白と黒の戦闘交響曲
碧山
第1話 我にお前の体をくれないか
私は自分に問いたい。
どうして、この暑い夏が始まると無性にオレンジジュースが飲みたくなるのか。
別にオレンジジュースが一番好きな飲み物でもなく一番好きなコーヒーは豆から牽いて入れる朝飲むコーヒーが一番好きだがなぜか飲みたくなる。
仕事の移動時間などにコンビニ入ってオレンジジュースを買おうと入るがペットボトルでは売っていなく1Lの紙パックでしか存在はしない。
そんなにいらない。
自分でもわがままではあるとは自覚しているのだがこれくらいは許して欲しいこの雲一つも無い空の下汗をかきながら自分は秋に向けたブックフェアのポップと配布物を各書店に配るために電車と徒歩を駆使して移動しているのだから
もちろん過去に去年だったか上司にこの暑さなので社用車を使っても良いかと打診をしたがため息と共にガソリン代は自腹ならいいぞと言われてしまった。
ブラックな企業だ。
本日のノルマは七店舗ありそのうちの三店舗が終わり、四店舗へ向かうためにJR三宮駅から神戸駅に移動する途中であった。
先程の店舗は三宮と都会の地域にある書店であり、コンビニを物色した後地下街に逃げるように階段を降りていった。
三宮の地下街さんちかは百貨店や地下鉄に直結にしていて特に洋菓子店が立ち並んでいる為若い女性の利用率が多く通りにくいがこの暑さだとそんな事言ってられない。
汗をかきすぎてハンカチがおしぼりの様になってしまいエアコンの効いた地下街はスイングドアが開くと冷気に襲われる。
急激な温度の変化に体はビックリするが夏場の暑い時期には地下街は涼しく天国だ。
細い通路を抜けさんちかの大通りに入ると夕方に差し掛かろうとした時間帯もあり子連れや私服の女性が多く大通りに面したお店は婦人服屋や洋菓子店が並んでいたこのさんちかにある洋菓子店はお菓子というより芸術品で食欲よりも美しさに見とれてしまい食べるのに躊躇してしまう。
大通りをぬけるとJRの改札へ向かうエスカレーターが登り下りと二列づつ左右に備え付けられた踊り場がみえる。
お菓子の誘惑に負けじと目線を足元より少し上にむけつつ歩いているとぶつかるすれすれで靴まで掛かるほどの長いスカートをはいた女性が横切って来たためはっと足たするとそれに築いたのか女性も足を止め目と目があった。
その女性には見覚えがあった。
高校時代から身長は少し伸びて入るだろうが顔や髪型のボブヘアーで確信した。
中学校から高校生までの同級生で頭はよく常に学年でトップで皆に平等に面倒見のいい善人な人間だった。
中学からの学力は不動の一位。
因みに私は下から数えた方が早かった。
そんな成績優秀な人が私のような頭の悪い学校に入ってきたのか入学式のクラスの自己紹介の場で同じ学校であることを知り疑問になったが家庭の事情もあるので聞かなかった。
しかし、高校の卒業の2ヶ月前に家族皆で姿を消し、今でも見つかったとは同窓会でも聞いたことはなかった。
「ごめんなさい。少し考え事をしてたもので」
雨霧は小さな声で囁いた。
「こちらこそ、不注意でした」
軽く頭を下げた。
雨霧はそれを確認して去ろうとしたため
「雨霧だよな俺だよ京だよ
呼び止めたが少し後悔をした。
高校以来あってもないので彼女という確証もない。
もし、人違いだったらと思うと人通りも多いので恥ずかしい。
「この者を知っているのかい君は」
奇妙な質問をされた。
どこかでお会いしましたでしょうか。と聞かれるのは理解できるだが、自分のことをこの者と他人行儀に扱うとはかそれとも記憶障害なのか。
「あなたが雨霧翼さんでしたら…中学校から高校にかけての同級生ですが…」
頭の中は疑問符ばかりで脳内がパンクしそうだ。
「そうですか、私を知っている人がまだいて、彼女も喜ぶでしょう」
「もし、お時間よろしければお茶でもしませんか。」
少し頬を赤く染めて雨霧は言った。
その言葉を聞いたとき高校三年生の夏の体育祭前日の事を思い出した。
あの日も今日と同様に雲ひとつない晴天な日で我が高校星光学園は体育祭の前日は全学年で体育祭の準備件リハーサルをやっていた。
星光学園は山の上にある学園でグランドがない。そのため体育祭は無かったのだが私達の三つ上の24回生の先輩達が高校生活の思い出作りの為と市営の競技場で開催されそれが全学年での体育祭となり引き継がれている。
午前中に準備が終わりそのままリハーサルが行われた。
ラジオ体操の広がる位置の確認などのリハーサルを日暮れまで行われ各クラスで軽くホームルームが行われ現地解散になった。
汗をかき、競技場から家まで距離があった為早く帰りたかったが皆は明日の作戦会議といってカラオケに行くと誘われたが断りをいれてスタジアムを出ると
「京くん。」
振り向くとおでこに赤い帯を結んで少し頬を赤く染めた雨霧が後ろにいた。
声を聞き振り向くと白の体操服からキレイなボディーラインとお花の香りがする制汗スプレーの香りでこっちはドキドキが止まらなかった。
そのときの雨霧の言った言葉は覚えてはなかったが内容は告白だった。
しかし、雨霧と釣り合うようなイケメンでは無かったし当時の自分はいじめられっ子でもあったので雨霧に迷惑をかけてはいけないという思いが強かったため断った。
自分は中学のときからひとめぼれをしていた為帰宅後朝まで部屋で泣き崩れた。
あれから、大学は家から近かったのだが一人立ちをするためアルバイトをしつつ常に大忙しな生活もあってか小太りだった高校生活とは変わって痩せぎみになり、会社の健康診断では医師とのカウンセリング時に食べる量を増やしなさいといわれるほどだ。
「大丈夫?」
雨霧の呼ぶ声に築き思い出の中から目が覚めた。
「雨霧さん、すいませんただいま勤務中でしてこれから神戸駅の方に…」
ふと違和感が襲ってきた。
先程まで多くの人の往来があったこの地下街に自分と雨霧さんの二人しかいないのだ。
雑音程度にしか聞いていなかった館内放送も無くなっており横の婦人服店には販売員の姿もない。
「どうやら巻き込んでしまったみたいです。すいませんがあちらの服屋の試着室に隠れていてください。」
雨霧は先程より早口で焦っているような口ぶりで指を指した店は婦人服屋さんだった為入るのには罪悪感はあったが雨霧の言われたと通り試着室に隠れた。
試着室のカーテンを閉めると無音の世界だった。
90センチ四角い世界に恐怖と混乱の空間だった。
逃げ込んだ試着室は靴を脱いで出入りする物なのか床に摩れるギリギリまでカーテンが伸びており外の確認はできない。
「一般人を巻き込まないでよ」
遠くから雨霧の声が聞こえる誰と会話しているのだろうか相手の声は男性だろうか何を言っているかわからない聞いたことの無い言語だ。
「白の神は人間を産み出しておいて大事に扱わないようね」
雨霧の声は会話をするごとに口調が尖りつつある。
どうやら相手は複数人いるらしく様々な口調が聞こえるが何を言ってるかはわからない。
気になる。
だが、その何を言っているかわからない者共は白の神の使いで重たい金属音がする。
殺し屋なのか。
婦人服店もあってカーテンは分厚く茶色で透けても見えない。
「私はあなた達には興味がないし、30年前の悲劇は起こさないわ」
30年前…私は生まれていないが大きな事件があった千葉県から東京神奈川行くに全長200mを越える大きな怪獣が横断したという事件があった。
当時でもカメラなどの記録媒体が発達しているのに怪獣がキレイにとれた映像・写真は一個もなく、東京を炎の海にした怪獣も何処に消えたのかも今だわかっていない。
不思議な事件だが2000万人もの死者、行方不明者をだし現在でも東京は荒れ地となり 現在の首都は埼玉都となった。
パンッ
一発の銃声がなった。
それと同時にかカーテン越しからドタドタとあちこちからあらゆる音の騒音が鳴り響く。
地面が揺れる。
それは、音が大きくなるごとに大きくメキメキト壁が軋む音も追加される。
外にでないと天井が落ちてきて下敷きなる。
しかし、現在、京の存在は知られてない。
今ここをでて怪しい奴らに出くわすのは危険だが今のままでは天井がいずれにしろ落ちてくる。
金属音や銃声が激しくなるなかカーテン越しから大きなものが飛んできて京に激突しそのまま背中を強打した。
あまりの勢いで衝突したため視界が霞む。
飛んできた勢いでカーテンは壊れ、京にぶつかってきたものがカーテンにくるまっている。
カーテンが無くなった視界はあちこちの店舗の商品などが飛び散り足の踏み場もない状態で先程まであったショウケースやガラスのテーブルまでもが粉々で骨組みが形は歪んでいるが残っている。
京の膝の上のカーテンにくるまれているものが動く。
おそるおそるカーテンをめくると丸まって目をつぶる女性だった。
肌は緑がかった青で錆御納戸色髪は深く渋い赤の海老色の髪のドレッドヘアーだ。
彼女は気を失っておりあちこちに切り傷が多く傷口からは緑の体液を流している。
血なのだろうか…。
手には大事そうに六角の角柱の青くクリアで中には黒い炎が揺れている。
まだ戦闘は続いているらしく爆音と天井が軋む音がする。
京は彼女の握っているものを自分のズボンのポケットに入れて彼女をおぶった。
彼女は胸元や腰に金属の装備をしている為、おぶった時に重いと感じたが相手が女性だった為踏ん張って言葉を殺した。
地下街は荒れていた。天井が落ちてきて所々店がなくなっていたり天井に備えついていた照明が落ちて配線から火花が出たりと散々だった。
地下街は証明が落ちて臼ぐらい。
京は女性をおぶって自分が入ってきた地下街の入り口へと行くと瓦礫の山で見る影もなく瓦礫は噛み合っていて安易に除去できるものではなかった。
一度引き返して別の出口に振り向くと傷だらけの大男が立っていた。
男は身体中傷だらけで右胸と左足には短刀が刺さっていて持っていた剣を鞘に戻し杖のように体重をかけて立っていた。
肌は背負っている女性と同じ肌をしているため仲間だろうと察した。
男性は京に怒りをさらけだして怒鳴っているが何を言ってるのかは理解できない。
男性に変な勘違いをされないようにと一度彼女を彼の目の前で下ろして敵ではないと証明しようとして彼をみた。
お腹に痛みが走った。
手を腹部に持っていき痛みのある部分に持っていくとチクッと指先に痛みと手が濡れた。
手が血だらけだ。
腹部を見ると目の前の男性に刺さっていた短刀が刺さっていた。
それを見た途端力が抜けたように崩れ落ちた。
今ここで死ぬ…頭の中でよぎった。
京は仰向けに寝転んで楽な体制になった。
瓦礫やガラスの破片などで寝心地は最悪だ。
地下街は爆音がやんでおり男性が足を引きずりながら京の元へときて鞘から剣を取り出し何かを言ったが理解できなかった。
剣を振りかぶった途端京は覚悟をした。出血でじわじわ痛みの苦痛を感じつつ死ぬより首を跳ねられたどれだけらくかと。
覚悟を決めたそのとき
「京くん」
大きな声で京を呼ぶ声が聞こえた雨霧の声だろう。
京は声を発する力もなくごめんねと口を動かした。
すると目の前で大男の首が飛んだ。
男性の首が京の足元に落ちて時間が止まったのかのように落ちてから数秒してから血の雨が京の体に降った。
「京くん大丈夫!」
視界が霞んでよく見えないが目の前にいるのはわかる。
雨霧は京の上半身を膝の上にのせ声をかけてくる。
息苦しく指先の感覚がなくなってくる。
だが、学生時代に好きだった女の子の膝枕とはいいものだ。
感覚も視界も良くないのでそれが残念だ。
雨霧が声をかけつつ何かを握らせてくるが何かはわからないが最後の気力を使って笑顔を作りこと切れたか眠りについた。
目が覚めると真っ暗な虚空な世界が広がっている。
「よう、じゃまするぜ」
真っ暗な暗闇から声がする。
「おい、聞こえていないのかお前だよそこの兄ちゃん」
真っ暗な暗闇から大きな目がギョロりとこちらを見ているのがわかった。
「築いてるなら声くらい出せよ。この暗闇だわからねえよ。」
グルルとおおきな唸り声とともに低音の声ので京は恐怖で声がでない。
「心配しろ、取って食ったりはしない。まぁここはお前の思考の世界でそんなことはできない我はお前に相談があってここに来た。」
暗くあまり見えない世界で自分よりも大きな者はそういうが京には恐怖感は抜けない。
「そ…相談とは」
これ以上黙っていると食われるかもしれないので恐怖はあるが返答をした。
「なに、簡単なことだ。この体を我にくれ」
体?先程腹に穴が空き死んでしまった体を欲するとはやはり食べる為なのだろうか、目の前の者は先程の大男の仲間で雨霧さんを食ったあと私の体もくれというのか
「なにか、勘違いをしていると思うから先にいっておくが食うためではない我がお前の体に受肉するためだ。」
「受肉…それをしてどうするのですかあなたは青い肌の人たちの見方ですか」
「青い肌?そんな奴らは知らんが我は黒の神に属するものだ。まぁ我は神に負けて契約でついてるだけだがな」
黒の神?先程雨霧さんは白の神だなんだとか言っていたがそれに対になるものなのだろうか雨霧さんは人間ではなく神だったのだろうか。
「あっ…雨霧さんは白の神がどうとか言っていたがあなたは雨霧さんの見方なのですか。」
「雨霧…そんなやつは知らんがそいつは黒の神に受肉にされた脱け殻だろう中身は違うぞ」
受肉…雨霧さんは死んでいて中身が既に違うだから最初会ったときにこの者と言ったのか今違和感に納得がいった。
「わかりました。僕もあの肉体とはお別れをしてあの世にいくので雨霧さんの中の人為になるならどうぞ使ってください」
恐怖感はあったが自然とスラスラと言葉が出た。
どうしてかわからないが安心感があった。
「あっ神の使いさんでしたらあの世ってどんなのか知っていますか?」
すぐにいくところだがどうな所か知らないでいくより知って覚悟をした方が言いと思った。
「我は死人ではないからわからんが冥界の奥底の魔界は知っとるぞ死して罪で送られたものは冥界の魔素を吸って魔物になり食うか食われるかの世界に送り込まれる。あぁ我に兄ちゃんの体をくれるなら良いことをしてやる生まれ変わりってやつだ」
「ひとついっておくが、我は閻魔じゃないんだ人間や亜人など選んで転生させてやる事はできない我はいくつもの魔物や神を食って力を得たものだ虫になっても文句は言うなよ」
もう、死んでしまった自分には選択肢はない。
京は頷いて了承した。
「承知した。では目をつぶって動くな。」
すると、自分の背中に羽が映えたように浮き上がっていく。
「では、京よ!次の余生では楽しく悔いのないように過ごせ!そういえば我は名を名乗ってなかったな、我は冥界にて最強の邪竜レヴィでは去らばだ」
目を開けると遥か下にレヴィがいて、その直後に白い光に包まれた。
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