第26話 UD
月光祭は、国も身分も、人も動物も、混沌も関係なく、この地に住まう全てのものたちがムーンフォレストに集い、春を祝う祭だ。
今年はどんな夜になるだろうか、楽しみだな。
オレは、想う。この三年間のことを。そして、これからのムーンフォレストのことを。それは、希望にあふれた予感だった。
はじまりの日、オレは赤の国の王となり、ムーンフォレストの主として毎年、月光祭の日に、ここに集うものに対し一年の報告を行っている。
「「あー! クレタ異母兄さま!!」」
なぜか屋台でイチゴ水を売っている二人から声を掛けられる。
「えっと」
「もうお祭りは始まっていますのよ。兄さまが行かないと締まらないでしょう!」
「クレタ異母兄さま、ありがとう。カッコ良かった」
「あ、ああ。ありがとう。エレナ、セレナ」
セレナの差し出したイチゴ水を受け取る。
「だけどセレナ。あの時の言葉はいったいなんだったんだい? あの時のセレナは今とはずいぶん雰囲気が違って見えるんだけど?」
「まあ。あの時は仕方なかったのです。エレナもですが、私たちにはどうやら不思議な力が備わっているようなのです。異母兄さまが戻られるまではそんなに頻繁ではなかったのですが最近は特にいろいろと感じることがあります」
「え? それって?」
「赤の国の力ではないのかも知れませんね」
「ああ。その力は、黄の国の民が持つ力に近いようだし、うーん、もしかしてルナイとリライに何か関係があるのかな?」
「なぜです?」
「いや、なんとなくだけど、ルナイとリライもエレナとセレナのように双子のような存在だなって思ってさ」
「ふむ、とても興味深いです! これはぜひお二人? にお話をお聞かせ願わなければなりません!」
「セレナ! あなたまた!」
「えへへ」
「申し訳ありません、クレタ兄さま」
エレナは戻ってからオレのことを兄さまと呼んでくれる。
「それで二人の不思議な力はいつから?」
「あれはムーンフォレストの力が戻った頃でした。はじめはセレナと同じ夢を見たということに気がついて」
「そうそう。同じような夢を二人がみるようになったって気づいて。それから二人でよく話していたのです」
「同じような?」
「ええ、そうなのです。同じような夢なのですが結果が違う夢。そして恐ろしいことに結果は必ずどちらかの夢のとおりになるのです」
「そんな。じゃああの時セレナがオレに伝えたのは?」
「ええ。海の化け物を退治する夢とエレナは」
「私は海の化け物に赤の国が飲み込まれる夢でした。そしてそれを退治できるのはクレタ兄さまだけでした」
「だからあの時、夢の内容を一生懸命に話したの」
「そうだったのか。ありがとう、エレナ、セレナ、赤の国のことで頭がいっぱいだったオレに活路を見出してくれて」
いちご水を口にしながら、しばらく楽しい時を過ごした。
そして月光祭は本格的に始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます