ノーバディノウズ・マザーグース

火田 新

ノーバディノウズ・マザーグース

「……We wish you a Merry Christmas♪」

 その囁くような歌声が吹雪の中に聞こえた瞬間、くぐもるような呻き声が隊列の後方から上がった。

 雪に足でも取られたのだろう、と先頭を歩く隊長は見向きもしない。

「We wish you a Merry Christmas♪」

 後ろから心臓を一突きした男から、素早くサバイバルナイフを抜く。すぐさま男の死体を踏み台に跳躍し、目の前にいた別の男の首元に巻き付いて、一閃。喉笛を切り裂かれたことに気付いていないように、男は数歩、自らの意思で歩いたあとに雪に倒れ込んだ。

 そこでようやく、残りの三人の男達は振り返り、雪に埋もれて死んでいる仲間のあいだに佇む者の姿を見た。

「shit!」

 相手が銃を抜く前に、その足元にしゃがみこむ。その反動を利用して、顎に目がけて蹴り上げる。相手の目が反転したのを確認して、素早く腹部を切り裂くと、中から飛び出してきた腸がむわりと湯気をあげた。

 切る場所を間違えたな、と思いながらも、その男の身体を盾にして前進する。雪山に発砲音が響き渡るが、それは虚しくも、かつての仲間の身体に吸い込まれていった。

 我武者羅に発砲していた男に接近し、そのまま死体を投げつける。不意の攻撃にバランスを崩した相手は、死体もろとも雪道から足を踏み外し、あっという間に滑落していった。雪にこそ隠されているが、この下は岩場だ。身体が止まる頃には、男女の区別もつかないボロ雑巾のような肉塊に成り果てていることだろう。

 隊長らしき男は、ようやくそこで襲撃者の容貌を正確に捉えたようだった。

 隊長はわなわなと唇を震わせ、今更のように銃剣を構える。

「貴様、何者だ! 赤軍の……」

「歌の途中だ」

 銃剣を向けられてなお、白のスノースーツを着た死神は隊長に接近する。おもむろにそれまで使っていたナイフを放り投げ、腰からハンドガンを引き抜き、構えた。

 不意にハンドガンを向けられた隊長は仰け反り、その発砲を回避する。

 いや、今あらぬ方向へ発砲したような、と隊長が思考を終えるよりも早く、血の臭いを纏わせた兵士は懐に飛び込んでくる。そのまま押し倒されると、身動きが取れないように、足でがっちりと固定された。

「We wish you a Merry Christmas……And a Happy New Year……♪」

 歌いきったことを誇らしげにする小柄な男とは裏腹に、隊長は雪に尻を埋めガタガタと震えた。それは、寒さからくるものか、死への恐怖からくるものか。

「謳っておいて残念だが、プレゼントは来世にお預けだ。こんな見た目になってしまったが、実のところ私はサンタクロースじゃない」

 血に濡れて重たかったのか、襲撃者は被っていた頭巾をあっさりと脱ぐ。

 その下に現われたのは、齢十七か十八程度の、顔にあどけなさを残す少女だった。美しかったのであろう黒髪は、ハサミで切ったような切りっぱなしのおかっぱ頭になっている。その髪を吹雪に揺らして、軍人めいた口調の少女は続けざまに問う。

「何故、敵兵が基地の近くにいる」

「ここが、貴様らの本拠地の近くなのか。惜しいことをした、軍に伝えれば戦局を有利に……」

「勝手に喋るな」

 二本目のナイフを腰から抜いて、男の太股を突き刺す。男は絶叫したのち、命乞いのようにぽつりぽつりと話し始めた。「行軍している最中に狙撃されて……隊がバラバラになった……数日歩いて、ここには偶然迷い込んだ……それだけだ……」

「狙撃……ああ、シモンズだな。じゃあ、貴様らは道に迷った敗走兵か」

「違う! 我々は戦術的撤退を……」

「興味ない」

 太股からナイフを引き抜くと、筋肉を引きちぎる感覚があった。しかし、隊長は叫ばない。おそらく、先程突き刺したときに足の神経に触ったのだろう。その代わり、口先だけで何かを呟いていた。

「レッド・グリム・リッパー……まさかこんな少女だったとは……」

「その名前は嫌いだ」

 相手の心臓の上に、ナイフを構える。すると、隊長はぎゅっと目を瞑った。

 じくり、と赤ずきんの胸に痛みが差す。相手に死を覚悟させることは、妙な違和感を覚える。死ぬことに変わりはないのに、なんだかもっと残酷なことのような気がする。

 せめて気絶させてやった方がいいのか、という霞がかった妙な考えが頭によぎってから、敵兵はできる限り痛めつけて殺しなさい、と言っていたマーチ中佐の言を思い出す。

 その言葉に、一陣の風が吹いて靄は消え去った。

「私のことは“赤ずきん”と呼べ」

 そのままナイフを胸に振り下ろすと、足で挟み込んでいた男の身体がびくりと大きく跳ねた。もう、男が動き出すことはなかった。

 思ってたよりも時間がかかった、と赤ずきんは放ったナイフを拾いながら思う。

 マザーは、ナイフを使うなら三秒で敵を殺しなさい、と言っていた。最初の奴こそナイフを突き立てた瞬間に殺せたが、最後の奴は五秒以上かかってしまった。この場面を見られたら、その間に撃たれたらどうする、とマーチ中佐からぶたれることが容易に想像できる。

 やはり、他の子達と同じように狙撃を教えてもらうべきだろうか。

 そう考えてから、赤ずきんは頭を振る。

「私の頭巾は、敵兵の血で赤くしなくては……」

 雪に紛れるために被っていた白の頭巾は、今や敵兵の肉片や内臓によって真っ赤に染まっている。それこそが、バーブシカ大佐の名づけた”赤ずきん”という名前の兵士の役割だ。遠くから敵を狙う銃では、雪が血にまみれるだけで、頭巾は赤く染められない。銃は不要だ。このハンドガンも、そのうち別な子にあげよう。

 敵兵の記章を衣服から奪い取り、真っ赤な頭巾を被り直して、基地の方へと歩き出す。

 頭上では、鳥が鳴いていた。ピーヒョロロと楽器のような鳴声で飛んでいる。少女が、それを仰ぎ見ることはない。呆けて空を見ている間、敵にとっては練習用の的でしかないからだ。

 冬国赤軍単騎歩兵、赤ずきん。

 それが、この少女に与えられた全てだった。

 モンゴル遊牧民が用いる「ゲル」を思わせる白いテントが、雪山にいくつも立てられていた。そのテントに、白いギリースーツを着た少女たちが、薪や銃を運びこむために忙しなく出入りしている。そこに止むことのない純白の雪が降り積もるものだから、まるで世界が一色になったかのような錯覚を覚える。ここに迷い込んだ登山者がいたら、雪の妖精の国かと思うかもしれない。

 しかし、そこは冬国赤軍第四軍事基地。バーブシカ大佐が統率し、マーチ中佐が指揮する軍隊が野営している場所だった。戦争で身寄りを亡くした少女達ばかりを集め、兵士に育て上げているという変わった軍隊である。

 軽く雪を払いながら、野営地の中で最も大きなテントの中に入る。テントの上から覗く煙突の煙で、中に人がいるであろうことはわかっていた。

 テント内は中央に置かれた大きなストーブのおかげで、冬であることを忘れてしまうほどに暖かい。一面に敷かれた断熱材とカーペットのおかげで、床も素足で歩けてしまいそうだ。これが他のテントにもあれば凍傷で足を切断する子もいなくなるだろうに、と赤ずきんはぼんやり思う。

「同志“赤ずきん”よ、おかえりなさい」

「ただいま。悪いけど、頭巾を洗っておいてくれ。流石に血の臭いが濃くなってきた」

「わかりました」

 機械的に頭巾を受け取ると、にこりともせず少女は駆けていく。赤ずきんは、彼女が何者であるかを知らない。名前を覚えるよりも先に死んでいくから不要だ、とマーチ中佐は言う。だからこそ貴様は特別なんだ、とも。

「おかえり、赤ずきん。今日も敵兵を屠ってきたようだな」

 声に身を転じさせると、そこには軍服を着た恰幅のいい女性が立っていた。軍帽から覗く青色の目は、眼下にいる者にとって雪よりも冷たいものを連想させる。口先だけの優しげな笑みを浮かべているのが、かえって恐怖心を煽った。

 しかし、赤ずきんは少女らしく微笑んだ。ここでは、マーチ中佐が絶対的な“母親”だからだ。そして、無条件に少女達は等しく彼女の“かわいい子供たち”なのだ。

「今日は五匹、雪道を転がっていった奴らがいて、記章は三つだけなんだけど」

 ネズミを並べる飼い猫のように、赤ずきんは敵兵の記章を近くにあった机に並べる。

 言うに及ばずだが、この基地のみならず、赤ずきんは赤軍の全兵士の中でも天性の戦闘能力を持った少女だった。基地に来る前はただのイモ臭い田舎娘だったが、キックボクシングやレスリングなど近接格闘術をある程度教え込まれると、あっという間に敵兵にも名の知れた死神になった。こんな逸材が片田舎で眠っていたらと考えるだけで恐ろしい、とマーチ中佐は振り返る。

「そうか、ご苦労」

 銃を握り慣れた軍人らしいゴツゴツした手が、乱雑に赤ずきんの頭を撫でる。

すると、テント内の至るところから強い視線を感じた。おそらく、名もなき少女たちだ。羨望と嫉妬めいたものが入りまじったその視線は、とても子供から向けられているとは思えないほど、強烈な感情の圧力だった。

 その中に立たせられながら、赤ずきんは形容しがたい居心地の悪さを覚える。

「大佐にご挨拶しろ。貴様が帰ってくるのを心待ちにしていたようだからな」

 所在なげに視線を泳がせていた赤ずきんは、その言葉に顔を明るくさせた。こくりと頷いてすぐさま敬礼すると、赤ずきんは足早に大きなテントを出て、野営地の奥にぽつんと佇む比較的小さなテントに向かった。

 入ります、と声をかけると、どうぞ、とのんびりとした優しげな声が返ってくる。

「おや、赤ずきん。来ましたね」

「バーブシカ!」

 テントに入ると、何やら資料を見ていたらしい老婦人は穏やかに微笑んだ。

厳めしい軍服こそ着ているものの、ひっつめた白髪と金縁の丸眼鏡をつけた老女は、その名の通り優しいおばあちゃんの姿そのままだった。

 バーブシカは、この戦場で唯一赤ずきんが少女に戻れる相手だった。

 この基地に集められて以降、近接格闘訓練でメキメキと頭角を現していった赤ずきんは、頻繁にバーブシカに呼び出されるようになった。最初こそ警戒しきった目で睨み付けていた少女に、置いてあったバスケットの中からパンと葡萄酒を振る舞い、少女が満ち足りた顔になると、勇敢な少女“赤ずきん”の童話を語って聞かせてくれた。そして、ただの兵士だった彼女に、同じ名前を与えてくれた。赤ずきんにとっては、それが何よりも嬉しかった。

 バーブシカから与えられるものは、マーチ中佐によって行われている“家族ごっこ”とは違う。バーブシカは、凍傷で死んだ子のことを革靴で転がさない。可哀想に、と手を不思議な形に動かしてくれた。バーブシカは、上手く狙撃できなかった子をぶたない。優しい子ね、と手を撫でてあげていた。

 その姿に何か神々しいものを見て、テントの影でこっそり泣いたあの日が懐かしい。それぐらい赤ずきんにとって、目の前の老女は家族そのものだった。

赤ずきんはバーブシカの膝元に駆け寄り、猫が甘えるように喉を鳴らす。

「今日もお話を読んでくれるの?」

「その前に少し話をしましょう、赤ずきん」

 指先でくすぐるように、バーブシカは赤ずきんの顎を撫でる。

「この戦争が始まってから、もう十年以上が過ぎましたね」

「もうそんなに経つ?」

「貴方が戦争を肌で感じ始めたのは、本土での戦いが始まった六年前からでしょう。軍は、そのずっと前から戦争をしていたのです」

 赤ずきんが曖昧な顔をしていると、バーブシカは悲しげに笑った。

「昔のことは、あまり思い出せませんか」

「……はい、ごめんなさい」

 俯くと、バーブシカはそっと自分の方へと赤ずきんを抱き寄せた。

「よく聞きなさい、赤ずきん」

 内緒話をするように、バーブシカは耳元で囁いた。

「この国は、戦争に負けます」

 びくんと、赤ずきんは自分の身体が痙攣するのがわかった。雷に打たれたようなというのはまさにこのことだ、と赤ずきんはどこかの童話で聞いたフレーズを思い出す。

 その痙攣を押さえ込むように、バーブシカは強く身体を抱きしめる。

「赤ずきん、貴方にお願いがあります。国連の仮設軍事基地に向かい、ここにいる子供たちを助けてくれるように求めてください」

「国連……?」

「国際連盟が複数国と条約を結び、連合軍を結成したとの情報が入っています。彼らは無関係の住民を保護することを目的に、この基地の近くに駐留しているのです」

 貴方にはそこに行ってもらいます、と強く言う。

「ここにいる子供たちは、全員孤児です。右も左もわからないまま利用されていたとなれば、戦争犯罪人として処分される可能性は限りなく低い。子供たちを救えるのは、貴方しかいないのです」

 わかってくれますね、とバーブシカは諭すような調子で続ける。

「赤ずきん、これからは人を殺してはいけません。森を抜けて、子供たちを救うのです」

 混乱しきった脳内を整理できないまま、赤ずきんは何とか考えをまとめて声を発する。

「でも、それをしたらバーブシカはどうなるの……?」

 子供のように縋るその言葉に、バーブシカはただ優しげな笑みを浮かべるだけだった。

 それがあまりにも悲しくて、その胸元に光る金色のものに目が留まることはなかった。

 翌日、赤ずきんは雪道をひとりで歩いていた。

 元より単騎歩兵として動いている赤ずきんにとって、こっそり国連の基地を目指す、のは難しい話ではなかった。ただひとつ、その場所自体がわからないということを除けば。 昨日、敵兵を殺した場所まで来てみたが、その先の森は鬱蒼としていて、人の気配はなかった。

「困ったな……この森を一日で抜けられるのか…」

 赤ずきんが独りごちていると、

「おや、赤ずきん」

 そう声をかけられ、思わず肩が跳ねる。

 恐る恐る振り返ると、長い狙撃銃を持った男がにこやかに立っていた。

「こんなところでどうしたんだい?」

「……同志シモンズ。奇遇だな」

「俺は、いつものように子鹿ちゃん達に銃を教えに行くところさ」

 バン、と指で銃の形を作って茶化すシモンズに、冷ややかな視線を送る。

 シモンズは、ここから更に北にある第三軍事基地の兵士だった。

 赤軍が誇る腕のいい狙撃兵で、戦前ライフル射撃の世界大会で二位だった、と自慢げに言っているのを聞いたことがある。世界二位というのはすごいのだろう、と銃に興味がない赤ずきんはぼんやりと思うだけだったが、基地にいる少女達はこぞってシモンズに狙撃を習っている。十歳年上の柔和な顔つきの男は、少女たちにとっても、頼れる兄のような存在だった。

 かくいう赤ずきんも、シモンズが嫌いというわけではなかった。彼が時折、手土産に狩ってきてくれる鹿肉は、みんなが喜ぶから嬉しかった。密かに童話の赤ずきんに出てくる狩人が実際にいたら、きっとこんな人なのだろう、と思うこともあった。

 シモンズは赤ずきんの様子をじっと見て、微笑んだ。

「こっちには敵はいないと思うけど、それでも探しに行くのかな。僕と一緒に狙撃訓練しない?」

「……同志が優秀な狙撃手であるとは知っているが、この雪山の全てを把握する目をお持ちとは恐れ入った。私は生憎、そのような優秀な瞳は持っていない。だから、足で敵を探すことしかできない」

 シモンズは何かを言いたげに口を動かしたが、そういえば、と話題を切り替えた。

「今日も色のついた頭巾だけど、それは敵のもの?」

「質問攻めだな。これは昨日の敵兵の返り血だ。基地にいる同志に洗うように頼んだが、落ちきらなかったらしい。目立つ色だ、今日は特に警戒して哨戒する」

 答えると、シモンズは穏やかな瞳で顔を覗きこんできた。

「じゃあ、最後の質問。国連に関する話はもう聞いたかい?」

「ああ。祖国に仇為す者達を、私は許さない」

 そう返すと、シモンズの目が笑った。

 真実、それは赤ずきん自身の言葉であった。国連の連中も敵兵として殺しなさい、と、バーブシカから言われていたらどれほど楽だったか。しかし、言われたのはその反対。もう敵を殺してはいけないという。

「なら、敵を探している赤ずきんには丁度いい。この森を迂回する道の先に、国連の連中が駐留していてね。ここら辺にいるってことは、俺達を見つけ次第、殺すつもりなんだろう。つまり祖国の敵だ。殺すしかない」

「そうか……」

 赤ずきんは考え込む。何かが引っかかる。しかし、それを具体的に何であるかを考えるには時間が必要だった。ともあれ、偶然にも国連の居場所がわかったことは僥倖だ。しかも、今日中に帰って来られるわからない森に入らなくてもいいのだ。

 もしも童話の赤ずきんならば、狩人の言うことは大人しく聞くだろう。

「わかった、そちらに向かうことにする。祖国に栄光あれ」

「祖国に栄光あれ」

 敬礼した赤ずきんは、森を目前に右へと逸れていく。暫くしてシモンズが見えなくなった頃合いに、雪を蹴って走り始めた。居場所がどこかはわかったが、近くにいるかはわからない。今日中に帰らなくては、バーブシカまでも怪しまれ、命が危ない。

 言われたとおり、何としてでも国連の連中を見つけて、助けを求めなければ。

 ……赤ずきんが歩いて行ってから暫くして、シモンズは狙撃銃のスコープを覗いた。そこには、走る必要もないのに懸命に走っていく赤ずきんの姿が映っていた。

 あーっ、とシモンズは大きな声を漏らす。

 そして、それは次第に盛大な笑い声と変わっていった。

「あははっ、迂闊だなあ。かわいいぐらいに迂闊だよ、赤ずきん」

 スコープを覗いていたシモンズは、舌舐めずりじみた下品な音を口からたてた。

「国連が連合軍を結成したという情報は、今から俺が伝えに行くというのに! 誰から聞いたんだろうなあ、そして君は今から何をしに行くのかなあ!」

 シモンズはしきりに興奮し、ガクガクと膝を揺らす。それは絶頂にも近い感覚だった。

「あーあ、森を抜けた先に軍隊がいるのになあ。可哀想になあ、赤ずきん」

 射精後の倦怠感を物ともせず、聖者のような清々しさでシモンズは微笑んだ。

「強くて可愛い女は大好きだ。狩りは、親を失った子鹿を虐めるときが一番楽しい」

 そう言って背を向けたシモンズは、赤ずきんがやってきた方へと歩いて行った。


 一時間ほど走って、ようやく肺が痛むのを感じた赤ずきんは立ち止まった。それでも、呼吸を整えつつ歩き続ける。

 どこから狙撃兵に狙われるかわからない、歩を止めてはならない、というのは、赤ずきんの中で鉄則とも言えることだった。

 基地にやってきたばかりの頃、赤ずきんと同じような戦闘スタイルで戦う少女達は少なからず存在した。そして、それらは赤ずきんを筆頭に隊列を組まされ、付近を哨戒し、基地周辺をウロつく敵兵を屠ることを役割として与えられた。

 しかし、彼女たちはまた一人、また一人と減っていった。

 理由は様々だが、雪山の行軍の辛さを嘆き、狙撃兵に志願して離脱していった子達は賢明な判断だった。酷い吹雪の中隊列からはぐれ、熊に襲われたのか、数週間後に頭部の一部だけ見つかった少女。反り立った雪道を踏み外して、断崖絶壁を自由落下していった少女。他にも、敵兵に四肢を順番に切り落とされていった子や、下半身だけ脱がされた状態で嬲り殺されていた少女もいた。

 とにかく、歩兵の死亡率は高くて、マーチ中佐はこぞって少女達を狙撃兵にしようとした。そもそも敵国の兵士は男ばかりなのだから、少女がフィジカルで勝てるわけがないと言われたこともあった。

 いつの間にか、少女はたった二人になっていた。

 彼女は名前こそなかったが、ナイフの扱いに優れていた。赤ずきんにも、惜しむことなくそのナイフ捌きを教授してくれた。それに加えて、彼女は時々、故郷の話をしてくれた。その話を聞くのが、赤ずきんは好きだった。

 赤ずきんにその名が付けられた頃、雪山で哨戒している最中、彼女は会話をしている途中で唐突に立ち止まった。

「赤ずきんと呼ばれるようになったの?」

「ああ、バーブシカから貰った。私は今日から赤ずきんなんだ」

「そんな名前、捨てなさい!」

 彼女は激昂して、そう言った。唇を噛み、どこまでも悔しそうな顔をしていた。

「貴方には、親からつけられた大切な名前があるはずよ!」

「親は……マーチ中佐だ……」

「違う、貴方の故郷は!」

 その瞬間、目の前の少女は唐突な狙撃によって頭を撃ち抜かれ、脳髄を雪原にぶちまけた。四肢を放り投げ倒れ込んだ彼女を尻目に、赤ずきんは必死に物陰まで逃げた。

 それから、赤ずきんはずっと一人で森を巡回している。決して歩みを止めることなく。

 嫌な記憶から解放された瞬間、思わず雪に足をとられた。

 雪で転ぶなんて、マーチ中佐に見られたら一週間ご飯をもらえないかもしれない。

 しかし、そこでふとと気付く。

 もう随分歩いているのに、国連どころか軍人にすら会わない。雪道には足跡一つないことも妙だ。国連の連中がいくら寄せ集め軍人だとしても、呑気に基地に引きこもっているはずがない。もしかしたら、この先に駐在地がある可能性は限りなく低いのかもしれない。

 では何故、シモンズはあんなことを言ったのか。そこでようやく赤ずきんは、シモンズを疑い、質問を反芻した。

「……私は騙されたのか!」

 赤ずきんはすぐさま身を転じさせ、基地の方へと走り出す。

 基地に戻るには、今まで歩いてきた道と同じだけの時間を要する。しかし、一度森の中に入って基地へ向かえば、僅かながらショートカットになる。基地の方向であればある程度勘が働く、森を抜けることも難しくはないだろう。

 森の中は薄暗く、野生動物が襲ってくるのではという恐怖心に煽られたが、そんなことは気にしていられなかった。不意に後ろから視線を感じたが、それさえも振り払った。おおかた、フクロウあたりが木の上から愚かな赤ずきんをせせら笑っているに違いない。

 森を抜け、雪原を転げるように走り抜けると、そこはもう基地の近くだった。

 しかし、そこからでも基地の雰囲気が異様であるのが見て取れた。

 巨大なテントから覗き見える煙突から、ストーブの煙が上がっていない。つまり、マーチ中佐が外に出ているのだ。そんなこと滅多にないというのに。

 さらに近づくと、ようやく巨大なテントの前に人影がいるのがわかった。

 赤ずきんは、思わず息をのむ。

 バーブシカが後ろ手に縛られ、雪に跪いていた。

 そのこめかみに、マーチ中佐が銃口を向けている。

「バーブシカ!」

「赤ずきん!」

 赤ずきんが茂みから現れ出ると、バーブシカは待ちわびていたかのように顔を上げた。

「子供たち、赤ずきんを捉えろ! 奴も裏切り者だ!」

 疲れ切った足を引きずってきた赤ずきんは、年端もいかない少女達にも容易に捕縛することができた。しかし、手足を雪に押さえつけられることも気にせず、赤ずきんはバーブシカに許しを請うた。

「ごめんなさい、バーブシカ。国連は見つからなくて……それで……それで……」

 言葉につまる。ずっと褒められてきたから、どのように謝ればいいのかわからない。寄り道してきたことを謝るように言えば、許してもらえるだろうか。

「……何もせずに戻ってきたというの?」

 言いあぐねていると、バーブシカがぽつりと漏らした。

 そう、と赤ずきんは頷く。そうだ、優しいバーブシカは、いつも言いたいことを汲み取ってくれる。赤ずきんが、何もわからなくてもいいように。

「ふざけるな! 使えないガキめ!」

 鬼のような形相でバーブシカから吐き捨てられた言葉に、空気が静まりかえった。

「お前が天国へ連れて行ってくれると思ったから、ここまで育ててきてやったのに!」

 何を言われているのかわからず、え、と口から言葉がこぼれていく。

「赤ずきんを利用していたのは、貴様も同じだったようだな」

 マーチ中佐は、バーブシカの胸元から無理矢理何かを引っ張り出す。

 それは、金色に光る十字架だった。

「貴様、カトリックだろう」

 図星だったのか、バーブシカは唇を噛む。

「子供たちを救うことで、自らも死後に天国に行こう……それに、子供を利用していたら世話ないな。敵国の宗派の考えることは、なんとも恐ろしい」

 マーチ中佐は、バーブシカの顔に唾を吐きつける。

「知でもって神の意思をはかろうなど、愚かな人間が考えそうなことだ。神はすべてを見ている。我々は、この戦争で身を以て神の御業を焼き付ける」

 青い瞳を睨み返すように、敬虔な老女は顔を上げた。

「正教は野蛮だわ」

「神は我々に味方する」

 どこまでも遠くに響き渡るような、銃声が響く。

 雪に鮮血が飛び散り、数秒自重に抗ったように見えた身体は、そのまま何事もなかったかのように雪に飛び込んだ。目を開いたまま雪に埋もれたそれは、冬眠し損ねた熊達が非常食にする肉塊と何ら変わりなかった。

 銃声を聞いて肩を跳ねさせたものの、周りにいた少女達は、恐怖というよりも、戸惑いの表情を浮かべている。これからどうしたらいいのか、と命令を待つように周囲の顔色を窺っている。

「安心しなさい、子供たち。これからは私がバーブシカだ。全て私の言うとおりにしていればいい」

 マーチ中佐は優しく微笑みながら、足先でバーブシカの死体を転がす。

 その言葉に子供たちは安堵の表情を浮かべた。今や子供たちの恐怖は死にあらず、わからないことが根源的な恐怖であった。

 赤ずきんは、涙を流しながらバーブシカだったものを見る。

 今まで信じていたもの、すべてが偽物だった。マーチ中佐からの愛どころか、バーブシカからの愛でさえも、利用するために与えられたものに過ぎなかった。それでも、信じたかった。

 子供は、何もかもわからないわけじゃない。本当は、ほんの少しだけわかっているのだ。何が良いことで、何が悪いことだという判断は、敵兵が死にたくないと泣き叫んでいるのを見ておおよそわかっていた。それでもなお、ただ誰かからの愛がほしくて従ってしまうのだ。その報いを受けることになっても、あの人が褒めてくれたから間違っていない、と自分自身を信じていられるから。

 それが、なによりも欲しいものだったから。

 遠い記憶、赤ずきんは思い出す。

 赤ずきんになる前の少女は、この軍事基地からもう少し南の方に住んでいた。

 冬こそ同じように雪が降りしきるものの、一年の中でわずかに春らしきものがくることがあった。

 カーンカーンと、山にまで父が薪を割る音が響いていた。雪が降ってない間は、こうして本格的な積雪に向けて準備をするのだ。家の方角からは煙突の煙が見える、母はストーブでパンを焼いているのだろう。マフラーをつけていると汗ばんでしまうほどの、あたたかな太陽の陽射し。それらを家の裏にある小高い山から眺めながら、雪解けの水滴が緑色の葉に落ちるのを、座り込んで心待ちにしていたあの日。

 そこに、敵兵の飛行機が落とした爆弾が着弾したのだ。

 少女は、近くの村に住む親戚に抱えられて逃げる最中、燃え盛る自分の家を見た。あそこには父がいた。母がいた。何らかの破片によって切り裂かれ、脳みそが飛び出ている父が手を振っていた。黒焦げになって四肢がひん曲がった母が、不器用に手を振っていた。

 村の人々が手を振っていた。さようなら、と告げるように。

「本当は、さよならしたくなかった……!」

 雪どころかその下の土までも足掻くように掴んで、赤ずきんは歯を食いしばる。

「みんな、そうだ。みんな、私のことを勝手に決める」

 少女は怒っていた。遠い故郷の家族でも、軍でも、戦争にでもない。大人しく抱えられ、されるがままこの基地へと流れてきた自分に腹が立った。今まで何も疑ってこなかった自分の愚かさを、それが楽だと甘んじていた自分を呪った。

「私は、誰かの都合の良い物語にはならない!」

 拘束していた子の手を捻って、肩の関節を外す。そうすれば、すぐ痛みに泣き出すような子達だ。事実、少女達は痛みに悶絶した。

「あとで肩入れてあげるから」

 そう断ってから、腰に装着していたベルトから、慣れた手つきでナイフを取り出す。

 マーチ中佐までの距離は、おおよそ十メートルだ。

「大人しくお手伝いしてくれる子でなければ、うちにはいらない」

 マーチ中佐が、ハンドガンを構えたのが見える。

 銃と、刃物の相性は最悪だ。銃を構えた人間にとって、刃物を持った相手が近づいてくる瞬間など良い的でしかない。よほどの素人でなければ、どんな状況でも一発ぐらい当たる。軍人であるマーチ中佐であれば、近づくまでの間に三発は身体に撃ち込んでくるだろう。

 ならば、例えその三発受けようとも、這って前進するだけだ。

「おい、赤ずきん。よそ見するなよ」

 風に乗って、そんな声が聞こえる。

「狼はこっちだぜ」

 横目に、シモンズのスコープが光に反射するのが見えた。

 二発の銃声が、響いた。

 はらりと、赤ずきんの髪が頭巾からこぼれる。

 一瞬、何が起こったのかわからず、赤ずきんはその場で静止した。

 目の前には、肩口から血を流して倒れているマーチ中佐。そして、やや遠方には痛みに絶叫するシモンズの姿があった。

「ナイスショット」

「当然。俺は、世界一位の腕前だからな」

 どこからか、そんな声がする。

 すぐにマーチ中佐がハンドガンを持ち替えようとするが、赤ずきんがその腕を蹴り上げた。ハンドガンが遠くに滑っていくのを目で追うマーチ中佐の顔面に、続けざまに踵を落とす。ヒュウ、と賞賛するような口笛が、風に乗って聞こえてきた。

 すぐに身体を転じさせ、シモンズの方に走り寄る。絶叫の通り、手の甲に弾丸を受けたのか、右手はすでに原型を留めないほどの大穴が空いていた。しかし、それでもなお左手で引き金を引こうとしていた。

 恐るべき執念だ、と畏怖の念を抱きながら、赤ずきんは手づかみで狙撃銃を奪い取り、遠くへと放り投げる。左手にしか力の入らないシモンズから奪い取るのは、少女の手を捻るよりも容易なことだった。

「クソ……!」

 狙撃姿勢から立ち上がろうとしたシモンズの足を、素早く払って転ばせる。この数年、近接格闘だけで生き延びてきたのだ。安全圏から、ちまちま敵を殺してきた奴とは違う。

 そのまま押し倒し馬乗りになると、シモンズはその下で大いに暴れた。

「俺は同志だぞ! 貴様、祖国を裏切って恥ずかしくないのか!」

 いまさら命乞いか、と赤ずきんは鼻白む。

 かつて、他の少女達と行動を共にしていた頃、雪山であらぬ方向から狙撃を受けることがあった。唐突に、目の前で死んだ彼女もその一人だ。今なら、それが敵兵でなかったことがわかる。全て、この男が己の欲を満たすためにやったことだ。森で、狼が少女を襲うように。

「恥ずかしい? それは、お前達が勝手に決めたことだろ」

 腰からハンドガンを抜き取ると、狼はヒッと情けない悲鳴を上げた。

「腹に鉛玉でも詰めつるもりか、赤ずきん!」

 撃たれることに怯えたシモンズを眼下に、ハンドガンのマガジンを抜く。

「喜べ。私には、壊滅的に銃の才能がないんだ!」

 もはやただの鉄の塊となったハンドガンを握った赤ずきんは、そのまま勢いよく持ち手の底を強くシモンズの頭蓋に叩きつけた。

「だから、こっちの方が確実だ」

 シモンズは雪に顔を埋め、沈黙する。気絶こそしてはいるが、所詮は少女が精一杯ぶん殴った程度だ。脳震盪ぐらいで済むだろう。

「やあ、お疲れ。怪我はないか?」

 後ろから肩を叩かれナイフを構えると、おっとと、と男は二、三歩後退した。

「落ち着いて、僕はアレックス。元は米軍だけど、今は条約で国連の軍人なんだ。わかるかな、ハロー、ニーハオ、ズドラーストヴィーチェ?」

 話しかけられている間、後ろで同じギリースーツを来た兵士が、マーチ中佐を拘束しているのが見えた。それに安堵しながらも、ナイフを握る手を赤ずきんは緩めない。

「どうして、この場所がわかったんだ」

 ようやく言葉を返すと、待ってました、と言わんばかりにアレックスはにっこりと微笑んで、

「僕、君のフォロワーなんだよね。噂はかねがね、赤軍の赤ずきんってかわいい子が」

「ふざけないで」

 赤ずきんがそう言うと、アレックスは子犬のように項垂れた顔になり、

「森の中を巡回していたら、スコープ越しに君の姿が見えてね。一度、自分達の基地に戻って、またヘリで君を探してここまで追いかけてきたってわけ。こんな可憐な子ども達を前線に出す、クソッタレな戦争を止めるためにね。ま、僕の判断じゃなくて世界の意志だけど」

 と、説明した。後半の説明を受け流しつつ、赤ずきんは訝しげな顔を浮かべる。

「この雪山で、私をもう一度探すなんて不可能だ」

 ああ、それこそ簡単な話さ、とアレックスは大仰に手を広げる。

「君の頭巾さ、いい目印だった。赤ずきんなのに、今日は黒色なの?」

 そう言われて、げんなりしたように、赤ずきんは血で黒ずんだ頭巾を脱ぎ捨てた。

 頭上ではバラバラと、ヘリコプターが近づいてくる音が聞こえてきた。


 遠いところに来てしまった、と宝石のような輝きを反射させる海を見て、ワンピース姿の少女は思う。

「……エマ……エマ!」

 後ろから声をかけられ、振り返ると何かを首に被せられた。それは、ハイビスカスレイと呼ばれる、フラダンサーが着けるハイビスカスを模したアクセサリーだった。観光客向けに売られていたのを買ってきたのだろう。

 被せてきた当の本人であるアレックスは、満足げに笑っていた。

「それ、私の名前か」

「そうだよ。名前がないって聞いたから」

 いい名前だろう、とアレックスはキザにウインクする。

 派手なアロハシャツに短パン、おもちゃのようなビーチサンダルという、浮かれきったスタイルの男が、自分の命を救ってくれた恩人とは信じたくなかった。

「またカウンセリングから抜け出したんだろう。カウンセラーが血眼で探してたよ」

「いいんだ、私は自分自身という存在に気がついた。私はもう、誰にも支配されない」

 自分にカウンセリングが必要かどうかくらいわかる、と少女は大人びた口調で言う。それについて、アレックスがさらに言及することはなかった。

「あの赤い頭巾は?」

「あれを被るには暑すぎるだろう。だからもう、私は赤ずきんにはならない」

 赤軍が降伏した後、あの基地にいた少女達は、国連の計らいで南の島へと輸送された。ここでカウンセリングを受けさせ、さらに義務教育まで施してくれるらしい。ここまでの待遇を受けられるとは、バーブシカも想像していなかっただろう。

 そうやって戦後の混乱が落ち着いた頃には、少女の黒い髪はすっかり伸びきっていて、蒸し暑い風が吹き抜けると、日の光の中に薄い藍色を覗かせるようになった。自分の髪がこんな色であったことを、少女自身も初めて知った。

「それじゃあ、戦争体験をもとに童話作家にでもならない? ユネスコで、そういう企画が持ち上がっているらしいんだけど」

「……私は、たくさんの人を殺した。全てを殺し奪い尽くした私に、何かを生み出すことはできない。戦争はともかく、あの基地でのことは、誰も知らないおとぎ話のままでいいんだ。その方が、あの子達にとっても都合がいいだろうし」

 米軍が用意したカウンセリングは功を奏し、マーチ中佐の家族ごっこは破綻したようだった。あの少女達も、自分でどうするか決めることに不安がることはなくなるだろう。何より、もう頼れる家族はどこにもいない。自分で決めるしかないのだ。

「じゃあ、僕のお嫁さんっていうのはどうかな」

「却下。十歳年上のロリコン男はもうこりごりだ」

「失礼な、たった六歳差だ」

「私には、これからやりたいことが山ほどあるんだ」

 言い合っていると、ピーヒョロロと楽器のような鳴声の鳥が空を飛んでいった。

 あの鳥の名前は何だろう、と赤ずきんは空を仰ぎながら思う。

 (了)

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ノーバディノウズ・マザーグース 火田 新 @hida_arata

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