韓国城めぐりⅡ
飛鳥 竜二
第1話 1日目 韓国入国
トラベル小説
10月に木村くんから連絡がきた。
「教員採用試験に合格しました。長谷川さんにメールするので、アドレスを教えてください」
ということだった。前回のベルギー旅で、採用試験に合格したら長谷川さんのメールアドレスを教えるということになっていたのだ。
その後、二人のやりとりがあったらしく冬休みに韓国の城めぐりに行くことになった。
「12月は寒いよ」
という私のアドバイスは燃えてる木村くんには通じず、12月25日に韓国インチョン空港で待ち合わせすることになった。5泊6日の旅である。前回の韓国城めぐり同様、ソウルのホテルを拠点にしようと思ったが、長谷川さんの提案で、後半は空港の荷物預かり所にスーツケースを預けて、深夜バスを利用することにした。
1日目はソウル泊まり
2日目はソウル城郭めぐり・ソウル泊まり
3日目は南漢山城・ソウル泊まり
4日目は扶余城そして深夜バス
5日目は晋州城そして深夜バス
6日目は帰国
の計画である。深夜バスは女性にはつらいと思うのだが、長谷川さんの提案なので採用となった。
地元の地方空港から行くと、夕方着。私の到着が一番遅かった。
「お待たせしました」
「お久しぶりです。100名城めぐりなかなか行けなくてもうしわけありません」
長谷川さんは恐縮しながら詫びていたが、仕事優先だから仕方ない。
「仕事の方は大丈夫なんですか?」
「ええー、有給があまっていましたので、12月にまとめどりをすることにしました」
「木村くんが無理言ったんじゃないですか?」
「そんなことありませんよ。合格祝いですからね」
「そうだった。木村くん、合格おめでとう」
「やっと、ぼくの番になりましたね。おかげさまで正規教員になることができます。
こうやって、外国の城めぐりができるのも最後かもしれません。お付き合いいただきありがとうございます」
「合格おめでとうございます。でも、これからが大変ですからがんばってくださいね」
「はい、心してがんばります」
「長谷川さんとメールのやりとりができるようになったからね。がんばれるよね」
「はい、それもパワーになります」
「どんなメールがくるか楽しみだわね。でも1日1回よ。しつこいのはだめ」
「わかっております」
という話をしているうちに、明洞行きのバスの出発時刻になった。今日の泊まりは明洞入り口のiホテルである。1時間半ほどで、ホテルの目の前に着いた。乗り換えがないのがうれしい。男性はツィンベッドルーム、長谷川さんはシングルルームだ。男性の階と女性の階が違うのもこのホテルのセキュリティの良さである。
夕食は明洞の海鮮料理店「チョガビ」へ行った。クリスマスの夜で明洞は大賑わいだ。1時間ほど並んでやっと入店できた。注文は貝の蒸し焼き「チョゲチム」とビビンパである。韓国ビールも頼んだ。
「このビール、とても軽いですね。初めて飲みました。というか、ソウルに泊まるの初めてなんです」
「えっ、何回もフライトで来てるんじゃないですか?」
「フライトは数えきれないぐらい来ています。でも、ソウル便は日帰りなので、泊まることはないんです」
「ですよね。駐機するとお金かかりますもんね」
「航空会社も大変なんですよ」
と言っているうちに、チョゲチムが食べられるようになった。ふたを上げると、海のにおいがプーンとした。
「うわー、おいしそう」
と言って、最初に手をつけたのは長谷川さんだった。大きなカラス貝を口にいれて満足した顔をしている。木村くんは、アワビに手を出している。
「このアワビ、日本のとちょっと違いませんか?」
という木村くんの疑問に
「もともとは、日本のあわびをもってきて、養殖をしているんだよ。こぶりだけど種類は同じだし、味も悪くないと思うよ」
と答えると、木村くんは納得して食べていた。
「さすがに歯ごたえはいいですね」
そこからは、無言の時間が過ぎた。まるでカニ料理を食べている雰囲気だ。しめのビビンバになって、
「1日目からこんなにおいしいもの食べてよかったのかな?」
と木村くんが言うので、
「明日からは節約になるかもしれないよ。覚悟しておいてね」
と返すと、長谷川さんが
「食事も旅の楽しみですよね。ねぇ、木村くん」
と木村くんを助けた。そこで、
「では、1日に1回はおいしいものを食べることにしましょう」
と言うと、二人ともニンマリしていた。
3人で1万5千円程度。韓国では高級料理の部類だ。
1日目終了。
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