(ドキッ!転移者・転生者だらけの異世界で)悪役令嬢をめざしまちゅ

@kaimon924

第1話 あくやくれいじよおうに、あたちはなる

「ちちうえー! わたくし、あくやくれいじょうになりますのー!」

「「「ガタッ」」」

 藪から棒に、いったい何を言い出すのでしょうか、この娘は。家じゅうの視線が痛いです。


 確かに、此所は、転生者・転移者、前世の記憶を保ったまま、あるいは何らかの切っ掛けで、前世の記憶や、この世界における「お約束」を、前世の創作物の「設定」としてメタ的に「思い出す」人々の コミュニティの中心ではあり。


 また、この家に住まう者も、この末の娘を除いては、そうした前世の記憶持ち達の集団には違いないのだが。


 さきほどから、ニコニコと天真爛漫な笑みでもって、甚だ物騒な抱負を語り始める人生の新人に、いかなる面接官を演じるべきなのか。内心戸惑いつつ。


 ここは中世ヨーロッパふうの、剣と魔法の世界。

 語る本人は、「ごくごく普通の、平凡な市民」、前世は、よくある過労死した「ちほーこーむいん」、おしごとがだいすきなフレンズだったんだね。


 奥さん、つまり、この娘の母は、この世界の、とある長命種族からの政略結婚。

 といえば、ありがちだが、これまた、前世は語り手本人と同郷、つまり「和食を含む日本食」でカラダが構成されていたクチ。


 語り手本人の前の前の世代あたりから、転移者・転生者が寄り集まって、ひとつのコミュニティを作り出し、第三世代あたりはまあ、さほど辣腕のスーパーマンでなくとも勤まる程度の安全牌。


 さて、一族では第四世代でも末っ子あつかいの末娘ちゃんの爆弾発言により、家じゅうから一斉に、「この元凶めぇッ!」扱いされているのは、日頃の行状、前世からの「活字中毒」、創作物全部集める病。

 耳年増なおませさんになってしまったらしい。


 さあて、われらが末の娘御は、いったいどんな「悪役令嬢」を目指すのでしょうかな。

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