悪い子になって女神にざまぁをしたかもしれない話

山田 勝

悪い子になって女神にざまぁをしたかもしれない話

「アルテ、私がいない間、人族をお願いしますわ」


「はい。お姉さま」


 私は女神アルテ、お姉さまが、神族会議に行くので、お留守番です。

 我ら姉妹は、人族担当ですの。

 いつもは、空から見守っているのよ。

 

 あら、お腹すかせているわ。助けなきゃ。


 ☆地上


「は~い。良い子の皆さ~~ん。食べ物を持って来ましたわ。仲良く分けるのよ」


「は~~い」

「女神様、有難う」


 フフフフ、皆、良い子。可愛い子供たちですわ。

 だけど、悪い子も出て来たわ。


「女神様、俺は狩をしているから、もうちょっと、ご飯をもらいたい・・・」


「まあ、悪い子ですわ。きちんと、皆、平等にご飯を分けなくてはいけませんわ」


「はい、女神様」



 ・・・・


「チキショウ、女神様がご飯をくれるけど、もっと、良い方法があるはずだ」


 一人の男が、不満を口にしていると、


 邪神が、声を掛けます。


「ギシシシシィ、そこの男、もっと、ご飯を食べられる方法を教えてやろうか?」


「はあ、誰だ?」


「ヒヒヒヒヒ、後ろじゃよ」


「何だ。幼女でねえか?・・女神様ですか?」


「違う。我は邪神ハピアじゃ!」


 邪神は言います。


「ほれ、この草を見ろ。この草の実は食べられるのじゃ。この草を集めて一か所に植えるのだ」


「はあ?まあ、やってみるか」


 邪神は、人族に農業を教えます。



 ・・・・・・


「あら、最近、人族は増えてきましたわね」


 ガヤガヤガヤ~


「ヒィ、私の可愛い人族が喧嘩をしているわ!」


「この麦は、俺たちが作ったんだ!無料ではやれない。対価が欲しい」


「ケチ!」


「女神様は、無料でくれるよ」


 ヒィ、貧富の差が出来るわ!


「貴方たちは、追放よ!農業をする悪い子は、森から出ていきなさい!」


 男に従って、農業をしていた一団は、豊かな森を追放されました。

 この森は、川には魚、森には動物が沢山いるところで、まるで楽園でした。

 農業をした一団は、女神様から転移魔法を掛けられ、


 遠く厳しい世界に放り出されました。


「ギシウシシ、グヘへへへ、気を落とすな。我が付いていてやろう」


 邪神は、様々な悪いことを教えます!



 ☆☆☆戦争


 ヒュン~ヒュン~と矢が森から飛んできました。


「オラ、毛無し猿は出ていけ!」


「「「ヒィ」」」


「あれは、エルフだ。弓にたけた種族じゃ。お前らが同じことをしても勝てないぞ」


「どうしたら、いいだ」


「フン、自分で考えろ。じゃが、ヒントはやろう。長寿種の人口は少ないぞ!」


「・・・そうか。こっちは子供を大事に沢山育てれば」



 ☆数百年後


「オラ、オラ、色白のノッポは出ていけ!」


「うわ。毛無サルが多すぎる。逃げるぞ~~」


 その後


 邪神は、人族の様々なイベントに立ち会います。


 ☆魔法


 ボォ~


「あれ、何か、勝手に火が手から出てきた」


「ほぉ、これは魔法を使える子だ。この子を大事に育てるがよい」



 ☆飢饉


「腹減った。邪神様、ご飯下さい」


「ざまぁだ。グシシシィ、貯蔵をしていないからだ。この不作でも作物は全部食べてはならんぞ。


 元気に育っている作物は、新種の不作に強い作物の可能性がある。来年の種にするのだ。食べてはならんぞ」


「じゃあ、俺たちは何を食えば」


「それは、自分で考えろ。荒れ地に行ってこい。そこで元気に育っているものでも探すんだな」


「あ、この芋、食えるよ。それに、育ちが早い!」



 ☆☆☆一千年後


「フフフフフフ~ン、ランランラン~今日も、可愛い子供たちにご飯を持っていきますわ」


「アルテ!」


「ヒィ、お姉さま、後千年は、帰ってこないのでは?」


「どうして、勝手に食べ物をあげたりしたの?そして、悪い子を見捨てたの?ほら、見なさい」


「ええ?」


 神鏡を見ると、


 森の外の世界は、人族が国を作り。争い。また、協力をして魔族と戦争をしたり。


 文明が発達していました。


「ヒィ、毛が生えてない!神と同じで服を着ているわ!そんな。悪い子がこんなに沢山!」


「邪神にしてやられました。奴は、人族の深層意識に潜り込んでいます。


 アルテ、貴方は地上に行くのは禁止します!」



「ヒィ、悪い子を良い子に戻したいですわ!」


「なら、貴方は、天界から、呼びかけなさい」


「分かりましたわ!」


 ☆☆☆地上


『みなさ~~ん。悪いことはやめなさい~。欲張ってはいけません!』


「あれ、何か声が聞こえる?」


「ええ、聞こえないよ」


 一人の娘が女神の声を聴きました。


「まあ、念じれば、神の声が聞こえるわ。私も返さなければ、どうしたの?」


「グスン、グスン・・・人族は悪い子になっていますわ。良い子になるのです!」


「分かりました」


 娘は布教を始め。やがて・・・


「女神教会を立ち上げます。皆様、入って下さい!女神様はお嘆きです!良人になるのです!」



 ☆数百年後


 フフフフフ、人族の大多数が、女神教会に入ったわ。


 気に入った子は、聖女、聖人にしましたわ。


 さあ、昔の良い子に戻るのよ。


 しかし、一向に、祈るだけで、人族は、昔に戻りません。


「「「女神様~~~~~」」」


 ヒィ、悪い子に慕われている気持ちだわ。


 でも、我慢よ。あと、何万年もかけても良い子に戻さなければいけないわ!


 女神様は今日も呼びかけます。


 一方、邪神も、


「何や。神のできそこないみたいになったのう。つまらん」


 ボン!


 ドラゴンに姿を変え。


 北の方角に向かって、去って行きました。


 ☆☆☆現代


 ☆大陸最南端のとある森


「リーダー、サルの獣人族がいるよ!」


「ウホ!ウホ!ウホ!」

「ウホホホホ」


「防御態勢を取れ!」


 ・・・・


「ウホホホホ~」

「ウホ!」


「へえ、皆、なつくね。友好的だ」

「サルの獣人じゃない。小さい。ゴブリンでもない。新種のサルだよ」

「攻撃しない。というか無防備だよ」

「ああ、ここは食べ物が豊富だな。天敵がいないからだろ」


 魔導士が思い出します。


「何か動きが人族っぽい。顔も似ている。そういえば、異世界からの知識だけど、もしかして、私たちって、彼らから進化して人族になったかも」


「はあ、そんな訳ないだろう!」


 聖女は止めます。


「やめなさい。それを言うと、女神様がお嘆きになるの。異世界の教科書は全て鵜呑みにしてはいけないわ。


 女神様が嘆くくらいだから、間違いなのよ。過去にね・・」


 異世界から、向こうの平民学校通学中に、転移して来た子がいたの。

 教科書を調べたら、人はサルに似た生物から進化したって書いてあるの。

 それを、聖都の最高位の聖女様が、女神様にお伺いしたら、


「・・・グスン・・・グスン」

 泣き声の託宣が来たっていうのよ。


「まあ、どうでもいいや。ギルドに報告しようぜ」


 やがて、アカデミーの調査も入り。

 この地帯一帯は、立ち入り禁止区域になった。

 あまりにも無防備で、外の世界と接触すると絶滅する恐れがあるからだ。


 この森にしかいない貴重な生物と認定された。


 神は毛むくじゃらの人を生み出したかもしれないが、邪神が人たる由縁を作ったのかもしれない。




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