王道笑劇のヴォルフガング!!!〜大狼と現代ダンジョンを86/100層まで〜

金目の物

第0話 プロローグ

その日は、冬だというのに雪でもなく雨が降っていた。


「あれ?大野君?」

「どちら様?…って、もしかして大浪か?」


コンビニの軒下で雨宿りをしていると、買い物が終わって出てきた男の人と目が合った。

何となく見覚えがあるなと思ったら、小学校の頃の同級生だった。


「久しぶり」

「おお、久しぶり。何年振りだ?」

「小学校以来だから、6年振りかな?」


6年ぶりに再会した大野君は派手な金髪になっていた。

背も高くなって、上着の下には派手な柄シャツを着ている。

昔の面影はほとんど残っていない。

そう言う私も派手な金髪だ。

ただ、私の方は生来的にメラニン色素が少なくて『半アルビノ』みたいになっているだけで、昔から金髪だったから大して変わってはいない。

小学生時代から身長だけ伸ばせば今の私になるだろう。


「6年かあ。今、何してるんだ?」

「えっと…今はちょっと、親と喧嘩して…」

「マジで?もしかして、家出か?」

「うん、絶縁してきた」

「思ったより強いワードきたな…」


私の父は古い人間だった。

男尊女卑的な価値観を未だに持っている人で、昔からソリが合わなかった。

そんな父から今日突然こう言われた。


「縁談を組んできたから見合いをして来い」


相手は父の会社の取引先のご令息で、私とは一切面識がない。

勝手に組まれた見知らぬ人間との縁談なんて当然承服できず、喧嘩になり、絶縁宣言をして家を出て、今に至る。


「今時そんなことあるんだなあ。これからどうするんだ?」

「正直、困ってる」


始めは友達の家に厄介になろうかと考えていたが、今は2月。

受験シーズンの真っ只中だ。

こんな時期に押しかけるのは流石に迷惑だろう。

かと言って、他に頼る当てもない。

ついでに言えば、バイトも禁止だったので、収入源も無い。

さて、どうしよう?


「大野君は何してるの?どこかへお出かけ?」

「俺は今から『ダンジョン講習』受けに行くとこ。高校卒業したら『ダンジョン探索者』になる予定なんだよね」

「それ、本気で言ってる?」

「超本気。そういえば、『ダンジョン』が世界中に急に生えてきたのも6年前だったなあ」




6年前。

世界各地に突如として『地下へ続く謎の階段』が出現した。

その階段を降りた先には、草原や砂漠、山や雪原、海や火山など、明らかに異常な空間が広がっていた。

人々はその奇妙な地下空間をダンジョンと呼んだ。


「どうしてダンジョン探索者になりたいの?」

「何か楽しそうだから」

「本気で言ってる?」

「だって、ダンジョンには『ステータス』とか『レベル』とか『スキル』とかがあって、ダンジョン内に生息してる『魔物』を倒せば金も稼げるんだぜ?」

「そうらしいね」

「何かゲームみたいで面白そうじゃん」

「本気で言ってる?」

「超本気」




そんな会話から2年半の月日が流れ…。

夏。


「ライ、前方の大沼から巨大蛇サーペント!」

「俺が突っ込むから、セイ達はサポートを頼む!」


私達はダンジョン探索者になっていた。

パーティーメンバーは私と、ライ(大野君)と、ダンジョンで仲間にした巨大狼のガルの3人だ。


「うお、熱っ!?こいつ火吹いてきやがった!」

「ガル、ライのサポートに行ってあげて!ライは治療するから戻って!」

「GARU!」

「くそ、何で爬虫類が火吹くんだよ!変温動物だろ!」

「それを言ったらドラゴンだって爬虫類っぽいし」

「それは…まあ…そうだな…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る