第21話
何気なく、庭を散策するように歩いてくる女の姿に
とんでもない圧力が押し寄せてくる。追い詰めた男にとどめを刺す暇はない。男の判断は速かった。すぐに
「あんた、良い判断してるねぇ」
お
「名乗りなさい。相手してあげるよ」
かかってこいと言わんばかりに
「賊が名乗るとお思いで?
奥方様、奥方のお遊びに付き合って差し上げますよ。
四十は越えてられるのにいや、お美しい。終わったら遊んで差し上げますよぉ。全員で……」
お
「そうねぇ、じゃあ、ちょっと付き合ってもらいましょう。でも私の身体は殿だけのものですよ」
お
男は壁際まで二丈ほど吹き飛ぶ。お
男はかたかたと震えていた。まったく見えなかったのだ。腕の動きも、身体の動きも。
しかし、予備動作すら見えなかった。ましてやどのように動いたのかも見えなかったのだ。
男は痛みをこらえながら立ち上がった。骨には異常は無い。まだ動く。元武士としての意地が戻ってきた。
「
男は名乗った。出家した僧のような名だった。
お
上、下、左、右、突き、払い
ありとあらゆる方角から、角度から斬撃と突き、払いが飛ぶ。
それも渾身の一撃だ。
遠心力も最大限に加わっている。
十合、二十合、三十合、そこで男の動きは止まった。すべて片手であしらわれたのだ。普通の、ごく普通の
これまで仕留められなかった相手はいなかった。
大勢の山賊、追っ手の武士や
「どうしたの?
もうおわり?」
お
しかしどこか不満そうな顔を見せていた。
不完全燃焼。
そのような顔をしていた。
ふと思い立ったように
その場にいる全員がお
「
お
「
お
呼吸を整える。
呼吸を整える時間もくれた。いつでもいける!
その場にいた全員の目が固まった。
(い、いつ、いつ動いた……)
いきなり腕に強烈な衝撃が走る。それは重い、重いものだった。
「はい、
それだけ言うとお
「どうする、
ここで死ぬのも良し。帰って腕を磨くのも良し。好きにしたら良い。
なんだったら仕官するかい?」
お
ここまで家臣を殺され帰ってよいというのだ。
しかも、よければ
突然の轟音。
次に
お
塀の上に
「あ~、失敗しやがって。我が弟ながら情けねぇ。死んで詫びろ。それとお前らは確実に殺してやる」
そう言って、
馬が
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
説明を聞いていた
「それで、それと私をつけ回したのに何の意味がある?」
時雨は不機嫌になっていた。
いまの自分にとって意味の無い話を延々と聞かされたのだ。
「いや、それで、賊の遺体を調べていたら、
そこまで言ったとき
「
これは
それなりに気を遣ってくれているようだ。もっとも
「つまり、
もっとも最初は
まさか、
「そこまで調べていたら、
時雨はここで情報を引き出そうとしていた。
「それが、侵入した者、接触しようとした者はすべて行方不明に……」
察しはついていた。
「で、これからどうするの?」
「残念ながら
一度、放逐された身ですよ。それに実質、幕府には病死で届けられていますから」
確かに素性を隠していたとしても、いつ何がきっかけでばれるか分からない。
今までは、
それは
自分を
父様、母様、そして弟はいまでも好きである。当然、領民達も愛していた。片思いだが……。
迷惑をかけないため、辛い思いをしないため双方が選んだ道であった。それを一時の感情で無しにするわけにはいかない。
「ん、わかった。ただし、
そう言うと
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