世界でいちばん、密室の愛。 Ⅱ


 十週間。実瑠が、私の密室にいた命の長さです。

 私の人生の何か一つでも違えば、あなたはここに生を留めていたでしょう。




ーー実瑠、恨んでいいよ、怒っていいよ、泣いていいよ。

 きっと実瑠は、無条件で生きたかったに違いないから。新しい命っていうのは、死にたいなんて思う訳がないから。あなたの幸せは、生きることだったはずだから。

 それでも、私は私の一存であなたを殺した。




 幸せになれると思ってたの。大和と私と実瑠で、幸せな家庭が作れると思ったの。


 無理だった。無理だった事に気付いてしまった。

 何よりも私が、一番幸せから遠かった。

 実瑠を殺すことでしか、愛せなかった。それ以外の愛し方を知らなかった。





 それでも、私はあなたが「生きたい」と思ってくれていたことよりも嬉しいことなんて、ないのです。

 「死にたくなかった」と、あなたが私のことを嫌ってくれるのなら、そんなに幸せなことはないと、本気で思うのです。




 ねえ、実瑠。どうか、どうか。





ーー私は、存在しえない家族あなたのしあわせを想って、あなたを殺しました。



 


 誰よりも、幸せになってください。

 








 P. S


  スターチスで作った花冠をあなたと共に燃やそうと思います。天国でも気に入ってくれると良いのだけれど。




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