俺の追放されたい願望がメンバー全員に知られている件

悠/陽波ゆうい

追放されたい欲まみれの男

第1話 追放ファンタジー世界(?)に転移した男

『お前みたいな何もしていない、何もできない無能は俺のパーティーには要らない! お前を追放する!!』


 という一連の流れがパーティー追放。

 

 追放されてからは能力が覚醒して、次々と功績を上げていき、美少女ハーレムも自然とできていく。

 一方で追放した側は地位も名誉も力さえもどんどん落ちぶれていき、結果的には立場逆転。 


 それを追放ざまぁという。

  

 小説や漫画で読んでいた時、別に追放ざまぁまではしなくてもいいと思ったが、能力の覚醒には憧れた。


 能力が覚醒してどんな敵も瞬殺フルボッコできるのは誰だって……憧れるだろう!!


 そして、その能力の覚醒には追放されることがつきもの……。

 

「だから俺も追放されれば、が分かるはず!」


 追放ざまぁファンタジーが溢れる日本から転生して早2年目。

 俺、アズマ・ロクトは今日も追放されたい欲に溢れていた。


 前世の創作物がそうだからという曖昧な情報で追放されたがっている訳ではない。


 確証はある。


 それは俺がある日、ぶっ倒れてから出会った女神様と名乗る美女との会話の中——


「東六斗さん。貴方は死にました。では、異世界への転移の儀式を始めますね〜」

「……は? え、あっ、ちょっとちょっと!? 異世界へ転移させてやるから死んだことはうやむやにしていいですよねっ、みたいな態度やめてくれません!?」

「では、異世界転移は希望されないと?」

「ぜひ異世界転移をお願いします!!」


 結局、間違って殺しちゃったけど生き返らすのは不可能とか言われて最初の会話に戻るだろう。


 そこら辺は、ラノベや漫画で履修済みだからなんとなく分かる。

 理解はあるが……内心は何が起こったのか、これでも結構パニックである。


 だって俺、死んだんだよ?

 15歳。高校1年生。しかも入学式が終わった翌日に死んだんだよ?

 俺の青春時代が何も思い出がないまま死んで終わったんだよ?


 えっ、俺、何もできないまま死んだの!?


「間違って死なせてしまった貴方には、スペシャルな能力を授けましょう」


 この人、今間違ってとか言ったぞ。

 やっぱり俺のこと間違って死なせたんだ。

 

 ドン引きの俺をものともしない、美女スマイルを女神様は浮かべ続けている。


 じゃあもうそこは置いといて……。


「おおお! それは一体どういう能力ですか!」


 俺は切り替えることにした。

 

 やっぱり能力って聞くとテンション上がるよな!

 異世界転移の能力といえば、現地主人公と違ってハズレスキルではなく、チート能力がもらえる傾向である。


 女神様の次の言葉に注目していると……。


「それは……です」

「収納? ハズレスキルじゃないですかね?」

「収納の能力は意外とチートだと思いますけど」

「まあ……はい」


 便利ではあるけど。

 能力を貰えるだけでもありがたいと思うかぁ……。


「それともう1つ。能力を授けましょう。その能力は、異世界にて遺憾無く発揮されることでしょう」


 肩を落としていると、そんな声が聞こえて期待するように顔を上げる。


「つまりは、真の能力みたいな感じですか?」

「そうですね。異世界特有のイベントを経て、能力が覚醒し、現れることでしょう」

「異世界特有のイベント……」


 異世界特のイベントって言ったら……追放イベントってことか!!


「では、いってらっしゃいませ〜」


 そんな感じで色々と一方的に異世界転移したのであった。


 というわけで……。


「追放されてえええぇぇ!!」


 追放されれば、俺の真のチート能力が何か分かる!

 分かれば……俺だってハーレム無双し放題だ!!


 現在俺は、異世界らしく冒険者パーティーに入っている。

 今のパーティーに入ってもう半年は経つな。

 パーティーでの俺の役割は【収納】という能力で察すると思うが、荷物持ち。それと、家事全般だ。


 荷物持ちという追放されがちな役割ランキング第1位要素。

 それに加えて、パーティーメンバーは俺以外全員イケメンと美女。

 顔面偏差値から見ても俺はみんなと釣り合っていない!


 つまりは、俺がパーティーを追放されたいと志願しなくても追放されそうな要素はいくつも持ち合わせている!!


 追放されるのはもはや時間の問題というわけだ。


「俺はパーティーを追放されて、能力が覚醒して、隣の国に移動してハーレム無双するぞぉぉ! おおおおおおお!! おっ、そろそろスープもいい感じになってきたな〜」


 再び気合を入れるのもほどほどに……今の俺は朝ご飯を作っていた。


 盛り付けに入ろうとした時、ドアが開く音がした。


「ろっくん……朝からなに言ってるのぉ? ふぁぁ〜〜……。おはよう……」

  

 おっと。パーティーメンバーの1人が起きてきたようだ。



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