インビジブルハンズの日常

天月 夜鷹

プロローグ 見えざる手

20XX年。

世界から戦争、飢餓、貧困、権力の腐敗は一掃され、世は平和と幸福を享受していたー

後の世に、この時代はこう呼ばれる。


黄金の時代、ゴールデンエイジ、と。


その時より少し遡り、ゴールデンエイジを迎えるXX年前。

政局の乱れによって各地で独裁者が出現し、戦争・紛争が勃発。貧困と飢えが広がり、世界は荒廃しきっていた。

夜明け前、世界は最も冥くなる。この暗闇の中、人々は太陽が昇ることを夢見ながら生きていた。

ゴールデンエイジとは対照的な、まさにダークエイジというべき時代だった。


太陽が沈んだこの暗闇の世界に、どのように朝日が到来したのだろうか?


多くの書物や文献には、

革命による独裁国家の崩壊、戦争の終結、様々な偉人の活躍等、様々な要因が記されている。


しかし、私は思うのだ。

歴史では語られない数多くの人々の営みこそ世界を少しずつ動かしているのでないか、と。


歴史ではよく不思議なことが起こる。そういった出来事の裏側には、名も知れない人々の活躍があったのではないか。


ゴールデンエイジの幕開けにはこう言った名も知れない多くの人達の活躍があったのではないか?

私はそのように考える歴史家の1人である。


今ここに、ダークエイジに記された一冊の稀覯本がある。

私はこの資料をもとに、現代の歴史には遺っていない人びとの営みを記してみたいと思い筆をとった。


私のこの小論を、後の世に見るであろう人たちは、こう思ってくれるだろうか。

名も知れない多くの人々の行動の上に、自分たちの生活が成り立っているのではないかとー


稀覯本のタイトルはこう記されている。

『秘密結社・見えざるインビジブル・ハンズ)の活動日誌』


私がここで記すのは、この秘密結社・見えざる手(インビジブル・ハンズ)の活動記録である。


前置きはこのくらいにして本文に入るとしよう──。

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