モモンガ
よっちゃん
初めて空を飛んだ日
《モモンガ6よりCPへ。間もなく作戦空域に入る。送れ。》
《モモンガ6、了解。モモンガ隊は降下ポイント付近に到着後、任意で作戦を開始してください。送れ。》
《こちらモモンガ6、了解。終わり。》
ここ数日ほど、大寒波が接近していて寒かったはずなのに、今日はやたら暑い。いや、実際は肌寒かったかもしれないけど…。
「なんだ?初任務でビビってるのか?」
と仲の良い先輩。はい、今絶賛ガクブル中です。
「心配すんな!ビビってたら成功するもんも成功しねぇ!シャキッとしろよ!!」
と別の先輩。激励マジで助かります。
「何度も訓練を受けたので、それを今日こなせれば良いとだけ思ってます!」
自分で何言ってんだ?とはなったが、周りの先輩方は俺の言葉を理解してくれていた。
「それより、作戦内容は頭に叩き込んだか?それ忘れていても失敗するぞ~。」
焦りながら俺は応対した。
「目標は、地中から現出したと思われる超大型の甲虫怪獣、コードネーム:レギウス
我々、第1特殊空挺団は地上部隊と連携を取り、レギウスの予想進路上にあるビルに降下。硬い表皮を溶かす物質を含んだ『特殊弾』と、体内細胞を非活性化し細胞を凍結させる『冷凍弾』を頭部に発射。進行を阻止する。です!」
言ってやったぞ!という顔をしたに違いない。実際、先輩方はそんな感じの俺を見つめる目をしていた。
「暗唱できるぐらい覚えてるなら大丈夫だ!だが、『特に大事なこと』が抜けているな?分かるか?」
隊長から質問が飛んできた。なんだろう、俺何か忘れていたことでもあったか?いやそんなはずは…。
「それはな、『全員生きて、明日を迎える』事だ。新人、身の危険を感じたら任務を放棄して逃げていい。無茶をして死んだら葬式で死体を呪ってやる。いいな?」
「「「了解。」」」
隊長の答えに対し、了解と返す先輩方。俺もそれに続いた。
《コンボイ1番機よりモモンガ6へ、そろそろ降下ポイントに到着する。》
ちなみにモモンガとはこの部隊のコードネームだ。可愛い名前がついているが、歴戦の手練揃いの精鋭部隊である。
輸送機のブザーが鳴った。
降下ポイントに到着したことを、俺達に伝えるためのブザーだ。
「降下準備!」
「準備よし!」
隊長がハッチを開けるためのボタンを押した。
見渡す限りのビル群。その中に、二足歩行のクワガタムシのような姿を確認した。甲虫怪獣レギウスだ。
《コンボイ1番機 コースよし コースよし 用意!用意!用意!降下!降下!降下!》
「ではモモンガの諸君、集結地点で会おう!降下!」
勢いよく隊長が飛び降りた。何人かの隊員が続き、いよいよ俺の番だ。
「怖いか?怖いだろう?訓練で飛んだ距離と同じはずなのにすごく怖いだろ?この恐怖は忘れるな!ただ、恐怖に浸る前に飛べ!恐怖に浸るのは着地してからだ!」
後ろが突っ変えてるのに俺に激を飛ばす先輩方。勿論怖いさ。けど、俺はここに来た時から覚悟は決めてきたつもりだ。
「大丈夫です!行ってきます!降下!」
20XX年11月某日
二三○○ 兵庫県神戸市
怪獣災害が頻発している日本で
今日、俺はその怪獣達と戦うために
初めて実戦の空を飛んだ。
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