逆断罪・国外追放された王子とドラゴン派遣サービス始めました
川奈あさ
プロローグ
プロローグ:物語はいつも断罪イベントから
「シャルロット・バスティーヌ、今日で君との婚約を解消する!」
プラチナブロンドの美男子が少女を片手に抱き高らかに宣言した。
「君を王妃として認めることはできないのはもちろんだが、
チヒロへの殺人未遂、罪を償ってもらわないといけない」
チヒロと呼ばれたピンク髪の少女が泣き崩れる。美男子は彼女の涙を宝物を扱うようにそっとぬぐった。
貴族の令息令嬢が通う学園の卒業パーティー、華やかな衣装に身を包んだ生徒たちが集まるメインホールの真ん中で、今まさに物語の冒頭にありがちな断罪イベントが行われていた。
「この国の律令に従って、国外追放と処す!」
厳しい顔をしているのは、この国の第一王子、リュドヴィック・ブランシャール。
そして婚約破棄と追放宣言を同時に受けたのは、ガラス細工のように美しい少女、シャルロット公爵令嬢だ。
厳しい内容を伝えられているにも関わらず、彼女は表情を変えることなく凛と答えた。
「いいえ、殿下。断罪されるのは私ではなく貴方です」
シャルロットが言い放つと同時に、彼女の後ろから三人の男性と十人ほどの騎士団が現れた。
国王、第二王子のレオナー、シャルロットの父・バスティーヌ公爵が揃っている。この顔ぶれを見れば、彼女の言葉の方が正しいのは誰の目にも明らかだった。
レオナーが目配せすると、後ろに控えていた騎士団がリュドヴィックとチヒロを囲い込む。チヒロは怯えるようにリュドヴィックにすがりついた。
「お前には失望した」
まだチヒロを庇う仕草を見せたリュドヴィックに対して、国王は一瞬目を閉じた後に声を絞り出した。そして厳しい声を張り上げた。
「罪人を捕らえろ!」
その言葉を合図に騎士団がリュドヴィックとチヒロを引き剥がし、チヒロは騎士たちに数名がかりで捕らえられた。チヒロのもとに走ろうとするリュドヴィックは剣で制止された。
「クソッ!」
先程までの可憐でか弱い被害者のイメージと打って変わり、彼女は凄まじい形相でシャルロットを睨みつけている。シャルロットも怯むことなく軽蔑の目で見返した。
「この女の処罰は後日決定するとして、ここにいる皆に伝える事がある」
国王はパーティーに参加している貴族たちを見渡した。怒涛の展開に皆唖然とし、固まっている。
「今日この場を持って第一王子リュドヴィックの王位継承権を剥奪し、第二王子レオナーを第一継承者とする」
大変な発表があったが、貴族たちはどのような反応をすればいいかわからないのだろう。じっと息をひそめるように黙って王の言葉を受け入れた。
「そして、リュドヴィック・ブランシャールを国外追放とする。今後ブランシャールの名を名乗ることも許さない」
煌びやかな会場が嘘のようにシンと静まり返るなか、リュドヴィックは崩れ落ちる。顔面蒼白の彼は自分の置かれている状況をまだ理解できておらず、言葉を発することもできなかった。
そんなリュドヴィックを、シャルロットと彼女を支えるレオナーは悲しげに見下ろしていた。
そして、この物語のヒロインであるエリンは、この一連の騒動を傍聴人の一人として口をポカンと開けて見守っていた。
自分が巻き込まれることになることも、逆断罪・追放された王子が自分の未来の夫になることも知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます