悪魔の眼
@kazenote
しみったれた世界
膝上をさらうスカートの波。カロリーとってなさ気な細く長い色白のお脚。ことあるごとに聞こえてくるのは甲高い声と罵声。年上の女相手に悟り開いたふりして、見透かすように世間様をバカにしている俺は産まれてたった十二年。
この冬を越したら中学に上がるわけだが、お勉強大好き両親に逆らって毎日RPG三昧。ポップかロックかわかんねーけどそんな感じの曲聴いて、怖いJKに絡まれないよう身を潜めつつ、学業の合間の土日の休日を野外ゲームと音楽で堪能していた。
そんな俺は公園にいるわけだが、家から十分の空き地であるため、ソッコー親にバレた。
「楓……あなた……」
黒崎 楓、俺の名なのだが、母親は半泣き混じりで思いつめたように俺の名を口にした。(……さすがに、勉強もしとかないといけないよな、母さんには生活面でも苦労かけてるし……)俺がごめんを言う前に、母さんは言い放った。
「楓、あなたが賢いのはよくわかってるわ。正直勉強だけが理由じゃないけど、楓、もうあなたいらないわ。父さんね出ていったのよ、私も疲れたわ、もうあなたの面倒まで見れないの」
目もわせず、うつむいて淡々と語る母親に俺はどうしていいのかわからず、一緒にうつむいた。
「か、母さん、そんな一人で決めないでさ、俺、中学上ったらバイトするし、父さんいないんじゃ、お金もね、きついだろうし、だから……」
「いやぁ!!!その目で見ないで!!!!」
母さん……の言葉を飲み込んで、急にヒステリックになった母親の声に夕方の公園、の近くを通りかかった人々が振り返った。
母親はずっと。ぶつぶつ地面に向かって言ってて正直怖かった。けど慣れてた。俺の目は悪魔の眼だから。細く釣り上がり、黒目は人のより漆黒で、白いところは真っ赤に血走ってる。でも大丈夫もうすぐ助っ人が来るから。
「お!おーい!楓ー!遅くなったな」
ほらきた、大親友の大ちゃん。俺と違って目つきもキレイな爽やかイケメン。水城 大。この子が来ると安心なのよ。
「おい、楓、おふくろさん、いつものやつ?発作?」
「聞いてくれるか大ちゃんよ。今回はガチでヤバいかも。父さん蒸発して母さん疲れ切ったって。おまけに俺のこの眼だ……俺、家出るよ。」
「いやいや、十二歳この雇う場所も、住まうとこも誰もくれないでしょ?冷静になれ、俺んち……は……親がな、すまん」
俺が住んでるこの街は、規模も小さくうさわ話もすぐ広まるため、俺はこの街で悪魔の眼の子供として有名だった。
何で本ばかり読んで、ゲームばかり遊んでたかって?この日のためだよ。より多くの知識が必要だった。この街で生きていけなくなる日が来ることを知ってたんだよ。あぁ泣きそう。
思い悩んでる俺に、大ちゃんはポケットから何やらケースを出して、黒い縁のそれを楓の両耳に優しくかけると、大ちゃんはにっこりしてみせた。
「大ちゃん?これグラサンかな?俺に?いーの?」
「俺、楓の目、かっこよくて好きなんだけど、周りはわかってくれないからな、楓が傷つかないためのお守り?的な」
「大ちゃん、母さんのこと頼む」
「楓、1つ渡しておきたいんだ」
大ちゃんは俺にスマホをくれた。自分のお下がりで自分にはもう一台あるからと。名残り惜しいが俺はこの街を後にした。贅沢の本音では、大ちゃんと旅してみたかったけど、もう少し大人なってからじゃないと、大ちゃんだって家族も友達もいる。
街の出口のとこだった。贅沢の本音はそこで笑ってた。さっき俺にスマホを渡して一旦帰ったはずの彼はショルダーバッグ一つで俺より軽めの装いで、待ってましたと言わんばかりに俺を待ってた。
「遅いぞ楓、このままじゃ、野宿じゃん」
「え!?なんでいるの?大ちゃん!駄目だよ、大ちゃんには家族いるし友達だって、それに、俺の母さんのことも」
「楓んとこのおふくろさんなら、警察様々にお任せしてきました〜、大人のことは大人に任せよ〜、楓には俺しかいないんだろ?それに、楓は知識片寄ってて一般常識ないから心配だ」
一気に気が抜けて、いろんな心配もどっかに飛んでいったみたいに軽くなって、大ちゃんの存在の偉大さを思い知った。どこに行くのか宛もなく、俺たちは街の外に向かって無謀な一歩を踏み出した。
「でも大ちゃん、周りにはなんて説得したの?」
「なんてって、そりゃ、"旅に出たい"って言ったよ?男のロマンじゃないか。あと、俺には強力な助っ人、必殺おじさんがいるのだよ!お金くれたり、身の回り世話してくれるらしいから、そのうち紹介する!」
結局初日は上手いこと警察に隠れて野宿した。星の海が天井に広がっていて、俺と大ちゃんはいつまでも寝なかった。眠気も来なかったし、寝たくなかった。俺も大ちゃんもこれから来る二人旅+おじさん?のことで話が盛り上がった。
「「リアルRPG!現実と言うなの大冒険!!」」
謎の掛け声とともに俺たちは決意し、大ちゃんの言うところの、"楓、大人気大作戦(本人非公認) "の元人生プランを練りながら活動していくことになった。俺的には人気者にならなくてもいいから、嫌われない人生おくれればなくらいで考えていた。
でもそうやって考えてくれることがありがたかった。
明日になればいなくなる、どこぞの群れるだけのスカート軍団とは違う、折れない魂の大親友が俺にはいる。
それだけで生きてて価値となる。
悪魔の眼 @kazenote
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