黒板

one minute life

第1話 遠い存在

 たしか、小学5年生の終わり頃のことだったと思う。

 そう思うのは、はっきりとした記憶のある事実があるからだ。


 放課後、自宅から電車で40分ほどの進学塾に通っていた。


 そこでは、年に3度行われるクラス編成テストの成績により、生徒は教室を割り当てられていた。

 それまで最も上位のクラスだったが、6年生最初のクラスはそこから落ちてしまった。

 毎週日曜日に行われる通常のテストの成績は振るわなくとも、クラス編成テストに賭けていた私には大変なショックだった。


 各教室の運営はアルバイトの大学生に任されていた。

 聞いたところでは、この進学塾の塾長がK大学出身だったことから、アルバイト学生も皆、K大生だという。

 現に、私のこれまでの教室の担当者は、授業開始前や休み時間に談笑する一部の男子生徒達から「K大医学部」と呼ばれていた。


 K大医学部と生徒達との間のこのような関係は、私がこの教室に通うようになる前から出来上がっていたようだった。


 私は少し離れた場所から彼等のやり取りを眺めていた。きっとその中に入りたかったのかもしれない。そんな勇気もないだろうに。

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