第14話 距離感







薄暗く、埃臭い体育倉庫。


雑に重ねられた体操マットの上にあるボールケースにリレーのリボンで、僕の両手を縛って馬乗りになるあかね。


あかねは僕の耳にふっと息をかける。


そして、首筋に舌を這わせる。


「ーーーっ!」


体が密着して、あかねの柔らかな胸が直に自身の肌に当たり、僕の緊張は限界だった。


「無理‼︎これ以上は無っ、ふごっ⁉︎」


僕が叫ぶとあかねは僕の口を塞いだ。


「待って。無理は禁止。」


そう言って、あかねは温かな肌の温もりを求めて肌を密着させる。


「こんなにも誠一が好きなのに。なんで、分かってくれないの?」


「それは、、、。」


本当は分かってる。


幼馴染だからとかそういう事じゃないって。


今まで、一緒に過ごして、楽しい思い出も辛い事も2人で一緒に乗り越えてきたから。


でも、あかねの気持ちに応えれる自信が無いんだ。


いつも、そばに居たから。一番近い存在だからこそ、失うのが怖いんだ。


いつも向き合う事を恐れて逃げていた。


「小学生の時、、、。」


あかねがポツリと呟く。


「私が同じクラスの女生徒からハブられた時、誠一は私の事を必死に守って、みんなの誤解を解いてくれたよね。」


それを聞いて、当時の出来事を思い出した。

あれは、小学生高学年の時ーーー。


クラスで1番人気者の男子生徒があかねに告白してあかねがその子を振ったのが、いじめの始まりだった。





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