ゾンビ

@ishikawa0330

第1話

 ゾンビになったのはつい最近だった。スクリーンの向こうとは違って、血が出ることはなかったし、口が牙になることも、脳みそが垂れ下がってしまうこともなかった。強いて言うなら、肌が荒れた。

 そんな新米ゾンビの私の朝は早い。夜型のゾンビもいるかもしれないけど、私は朝型のゾンビ。今日も両手を前に突き出して、暖かみのない道を千鳥足であるいていく。

 目的地はいつもの墓場。あそこには沢山の仲間がいる。遺体の埋立地だけど、私の心の穴を埋めてくれる。そこ以外に居場所がないだけかもしれない。

 そこに行くには大きな棺桶にのって行く必要がある。

 墓場は全国至る所にあるから、棺桶には沢山のゾンビが乗っている。

 棺桶を乗り継いで、目的の場所に着いた。

 私はみんなに声をかける。

「おはようございます。」

「今日も仕事頑張ろうね。」

 誰にでもできる仕事。また何も変わらない1日がやってくる。

 気づいた時には、あなたもゾンビだ。

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