第2話 放課後

第2話


 号令が終わると俄かに教室が騒がしくなった。友達と喋りたいことが溜まっていたのだろう。そんな中俺の元に1人の男子がやってきた。例の友達だ。


「自己紹介だり〜」


そう言って俺の机の上にもたれかかってきた。


「なぁ空。自己紹介一緒に考えてくれよ。」


ちなみに俺の名前は仲川空(なかがわそら)。女子っぽい名前だけど普通に身長は170超えているので間違えられることはあんまりない。


そして俺の友達が影平翔真(かげひらしょうま)。どっちかと言うとイケメンかなってくらいの見た目だ。俺よりかはかっこいいけど。


「別にいいけどさ。」


特に用事もないし、付き合う。


「何かいい案ない? 」


「何かいい案と言われてもな。名前と出身と趣味くらいでいいんじゃね? 」


「趣味ね。」


「おん。」


しかし翔真の表情は険しいまま。


「俺の趣味をみんなの前で発表してもいいと。」


「だめだな。」


「だろ? 」


そういやそうだった。翔真は運動もそこそこできるし、顔もそこそこいいから忘れていたけど、ロリコンなんだった。確かに俺もロリキャラはかわいいとは思うけど。彼のロリコン度合いは凄まじい。彼の名誉のためにも言わないでおくけど。


「んじゃあ、好きな食べ物とかは? 唐揚げとか好きだろ?」


「まあそうだけどさ。」


またしてもお気に召さなかったらしい。


「それだとさ、俺の名前は陰平翔真です。〇〇県出身です。好きな食べ物は唐揚げです。ってデブじゃね? 」


「デブだな。」


「だろ? 」


確かにデブだった。その流れで七味マヨが一番美味しいんですよとか言いそう。


「うん。それは唐揚げが悪い。なんかもっとこうデザート系とかにしたらいいんじゃね? 」


「パンケーキが好きですってか? 」


しょうまが呆れたように言ってくる。


「ww ……いや悪い。お前にパンケーキは似合わなすぎた。」


「そうだよな。」


翔真はしばらく考えて


「いっそのことパイナップルピザとかの方がいいかもな。嫌いじゃないし。」


出した答えはまさかの邪道だった。


「それはない。」


自己紹介にパイナップルピザが好きですはないだろ。


「おぉ、否定がはないな。そういやお前、そう言う料理毛嫌いしてたな。」


「毛嫌いと言うか、料理と認めたくないと言うか。そもそも料理の中に果物を入れるのが意味わかんないんだよな。絶対別々に食った方が美味いと思うんだけど。」


「まあ確かにな。でも、実際食ってみたけど美味かったぞ? 」


まあ大抵の人はこう言う。でも少し質問してみる。


「それってパイナップル必要か? 」


「んー、まぁあってもいいんじゃないかな? 」


さらに畳み掛ける。


「じゃあ照り焼きとパイナップルどっち頼む? 」


「照り焼きだな。」


「所詮そんなもんなんだよ。」


「まぁ確かに空の言うことも分からんこともないな。」


「そうなんだよ。所詮邪道は邪道。別になくてもいいし、一部のコアなファンのためにある。」


「まぁ、それは人それぞれだろうからな。無理して食うもんじゃないしな。」


「それはそう。」


話が一段落したので話題を変える。


「そういやお前、教科書運ばされてたよな? 」


「おう。お前主席番号遅くていいよな。俺みたいに早いといろいろやさられるんだよな。」


「そうか? 逆に俺みたいに中途半端に遅いとと、並ぶときとかお前より遅くなるぞ? 」


いつも出席番号順に並ばせる先生とかだと、前の方が羨ましくなる。まぁ、背の順にしても結局俺は後ろの方だからもう諦めているけど。


「どっちもどっちか。」


「そうだな。それでなんか1人めっちゃ持たされてるやついなかったか? 」


ずっと気になっていたことを聞く。


「あぁ、あれね。なんか名前忘れたけど、どうやら先生と面識あったみたいで、なんだかんだ言って持たされていたんだよな。柔道部のやつだから力はあるし大丈夫だとは思うけど。」


なんだそうだったのか。


「そう言うことね。」


「おう。俺らが持たせたわけじゃないから安心しろ。」


そう言って翔真は時計を見る。


「やっべ。今日用事あるから先に帰らせてもらうわ。」


「了解。また明日な。」


「また明日。」


そう言って慌てて教室から出ていった。彼の用事が何かなんとなく分かったので一緒に帰ろうとは提案しなかった。


さて俺も帰るか。別に残っていてもする事ないしな。


机の中のものをカバンに入れ、きた時よりも何倍にも重くなった鞄を持ち上げようと机の横に手を持って行き、立ちあがろうとした時だった。


肩を指で突かれた。

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