第2話 つくもせんぺい

「なぁ、調査って言われても何も思い出せないんだけど、そもそもここどうやって出るんだ?」


 森の中なのは分かるのだけれど、オレがいま立っている場所は、なんというか……穴? 窪みの底だ。

 見上げると一面の木々の高さに、思わずため息。


 調査中にここに落ちた?

 いまこうしている間に音は一度も鳴らない。

 音は一回だけだったのか? 頭の上で見えないやつの出まかせなんじゃないのか?


「ワタシが居ルじゃナイですか」


 呆れたように、頭の上のやつは答えた。

 音がしたと思ったら、なんだかキィキィ音がして、頭にあった感触が背中に移動したのが伝わってくる。


「クレタさま、ジャンプして。ジャンプ、おぼえてマスカ?」

「え、なんで? 分かるけど、なんで?」

「イイカラ、はやく」

「……こうか?」


 膝をグッと曲げて跳ぶと、次いで背中からゴウッと音がしてスゴイ勢いで飛距離が伸び、オレの身体が窪みの外へと飛び出した。

 驚きで着地ができず、尻もちをつく。


「いまのはなんだ?!」

「ワタシガイツモ、こうやってタスケながらチョウサしていました。おぼえてイナイのなら、イマカラダイジなことをつたえマス」


 背中にくっついていたやつが、目の前に現れる。

 どう見ても森の木々や、オレとも違う、なんだか変わった色と形。


「ガンバッタから、チョットねます。クレタさま、あんまりユらさないでくださいネ」


 それだけ言って頭の上にまた乗り、静かになる。

 ……音の調査って、こいつのせいのでは?

 そう思いながら目の前に広がる森を見渡し、方向も分からないがとりあえず進むことにした。


 それにしても、頭のこいつ。あの見た目、何だったかな? 何もわからないまま、ぼんやりとそんなことを考える。

 まだ森は、踏みしめる葉音以外何も聞こえてこなかった。




書き手:つくもせんぺいhttps://kakuyomu.jp/users/tukumo-senpei

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る