私と韓国人 「天国と地獄」1963年 V.2.1

@MasatoHiraguri

第1話 ① 高校(全寮制)時代の同級生

私にとって「在日韓国人」といえば、先ず2つのタイプが思い浮かびます。


① 高校(全寮制)時代の同級生

  口でケンカするタイプ。

  「オレは韓国人だ」「韓国の貴族出身だ」「叔父さんはヤクザだ」「天地真理のような有名芸能人に知り合いがいる」等々。先ず、口で自分をデカく見せて、実際の殴り合いはしない。殴り合いによる勝ち負けに拠るのではなく、政治的というか他の様々な要素によって、二人の間の力関係・上下関係が構築される。


  私は2年生で同じ部屋になり、初めて彼と会った時、その手を見て「実際の殴り合いをしたことがない奴」だとわかりました。赤ん坊のような手でした。

  「目は口ほどにものを言う」「(40歳を過ぎたら)男の顔は履歴書である」という言葉がありますが、汗水流して働く男の手、勉強ばかりやって賢い人間の手というのは、それなりに際立っているものです。

  私は手相見(易者)ではありませんが、人に会うと、その手を(チラッと)見ます。  

  会社員を辞めてからの坊主時代、ほとんどの坊主・雲水が、女の手のようだ、と私には見えました。早い話が、彼らは汗水流して働きもせず・頭も使わず・心に呻吟することもない「この世の極楽」に生きている(と、私は個人的に思っていました)。


  学校のクラスで彼と一緒になったことはないのですが、2年生の時に一年間、寮で同じ部屋、3年生の時は違う部屋でしたが、彼は毎晩、学習時間(19:30~22:30)には必ず1~3回、私の部屋へ来て話をしていきました。

  彼は「オレは韓国人だ」と言って、試験ではカンニングばかりさせてもらっていたので、勉強しなくても平気だったのです。まあ、あの東大でも「在日韓国人枠」というのがあるそうですので、この日本という国では「在日という特権」が、社会の隅々まで通用するようです。


  彼は「吹かし(出まかせを言う。大言を吐く)の○○」と、陰で呼ばれ、忌み嫌われていました。「在日」という看板を脅しに使っているのですから、誰も心から仲良くなろうとしないのは当然です。

  「醜聞」1950年という黒澤映画で、ヒロインの声楽家が「尊敬のない人気なんてたくさんだわ。 見せ物になるのは真っ平。」と言いましたが、在日韓国人の彼の場合「尊敬のない人間関係」でした。「在日特権」の裏返しで「在日嫌韓(在日を日本人が嫌う)」は当たり前のことなのです。

  今にして思うことですが、そんな彼ですから、どの部屋へ行っても、みな「友好の仮面」をつけ「嘘の友人・仲間」として彼と話しをする。その空しさを鈍感なこの男も薄々感じていたのでしょう、「お前、バッカじゃねえの」「ぶくぶく太りやがって、みっともねえ」なんて、本音で話をする私の所へ毎日来ていたのでしょう。


  彼は、一言で言えば「ハッタリと人を利用することが上手い男だが、自分の歴史を作れない人間」でした。

  自分自身で汗水流して苦労しないので、素の人間として存在感がない。

  これは、同じ在日韓国人でありながら、②で述べる私の大学時代の先輩と決定的に違うところです。

  私は大学時代、この高校時代の同級生と2週間、与論島や沖縄、九州を巡りましたが、在日という特権で生きてきたこの男は、素の人間になると「何もない」。


やはり私の高校時代の同級生とアメリカで、サンフランシスコ・ロスアンジェルス間を車で旅行しましたが、この日本人の場合「中身がある」。

彼は外交官の息子で、彼自身も国際人であり、早稲田を出てある証券会社に入り、米国駐在員として、私と同じ時期にニューヨークに住んでいた男ですが、そういう経歴や知性というものを抜きにした素の人間として、在日の男よりもずっと存在感がありました。


  かつて、大宅壮一が「(40歳を過ぎたら)男の顔は履歴書である」と言ったのは、顔自体に深い歴史が刻まれて年輪を感じさせる、ということ以上に、「人間としての存在感」のことを指摘したのではないかと思います。

  いくら首相経験者なんていっても、「首相」の肩書きを外せば、ただのバカ(面)というのはいくらでもいます。在日だ・ヤクザの知り合いがいる、なんて殻を取り去り、その人間として素っ裸の姿に存在感があるかどうかだと思います。


  本稿②の在日韓国人は、この方が私の先輩にあたるということではなく、真にその存在感を私は度々実感しました。

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