006
紗良は海斗の叔母にあたる。
今から二年前、海斗が二歳のとき、海斗の家族は交通事故に巻き込まれて亡くなった。海斗も事故に巻き込まれたけれど奇跡的に助かって、けれど海斗はひとりぼっち。
海斗の母親の実家――、つまり紗良の母は、早くに離婚して一人で暮らしており持病持ち。父親の実家は遠く離れているし両親は高齢。
そのため海斗を育てる環境がなく必然的に施設へ預けるように話は進んでいったのだが。
まるで邪魔者扱いのように話される会話が紗良にはどうしても納得できなかった。
紗良の姉はよく海斗を連れて実家に遊びに来ていたため紗良とも日ごろからよく交流があったし、海斗も紗良に懐いていた。
だから紗良はその場の勢いと怒りで「私が育てます」と引き取って、今に至る。
紗良の考えが浅はかだったことは否めない。
一人で初めての子育てはあまりにも無謀すぎたけれど、紗良の気持ちを汲み取った母が一緒に育てると協力を申し出てくれたおかげで、今はどうにかこうにか暮らしていけている。
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