異世界のんびり配信~行き来できる異世界から配信はじめました~
霜月緋色
プロローグ
「日本の皆さん、そして地球の皆さんこんにちは。異世界配信お兄さんこと
広大な森の中、僕はスマホのカメラに向かって語りかけていた。
自撮り棒をつけたスマホには、大手動画サイトの配信画面が開かれている。
〝異世界お兄さんきたーーー!!〟
〝待ってたよレオっち!〟
〝お、今日は森?〟
〝おっすおっす!〟
同時接続者数は余裕で800万を超えており、コメントがもの凄いスピードで流れていく。
「本日はありがたいことに、企業案件と言う名の『
ポケットから豆腐のパックを取り出し、スマホに映しつつ続ける。
「そのミッションとはズバリ――『ハイ・エルフにお豆腐を食べてもらおう!』というものです! はい、拍手ぅ~」
ハイ・エルフ、というパワーワードの効果だろう。
〝ハ イ エ ル フ ! ! ! !〟
〝レオっちいまエルフって言った?〟
〝ただのエルフじゃないぞ! ハイだハイ!〟
〝ハイエルフと聞いてとりあえず服脱いだ〟
〝俺も脱いだ〟
〝なんでだよwww〟
コメントの流れるスピードがより勢いを増す。
「こちらのお豆腐、僕のような日本人にはお馴染みのヤマナギ食品さんの商品になります」
豆腐のパックをカメラに近づけ、
「お肉を一切食べないと伝え聞くハイ・エルフですが、果たしてハイ・エルフはお豆腐を食べてくれるのか? それとも食べてくれないのか? それ以前に僕はハイ・エルフたちが住む集落まで辿り着けるのか?」
早くもSNSで拡散されているのか、同時接続者数が500万を突破。
まだまだ増え続けている。
「僕が得た情報によると、ハイ・エルフさんはこちらの森――地元の方たちに『帰らずの森』とよばれる大森林に集落を作っているそうです。見てください、この広大な森を!」
スマホをぐるりと動かし、周囲の木々を映す。
「こちらの森には、恐ろしいモンスターが多数生息しているそうです。怖いですね。恐ろしいですね。ですが安心してください。なぜなら僕には頼もしい仲間がいるからです!」
背後で待機していた男女5人組にスマホのカメラを向ける。
「そうです。本日の護衛もお馴染みの冒険者パーティ『朱き流星』にお願いしました!」
一度区切り、異世界言語で朱き流星に声をかける。
『朱き流星のみなさん、見ている方たちにひと言お願いします!』
そう振ると、
『ハーイ。チキュウのみんな元気にしてる?』
まずスタイル抜群の女性魔法使いがカメラに手を振り、
『我の神聖術があれば災いを退けることなど容易いこと』
お次は
『レオは俺たちが護るから安心してくれていいぜ』
続いて赤髪のイケメン戦士であるリーダーが挨拶をすると、
〝リーダー!!〟
〝俺たちの兄貴キター!!!〟
〝カイさま!!!〟
〝今日は冒険回かよ!!!〟
〝朱き流星が出るとか神回確定やん!〟
コメント欄が彼のファンで盛り上がり、
『がんばってレオとハイエルフを見つけるんだにゃー』
最後に、視聴者に一番人気のある
〝にゃ~~~~ん〟
〝にゃんにゃんにゃんにゃんにゃん〟
〝にゃーんにゃーんにゃーん〟
〝ごろにゃああああああああああん〟
〝尻尾モフらせてぇえええええええ!!!!!!〟
コメント欄がもの凄いことになっていた。
彼、彼女らが喋るのは異世界言語。
けれども視聴者には、字幕が表示される形で届けられている。
「では、これから張り切ってハイ・エルフの集落を探してみたいと思います!」
――異世界配信。
僕がはじめた配信は、いまでは世界中にファンを持つまでになっていた。
全てのはじまりは1年前のこと。
僕のいた会社が倒産したことからはじまる。
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