閑寂

 兄の朝は早い。


 スーツに着替えて行ってきます。


 兄の帰りは遅い。


 ただいまと聞こえて来る頃には、日付が変わりそうになっている。


「私にもちょっとは構ってよ」


 なんて、口が裂けても言えないし。

 

 今日も兄の背中を見送る。

 

 兄のいなくなったこの家はなんか広くて、ちょっと寂しい。

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