさ、貸したお金はちゃんと返してよ?」


「うるせえやい、こっちの仕事に慣れたらすぐ返してやるよ」


そう、リッキーこと俺、中田理玖(なかたりく)はこの星唯一の地球人

彼らからするとエイリアンのリッキーだ


リッキーは理玖をもじってピヨルドがつけた名前で、最初は違和感あったが今では少し愛着がある


「みんな元気にしてっかな」


ボソッと呟き、眺めていた窓の外には、見たこともない人種や、たくさんの空飛ぶ車、見たこともない鳥のような何かが小さな鳥のような何かを丸呑みにしたりしている


いまだに慣れない景色を見ながら、こちらの朝の定番 バリ を食べる


バリはパンみたいな見た目だけど

味は魚、匂いは青魚

トウモロコシのような見た目の植物になる"実"らしい


「はぁ、帰りてぇ、、」


焼いたバリを頬張りながら中田は愚痴を漏らす


- この物語は、勝手に連れてこられ、帰る方法も、誰がなんの目的で森に捨てたのかもわからない、そんな混乱の中でも頑張って適応しようと頑張る地球人のお話

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